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-Your Song-

そんなこと言うなよ。

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○教室
掃除が終わり帰りのホームルーム
担人「では本日はこれで終わりにします。まだ進路希望のプリントを提出していない方は 本日中に必ず私の元へ持ってきて下さいね。必ずですよ!!」
生徒たち「はーい」
担人「それでは さようなら」
未來は忘れないうちに先生のもとへプリントを届けに向かう。
未來「先生 はいっこれ」
担任「おや?この進路希望の高校は確か…」
未來「はいっ」
担人「そうですか 蒼葉先生はもちろんご存知ですよね?」
未來「今日帰ったら 話します」
先生「わかりました。では確かにお預かりしました。」
  「帰ったら蒼葉先生とよく話し合いなさい。一応、私からもお話をさせて頂きますが…」
未來「はーい」
  担任の先生は不思議な顔をして職員室へ戻る。蒼葉先生を見つけ話しかける。
担人「蒼葉先生 ちょっといいですか?」
美月「はい なんでしょうか」
担人「これをみてください」
  「未來君の進路希望です」
担任の先生はプリントを美月へ手渡す。
美月「えっ… ここの高校って確か全寮制の高校だったはず」
美月「なぜ… この高校に…」
担人「やっぱり…蒼葉先生 知りませんでしたか?」
美月「はい すみません…」
担人「どうしてここの高校を選んだのでしょうかね?」
美月「…」
担人「未來君からなにもまだ聞いていませんよね」
美月「…はい、まだ…」
担人「本人も今日帰ったら話すと言っていたので、なぜここの高校かわかれば私にも
教えて下さい」
美月「はい わかりました。」
  「帰り次第 本人に聞いてみます」
美月はなにも知らなかった事に悲しさが込み上げている表情を見せないように自分の机に座る
美月『あいつ 俺に相談もなく勝手に決めやがって』

○廊下。駄箱に向かう未來。
霧谷の姿を見つける。
未來「霧谷くんまだ居たの一緒に帰ろうぜ」
  霧谷は未來の方を向く。
霧谷「うん」
未來 ゲッ「雨降ってんじゃん 傘なんか持ってきてねーよ…」
  「誰かの置き傘、カリパクしちゃおっか…なー」
霧谷「ダメだよ!」
  「僕の傘貸してあげるから。 2本持ってるし」
未來「マジで 助かる」
  「サンキュー」
霧谷「ちゃんと返してね」
未來「了解ッ」
  だんだん激しくなる雨のなか、霧谷はずっと下を向いたまま未來に何か聞きたそうにしている姿。
霧谷「ねぇ 聞いていい?」
霧谷は勇気を振り絞った、太い声で未來に尋ねる。
未來「霧谷くんはいつも急だな」
  「何を聞きたいの?」
霧谷「噂で聞いたんだけど…蒼葉くんてさ 両親いないんだよね?」
未來「俺が3歳くらいん時 両方死んだ」
霧谷「悲しかった?」
未來「なんだよいきなり なんの話しだよ」
霧谷「いや ちょっと聞いてみたくて」
未來「どういうこと?」
霧谷「やっぱり なんでもない」
未來「ちゃんと 話せよ」
霧谷「…実は母さんがさ もう天国へ向かう準備してるんだって」
  「一昨日お医者さんからそう言われた」
未來「どこか悪いのか?」
霧谷「むかしから心臓が弱かったみたいで僕を産んでから もっと悪くなったみたいなんだ」
未來 ふぅーん「俺はまだ小さかったから あんまり憶えてないけどさ 葬式の日、すげぇ泣いてたみたい」
  「美月が言ってた…」
霧谷「そうなんだ…」
  「美月って蒼葉先生のことだよね」
未來「うん、そう」
霧谷「蒼葉くんのおじさんになるんだよね」
未來「うん、そう」
霧谷「いいな、家族がすぐそばにいて」
未來「霧谷くんだっているだろ 家族?」
霧谷「いるけど僕が7歳の時に親が離婚してそれ以来、父さんとは1度も逢ってないし母さんはずっと入院して毎日逢えないし…」
未來「そーなんだ」
霧谷「やっぱり、僕もこんなことになるんなら まだ物心がついてない頃にどっちともいなくなってくれてれば、悲しい思いなんかしなくて済んだのに…って…」
未來「そんなこと言うなよ」
霧谷「母さんがいなくなる…」
  「そんこと…今の僕じゃ耐えられない」
  「いなくなるなんて想像もつかない」
未來「まだ大丈夫なんだろ」
霧谷「卒業式にこれるか どうか」
未來「そっ…そっか」
霧谷「あ、ごめんね、急にこんな話して」
未來「俺は別にいいけど」
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