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第三章〜日丸島防衛戦〜
第18話 激震する南部の大国
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社会主義国家シュヴァルツ。
ハーベスク艦隊が、バリアルから出撃して、十数日が経過していた。
首都ベルアンの総統府の一室では、ハーベスク艦隊が戻ってくるのを待ち遠しく思っているザルラが、レコードで音楽を聞きながら、優雅に食事を摂っていた。
(漂流物を鹵獲できれば、大帝国に対抗する技術が手に入る…だが、まずは目障りなセレーネ連邦国を何とかしなければならないな…ふむ、陸軍に例の大砲の開発を急がせるか……)
傍から見ると、食事を摂っているだけだが、その腹の中で、ザルラは対大帝国と対連邦国の戦略を、大和型戦艦が手に入るという前提で練っていた。
食事が終わり、ザルラが口を吹いていると、誰かが扉をノックした。
「誰かね?」
「シューベルト・エルラであります。ハーベスク艦隊が帰投したため、その報告をしに参りました」
「おお、ようやく来たか!入りたまえ!」
「…失礼します……」
ハーベスク艦隊が帰投したと聞き、ザルラは嬉々として、エルラに入るように命じた。
だが、入ってきたエルラの表情は、少々暗かった。
「…では、報告を聞こうか……」
嫌な予感を感じとったザルラは、エルラからの報告を覚悟して聞くことにする。
「まず、ハーベスク艦隊は、九割程の艦艇を失い、更にハーベスクは、戦死致しました…!」
「まことか!」
九割に及ぶ艦隊の損失、更にシュルクが戦死したと聞き、ザルラは驚く。
「無論、漂流物は手に入れたのだろうな…!?」
殆どが帆船や旧式の軍艦で作られた艦隊だったため、ザルラは九割に及ぶ損失に目を瞑り、大和と武蔵を手に入れたかどうかを尋ねる。
「…それが…その……」
エルラは、このことを言ったら、ザルラがキレるのが目に見えるため、どう言えばいいか、困り果てる。
「さっさと言わんか!」
エルラの反応をもどかしく思ったザルラは、エルラに一喝する。
「申し訳ございません!漂流物、大和と武蔵は、手に入れることが出来ませんでした!!」
ザルラに一喝され、エルラは綺麗な90度に頭を下げて、ザルラに鹵獲作戦が失敗したことを報告する。
それを聞いたザルラは、怒りのあまり手元にあったフォークを、エルラに掠めるように投げ飛ばした。
「原因はなんだ!エルラ!!」
「はっ!兵士共に聞いた所、どうやら大和と武蔵以外に、所属不明の艦艇があったのと、シュルクが慢心をしていたようで…っ!!」
ザルラから敗走の原因を聞かれ、エルラは頭を下げたまま、声を大にしてその原因を報告した。
「シュルクには、十分気をつけるように言ったのだな!?」
「勿論でございます!それでも!シュルクめは、慢心していたようです!」
「シュルクのヤツめ…!!」
ザルラの怒りは、慢心をしきっていたシュルクに向けられていたが、肝心のシュルクが戦死したため、ザルラの怒りは収まらなかった。
「そこで提案なのですが、シュルクによる慢心で艦艇を失ったことを公表というのはどうでしょう?」
「なんだ!?そんな事をすれば、吾輩の権力がおちてしまうではないか!?」
エルラの提案に、ザルラは怒りながら拒否するが、エルラは続ける。
「ご安心ください。その情報を大袈裟に公表。これを要因に、シュルクの財産を全て没収し、更に家族は大罪人の一族ということで奴隷身分にさせ売り払う。その際に、手に入った大金で新造艦を作れば、民衆の不満はシュルクめに向かい、更に海軍から不満は抑えられると思われます…」
「ふむ…なるほど、実にいいアイデアだ!エルラ君、今すぐにその案を実行したまえ」
「ゲー・クラー!!」
エルラの提案を気に入ったザルラは、その案を行うことをエルラに命じる。
自身の案の実行を命じられ、エルラは部屋を出る際、頭を下げてから出ていった。
「………大和に武蔵…だったな……」
一人部屋に残ったザルラは、エルラが漂流物を大和と武蔵と呼んでいたことを思い出した。
「大和に武蔵…何れ吾輩の物にしてやるぞ…ふふふっ、はーはっはっはっは!!」
