お仕置きはほどほどに

リツカ

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地獄の結婚生活編

19


「かわいそうなローラン。全部私の所為にしたら楽なのに、君はそれをしないんだ」

 ローランをベッドに押し倒しながら、ルシアンはひどく楽しそうに笑う。

「だが、泣くことはないさ。君が私を本当の意味で受け入れるまで、君の心は君だけのものだ」
「……なら、項は噛まないでください」
「残念だが、それは聞けないお願いだな」

 ルシアンは場違いなほど穏やかな瞳でローランを見つめた。
 ルシアンと視線が交わるだけで、ローランはなんとも不思議な気分になる。脳みそがぐずぐずと少しずつ溶けていくような感覚に襲われて、頭の中がふわふわした。

「大丈夫、なにも変わらないよ。強いて言うなら、私が君のアルファになるだけだ」

 甘ったるい声で言いながら、ルシアンは恭しくローランの手の甲にキスを落とす。物語の中から出てきた完璧な王子様のような振る舞いに、思わずローランでさえ見惚れた。
 甘い匂いを吸い込むたび、ローランの体からくたりと力が抜けていく。心地よく、それでいてもどかしい脱力感だ。
 ローランは涙を拭い、ため息混じりの熱い吐息を吐く。

「するなら、早くしてください……」
「君が早く欲しいんだろ?」
「っ……ルシアン様なんか、嫌いです……!」

 赤い顔をしたローランが不貞腐れると、ルシアンはくつくつとおかしそうに笑った。

「かわいいローラン。私は君が好きだよ」

 ルシアンの瞳がどろりと溶けるように弧を描く。その青色をぼうっと見つめ返したローランはそっと目を閉じ、再びルシアンからの口付けを受け入れた。
 唇を食むような口付けは次第に深いものへと変わり、ルシアンの舌がローランの口内を好き勝手に掻き回す。絡め合った舌が甘くて、ローランはあふれそうな唾液を必死に飲み込んだ。
 ルシアンの手が、ローランのシャツのボタンを丁寧に外していく。ローランはあっという間にシャツを脱がされ、剥き出しの素肌にルシアンの大きな手が触れた。
 その手のひらの熱さに、ローランは身を捩る。もどかしくて、皮膚の下がじんじんと疼いた。

「ンッ、う……」
「相変わらず綺麗な体だ」
「っ、あ、あぁ……!」

 うっとりと呟いたルシアンが、ツンと尖ったローランの胸の先をぺろりと舐めた。熱く濡れた感触に、ローランの背中が大きく反れる。
 その間にも、ルシアンは執拗に胸への愛撫を続けた。唇に含み、舌先で何度も乳頭を擦り上げる。

「やっ、あ、あっ、ン……!」
「ああ、少し舐めてやっただけでこんなにぷっくり腫れて……かわいいな。もっとかわいがりたくなる」
「だ、だめ……やめて……あっ!」

 ローランの懇願があっさりと無視されたかと思うと、今度はもう片方の乳首をぱくりと咥えられた。舌で弄られながら軽く甘噛みされると、ローランの体がびくびくと震えた。

「はっ、あ、あぁ……!」
「拒むなんて変な話だな。今回は君が私を求めたのに」

 意地悪く言ったルシアンは体を起こし、ローランに馬乗りになった状態で前髪を掻き上げながら笑った。ぞくりとするほど色気のある笑みだ。
 ローランはそんなルシアンを見上げ、ごくりと喉を鳴らす。

「ルシアン、さま……」
「──どうしてほしい?」
「え……?」
「君の望むようにしてあげるよ。できる限りね」

 ──このひとは本当に……!

 ローランはじとりとルシアンを睨んだ。
 恨めしくて、でも突き放せない。熱を持ったローランの体は、今もルシアンを求めていた。
 ローランはルシアンを睨んだまま、ぼそぼそと呟くように言う。

「……もっと触れて、たくさんキスしてほしいです」
「仰せのままに」

 至極満足げに笑ってから、ルシアンは再びローランに口付けた。ちゅっとかわいらしい音を鳴らしながら、ふたりは軽いキスを繰り返す。

「んっ……」
「ほら、腰を上げて」

 ローランの体を滑るように撫でていた手がトラウザーズの両端を掴み、ずり下げようと引っ張った。
 ローランは少し躊躇しつつ、おずおずと腰を浮かす。すると、トラウザーズは下着ごとずるりと足から抜き取られ、そのまま床に放り投げられた。
 火照った肌にひんやりとした空気が触れる。ローランは気恥ずかしさともどかしさに体を捩った。

「ッ……ふっ、は、あっ、あぁ……」

 ルシアンの唇がゆっくりとローランの肌にキスを落としていく。首筋から胸元、胸元から腹部へとすべり下りていった唇が、ローランの薄い肌に点々と赤い痕を残していった。
 ぴりぴりとした刺激に、思考がとろとろととけていく。ルシアンが触れるすべての場所が気持ちよくて、ローランは啜り泣くような甘い声で喘ぐしかなかった。

「ん、あっ……あ、ぁ……っ」
「かわいいよ、ローラン」

 ローランの股の間に陣取ったルシアンは、半ば強引にローランの足を広げさせた。そして、その中央で蜜をこぼしながら震える性器にねっとりと舌を這わせていく。

「君の体はどこもかしこも甘いな」
「あ、ンッ……や、ぁっ……だめっ!」

 鈴口を舌先で穿るように舐められて、ローランの腰がびくりと跳ねる。おまけにルシアンの大きな手がゆっくりとローランの雄を扱きだすものだから、ローランは今にも吐精してしまいそうだった。

