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第九章〜世界大戦〜
第140話 G作戦第二段階
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連盟軍が鹵獲した魔導機関車は、真っ直ぐと帝都に向かっていた。途中のグングルにて、第一軍団の者達による抜き打ち検査があったが、血糊や包帯などで兵士を偽装し、武器をバレないような場所に隠していたため、バレることなく通過することが出来た。
「………あれか…」
機関士風の風貌に変装している虎哲は、機関車の機関室から身を乗り出し、双眼鏡で目的地のロンギスを確認すると、無線機を手に取った。
『総員に告ぐ。間もなく敵首都ロンギスに到着する。敵将軍のお膝元だ…そう簡単に行かないだろう。だが、この作戦は帝国を早期講和の席に付かせる非常に重要な作戦だ。それを各国首脳は、我々だからこそ出来ると信じて任せてくれた。必ずのその期待に答えるためにも、総員一層奮励努力せよ!』
ハッ!!!!
虎哲からの鼓舞によって隊員達の士気は上がり、やる気は十分のようだ。
そして、鹵獲魔導機関車はロンギス内へと入り、駅に向かうその道中で速度を人が歩くスピード程まで落とし始めた。
「アルファ、ベータ、ガンマ部隊展開!」
虎哲の合図とともに、客車から次々と人魔混成旅団の者達が武器を片手に降り、各自が指定された施設の制圧に向けて走り始める。アルファとベータの者達を降ろした魔導機関車は、速度を上げて駅へと向かった。魔導機関車がホーム内に入ると、軍医らしき者達が護衛と共に待っていた。
「申し訳ないが、早期講和のためにもやらせてもらう…全部隊展開!」
虎哲は心を鬼にして、残りの部隊の展開を命じた。
数的有利があったため、駅ホームは戦闘が起きる前に瞬時に連盟軍が制圧し、政府機関を抑えるために人魔混成旅団は駅を中心に次々と広がって行く。
〇
帝国宮殿の王座の間にて、ローレンスは玉座に座り肘掛に肘を立てて、自身が先程から感じる嫌な予感の正体を掴もうとしていた。そこに、
「へ、陛下! 緊急事態です!」
息を切らしながらミカエルが、扉を勢いよく開けて王座の間に入ってきた。
「どうした?」
「さ、先程帝都に日丸国軍が侵入、各政府機関を制圧し、1部部隊が現在、帝国宮殿の門前で、近衛師団と戦闘中です!」
「仕留めに来たな…」
「陛下、ここは避難を…!」
「ならん…もし、私がここで身を引けば、帝都で懸命に戦ってくれている者に面目がつかん…! 何としてでも追い返すのだ…!」
「はっ!」
玉座から立ち上がったローレンスが、ミカエルに徹底抗戦の命令を出したその時、
「人魔混成旅団アルファ部隊だ! 全員両手を上げその場に留まれ!」
扉を蹴破って、十数名で編成されたアルファ部隊が玉座の間に突入してきた。
「貴様ら…! ここが何処か分かっている「よせ、ミカエル…」
鞘から剣を抜き構えようとしたミカエルをローレンスは制止する。
「ですが陛下…!」
「奴らが持っている武器は、明らか異界の高性能銃だ。それにこの数で突入してきたところ、奴らの中でもエリート中のエリート集団だ。いくら君とて難しい相手だ。君をここで失いたくない…」
「……はっ…」
ローレンスの説得に、ミカエルは大人しく受け入れ、剣を鞘に戻した。
「列車を使い、味方と装いつつ帝都に侵入…更に目的が政府機関の制圧と思わせつつ、本当の目的は我の更迭…敵ながら天晴れだ」
G作戦の全貌に気づいたローレンスは、アルファ部隊に拍手を送った。
「貴殿が、皇帝ローレンス・ヴィズダムか…」
「如何にもその通りだ。影武者ではない、正真正銘の第123代目ソラリス大帝国皇帝ローレンス・ヴィズダムだ」
胸を堂々とはり、ローレンスはアルファ部隊に自分の自己紹介を行った。
「そうか、連盟国から要請により、貴殿を連行する」
「ま、待て…!」
アルファ部隊隊長、鬼瓦栄達は、手錠を取りだしてローレンスへと近づく。それを止めようとミカエルが動こうとしたが、隊員達に囲われ銃口を向けられ、身動きが取れなくなってしまう。
「我を煮るなり焼くなり好きにしろ…但し、そこにいるミカエルと皇民には手出しをするなよ?」
「それは上が決めることだ。だがまぁ、うちの首相は決して、貴国の国民に酷いことはしないと約束しよう」
「ふっ…なら良い」
ローレンスは大人しく両手を差し出し、手錠を掛けられて栄達に扇動されて歩く。
「ミカエル、全軍に軍事作戦の停止を命じろ。あとは任せる…」
「……はっ!」
ミカエルとすれ違う時、ローレンスは最後になるだろうと内心思いながら、ミカエルに命令を出して、アルファ部隊と共に玉座の間から出て行った。ミカエルだけになった玉座の間は、ポタポタと水滴が落ちる音が少し鳴り響いた。
人魔混成旅団による帝都襲撃から1時間後、皇帝勅令として全軍に停戦命令が出され、それと共に皇帝が人質となったという放送が流された。皇帝が人質にされたという報道は、1部帝国軍による報復戦争が行われそうになったが、ミカエルの説明と説得により、事なきを得た。
そして、ローレンスの身柄はルマンドへと運ばれ、そこからルマンド沖合に停泊している大和へと移され、そこで処遇が決定するまで軟禁されることになった。
「………あれか…」
機関士風の風貌に変装している虎哲は、機関車の機関室から身を乗り出し、双眼鏡で目的地のロンギスを確認すると、無線機を手に取った。
『総員に告ぐ。間もなく敵首都ロンギスに到着する。敵将軍のお膝元だ…そう簡単に行かないだろう。だが、この作戦は帝国を早期講和の席に付かせる非常に重要な作戦だ。それを各国首脳は、我々だからこそ出来ると信じて任せてくれた。必ずのその期待に答えるためにも、総員一層奮励努力せよ!』
ハッ!!!!