ザルラは、二百隻の艦隊を追い払った大和と武蔵を更に欲しくなったようだ。
ハーベスク艦隊が、バリアルから出撃して、十数日が経過していた。
首都ベルアンの総統府の一室では、ハーベスク艦隊が戻ってくるのを待ち遠しく思っているザルラが、レコードで音楽を聞きながら、優雅に食事を摂っていた。
(漂流物を鹵獲できれば、大帝国に対抗する技術が手に入る…だが、まずは目障りなセレーネ連邦国を何とかしなければならないな…ふむ、陸軍に例の大砲の開発を急がせるか……)
傍から見ると、食事を摂っているだけだが、その腹の中で、ザルラは対大帝国と対連邦国の戦略を、大和型戦艦が手に入るという前提で練っていた。
食事が終わり、ザルラが口を吹いていると、誰かが扉をノックした。
「誰かね?」
「シューベルト・エルラであります。ハーベスク艦隊が帰投したため、その報告をしに参りました」
「おお、ようやく来たか!入りたまえ!」
「…失礼します……」
ハーベスク艦隊が帰投したと聞き、ザルラは嬉々として、エルラに入るように命じた。
だが、入ってきたエルラの表情は、少々暗かった。
「…では、報告を聞こうか……」
嫌な予感を感じとったザルラは、エルラからの報告を覚悟して聞くことにする。
「まず、ハーベスク艦隊は、九割程の艦艇を失い、更にハーベスクは、戦死致しました…!」
「まことか!」
九割に及ぶ艦隊の損失、更にシュルクが戦死したと聞き、ザルラは驚く。
「無論、漂流物は手に入れたのだろうな…!?」
殆どが帆船や旧式の軍艦で作られた艦隊だったため、ザルラは九割に及ぶ損失に目を瞑り、大和と武蔵を手に入れたかどうかを尋ねる。
「…それが…その……」
エルラは、このことを言ったら、ザルラがキレるのが目に見えるため、どう言えばいいか、困り果てる。
「さっさと言わんか!」
エルラの反応をもどかしく思ったザルラは、エルラに一喝する。
「申し訳ございません!漂流物、大和と武蔵は、手に入れることが出来ませんでした!!」
ザルラに一喝され、エルラは綺麗な90度に頭を下げて、ザルラに鹵獲作戦が失敗したことを報告する。
それを聞いたザルラは、怒りのあまり手元にあったフォークを、エルラに掠めるように投げ飛ばした。
「原因はなんだ!エルラ!!」
「はっ!兵士共に聞いた所、どうやら大和と武蔵以外に、所属不明の艦艇があったのと、シュルクが慢心をしていたようで…っ!!」
ザルラから敗走の原因を聞かれ、エルラは頭を下げたまま、声を大にしてその原因を報告した。
「シュルクには、十分気をつけるように言ったのだな!?」
「勿論でございます!それでも!シュルクめは、慢心していたようです!」
「シュルクのヤツめ…!!」
ザルラの怒りは、慢心をしきっていたシュルクに向けられていたが、肝心のシュルクが戦死したため、ザルラの怒りは収まらなかった。
「そこで提案なのですが、シュルクによる慢心で艦艇を失ったことを公表というのはどうでしょう?」
「なんだ!?そんな事をすれば、吾輩の権力がおちてしまうではないか!?」
エルラの提案に、ザルラは怒りながら拒否するが、エルラは続ける。
「ご安心ください。その情報を大袈裟に公表。これを要因に、シュルクの財産を全て没収し、更に家族は大罪人の一族ということで奴隷身分にさせ売り払う。その際に、手に入った大金で新造艦を作れば、民衆の不満はシュルクめに向かい、更に海軍から不満は抑えられると思われます…」
「ふむ…なるほど、実にいいアイデアだ!エルラ君、今すぐにその案を実行したまえ」
「ゲー・クラー!!」
エルラの提案を気に入ったザルラは、その案を行うことをエルラに命じる。
自身の案の実行を命じられ、エルラは部屋を出る際、頭を下げてから出ていった。
「………大和に武蔵…だったな……」
一人部屋に残ったザルラは、エルラが漂流物を大和と武蔵と呼んでいたことを思い出した。
「大和に武蔵…何れ吾輩の物にしてやるぞ…ふふふっ、はーはっはっはっは!!」
ザルラは、二百隻の艦隊を追い払った大和と武蔵を更に欲しくなったようだ。
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