「ンッ、あ、やっ、でる……っ」
「おっと」

 あと少しでイけそうだったのに、ルシアンはローランの性器からあっさり手と口を離してしまう。
 途中でお預けを食らったローランはビクビクと腰を激しく震わせた。
 だが、痛そうなほどに勃ち上がった性器からは、透明な蜜がとろとろとこぼれるだけだった。

「う、ぁ……なんでぇ……」

 もどかしくて、つらい。
 しかも不思議なことに、射精できなかった性器ではなく、まだ触れられてもいない後孔の方がはしたなく愛液をあふれさせていた。
 ローランが泣きそうになりながらルシアンを見上げると、ルシアンは意地悪く口角を上げて笑っていた。

「嫌がるくせにこっちが止めたらそんな物欲しげな目で見てくるなんて、君は本当にわがままだね、ローラン」
「だ、だって……」
「またお仕置きされたくなったのか?」

 からかうように問い掛けられ、ローランはとっさに首を横に振ろうとした。
 ……しかし、考えてみればルシアンの言う通りなのかもしれない。ローランは体の中で暴れ回る熱を吐き出したくて、腹の奥のぐずぐずにとけた場所を犯されたくて堪らないのだ。
 物欲しげに疼く下腹部に手を当てたローランは、とろんとした濡れた瞳でルシアンに懇願した。

「お仕置き、してください……」
「……ローラン?」
「もう、イキたいです……お腹のなかも熱くて……頭の中、変になりそう……」
「ッ……ああ、ローランッ!!」

 感極まったように叫んだルシアンはがばりとローランを抱き締め、そのまま貪るような深いキスをしてきた。
 痛いくらいの力で抱き締められたローランは、自身も腕を伸ばして負けじとルシアンの体を強く抱き締める。もうこうなったら自棄だ。

「ローラン、君は私を夢中にさせる天才だ」
「……うれしくないです」
「でも、今は私が欲しいんだろう?」

 勝ち誇った顔でそう問い掛けてきたルシアンを、ローランは恨めしげな目で睨む。けれども、返す言葉がないのもまた事実だ。
 それからルシアンはローランの片足をおもむろに掴んだかと思うと、そのまま大きく足を持ち上げた。
 隠されていた秘部が晒されて、ローランの頬はいっそう赤くなる。

「る、ルシアンさまっ……!」
「すごいな。こんなに蜜があふれてる」
「あ、んぅッ……!」

 ルシアンの指が、遠慮なくローランの濡れそぼった後孔に触れた。ヒクつく縁の部分に指を当てるだけでくちゅりとはしたない水音がして、あまりの羞恥にローランは身を捩る。

「やっ……!」
「嫌じゃないくせに、君は本当に素直じゃないね」

 ルシアンが喋ると、なぜだかその吐息がローランの後孔に触れた。
 身を屈めたルシアンがなにをしようとしているのか気付いたローランは目を見開き、宙に浮いた足をばたつかせた。

「そ、それだけは本当に……! っ、あ……ひゃッ!」

 ローランの後孔に濡れた温かいものが触れたかと思うと、それはそのまま孔のナカへと入ってくる。
 それがルシアンの舌だとわからないほど、ローランも初心ではなかった。ルシアンの舌がナカで動くたび、くちゅくちゅといやらしい水音が響く。
 耳まで真っ赤にしたローランは首を横に振り、暴れるように身悶えた。

「やだ、やだっ、そんなとこっ……」
「やだじゃなくて気持ちいいだろ、こんなに濡らして……」
「はっ、あ……ンッ」

 舌でとろとろに解された後孔に、今度はルシアンの指がずぷずぷと埋められていく。ローランのナカはうれしそうにその指をきゅうきゅうと締め付けて、離さない。
 ローランはぎゅうっと手元のシーツを握りしめた。
 恥ずかしくて、そんなとこ絶対に舐めてほしくなかったのに、実際はルシアンの言う通り気持ちよくて仕方なかった。
 今だって、ナカを広げようとゆっくり後孔を掻き回すルシアンの指での愛撫がたまらなく気持ちいい。オメガ特有の愛液が、孔の奥からとろとろと湧き出すようにあふれていた。

「あっ、あ、ンゥっ……」
「気持ちいいな?」

 子どもに問い掛けるように尋ねられて、ローランは羞恥に耐えながらもつたない口調で答える。

「ん、ぅ……きもちいい……」
「いい子だ、ローラン」
「っ……あぁッ、あ、んッ!」

 まるでご褒美のように指を増やされた。重ねられた二本の指がぐちゅぐちゅと前後に動くたび、ルシアンに抱えられた片足がビクッと跳ねる。

「あ、ンッ、そこ……ッ」
「ここだろ?」
「ひっ!」

 ぷっくりと膨らんだ前立腺を指の腹で擦られると、電流のような快感がローランの体を駆け巡る。腹の奥が蠢いて、もっともっとと愛撫をねだっているようだった。

「はっ、は、あ、あぁ……や、あ、イク……でるっ……!」
「いいよ」
「ッ……あ、あぁッ!」

 柔らかな声とは裏腹に、ルシアンはローランの前立腺を指先でグリッと強く押し潰した。
 腹の奥で響くような強い快感にローランは大きくのけ反り、腰を震わせた。その揺れに合わせてローランの性器からはとろとろと白濁が伝い落ちていく。

「あ、ぁ……」
「本当に君はかわいいな」

 ローランの達したばかりのだらしない顔を見下ろして、ルシアンは心底うれしそうに破顔した。そして、呆けたままのローランの唇に軽くキスをしたあと、くたりとしたローランの体を反転させる。
 うつ伏せになったローランは枕に顔を埋め、フーフーと荒い呼吸を繰り返す。ぴりぴりとした快感が今も体に残っていて、腹の奥がひどく切なかった。
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