虎哲からの鼓舞によって隊員達の士気は上がり、やる気は十分のようだ。
そして、鹵獲魔導機関車はロンギス内へと入り、駅に向かうその道中で速度を人が歩くスピード程まで落とし始めた。
「アルファ、ベータ、ガンマ部隊展開!」
虎哲の合図とともに、客車から次々と人魔混成旅団の者達が武器を片手に降り、各自が指定された施設の制圧に向けて走り始める。アルファとベータの者達を降ろした魔導機関車は、速度を上げて駅へと向かった。魔導機関車がホーム内に入ると、軍医らしき者達が護衛と共に待っていた。
「申し訳ないが、早期講和のためにもやらせてもらう…全部隊展開!」
虎哲は心を鬼にして、残りの部隊の展開を命じた。
数的有利があったため、駅ホームは戦闘が起きる前に瞬時に連盟軍が制圧し、政府機関を抑えるために人魔混成旅団は駅を中心に次々と広がって行く。
〇
帝国宮殿の王座の間にて、ローレンスは玉座に座り肘掛に肘を立てて、自身が先程から感じる嫌な予感の正体を掴もうとしていた。そこに、
「へ、陛下! 緊急事態です!」
息を切らしながらミカエルが、扉を勢いよく開けて王座の間に入ってきた。
「どうした?」
「さ、先程帝都に日丸国軍が侵入、各政府機関を制圧し、1部部隊が現在、帝国宮殿の門前で、近衛師団と戦闘中です!」
「仕留めに来たな…」
「陛下、ここは避難を…!」
「ならん…もし、私がここで身を引けば、帝都で懸命に戦ってくれている者に面目がつかん…! 何としてでも追い返すのだ…!」
「はっ!」
玉座から立ち上がったローレンスが、ミカエルに徹底抗戦の命令を出したその時、
「人魔混成旅団アルファ部隊だ! 全員両手を上げその場に留まれ!」
扉を蹴破って、十数名で編成されたアルファ部隊が玉座の間に突入してきた。
「貴様ら…! ここが何処か分かっている「よせ、ミカエル…」
鞘から剣を抜き構えようとしたミカエルをローレンスは制止する。
「ですが陛下…!」
「奴らが持っている武器は、明らか異界の高性能銃だ。それにこの数で突入してきたところ、奴らの中でもエリート中のエリート集団だ。いくら君とて難しい相手だ。君をここで失いたくない…」
「……はっ…」
ローレンスの説得に、ミカエルは大人しく受け入れ、剣を鞘に戻した。
「列車を使い、味方と装いつつ帝都に侵入…更に目的が政府機関の制圧と思わせつつ、本当の目的は我の更迭…敵ながら天晴れだ」
G作戦の全貌に気づいたローレンスは、アルファ部隊に拍手を送った。
「貴殿が、皇帝ローレンス・ヴィズダムか…」
「如何にもその通りだ。影武者ではない、正真正銘の第123代目ソラリス大帝国皇帝ローレンス・ヴィズダムだ」
胸を堂々とはり、ローレンスはアルファ部隊に自分の自己紹介を行った。
「そうか、連盟国から要請により、貴殿を連行する」
「ま、待て…!」
アルファ部隊隊長、鬼瓦栄達は、手錠を取りだしてローレンスへと近づく。それを止めようとミカエルが動こうとしたが、隊員達に囲われ銃口を向けられ、身動きが取れなくなってしまう。
「我を煮るなり焼くなり好きにしろ…但し、そこにいるミカエルと皇民には手出しをするなよ?」
「それは上が決めることだ。だがまぁ、うちの首相は決して、貴国の国民に酷いことはしないと約束しよう」
「ふっ…なら良い」
ローレンスは大人しく両手を差し出し、手錠を掛けられて栄達に扇動されて歩く。
「ミカエル、全軍に軍事作戦の停止を命じろ。あとは任せる…」
「……はっ!」
ミカエルとすれ違う時、ローレンスは最後になるだろうと内心思いながら、ミカエルに命令を出して、アルファ部隊と共に玉座の間から出て行った。ミカエルだけになった玉座の間は、ポタポタと水滴が落ちる音が少し鳴り響いた。
人魔混成旅団による帝都襲撃から1時間後、皇帝勅令として全軍に停戦命令が出され、それと共に皇帝が人質となったという放送が流された。皇帝が人質にされたという報道は、1部帝国軍による報復戦争が行われそうになったが、ミカエルの説明と説得により、事なきを得た。
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