死にたがりハズレ神子は何故だか愛されています

ゴルゴンゾーラ安井

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本能※

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 自分が成人していたことに気付いたマナトは、ワインをおかわりした。
 ライオネルは心配そうだったが、マナトには酒でも飲まなきゃやっていられない理由がある。
 
 段々とふわふわしたいい気分になってきて、マナトは更に盃を呷った。
 さっきまで感じていた胸のモヤモヤも、切ない胸の痛みも、僅かな体の不調も、全く気にならない。
 自棄酒とか、失恋して酔い潰れるとか、酒で身持ちを崩すとか、そういった人達の気持ちが少し理解できた。
 お酒は麻酔だ。束の間痛みを忘れさせ、嫌なことから開放してくれる薬。
 マナトは今日だけと言い聞かせて、気が済むまでワインを飲み干した。





 祭りが終わり、村人達が家に帰って行く頃には、マナトは完全に酔い潰れていた。
 木製の簡素なテーブルにくったりと身を預け、冷えたテーブルに頬を押し当てる。
 アルコールで火照った体に、夜風が気持ちいい。あまりの心地よさに、マナトは眠気に襲われる。

「ん~、もう一杯……むにゃ……」
「やれやれ……とんだ酔っ払いだな」

 幸せそうに眠るマナトを、ライオネルは丁寧に抱き上げる。
 小さな体は痩せていて、とても成人した男の重さではない。

(……まさか成人していたとは思わなかったな)

 マナトの世界では18歳が成人のようだが、こちらの世界では17歳で一人前の大人と認められる。
 つまり、召喚された時点でマナトは立派な成人だった。
 本人にはとても明かせなかったが、ライオネルはてっきりマナトは14歳ぐらいかと思い込んでいた。
 恐らくマクシミリアンも城の者達もそう思っているに違いない。
 
(それにしても、まさか誕生日が過ぎていたとは。迂闊だった)

 ゴタゴタがあってとても誕生日を訪ねたりする機会がなかったが、今からでも何かお祝いをしたいところだ。
 マナトはどんなものを喜ぶのだろうか。あちらの世界では誕生日にどのようなことをするのかも知りたい。
 きっとセイもマナトの誕生日を知らなかっただろうから、その事も含めて相談した方がいいかもしれない、とライオネルは考えていた。

「着替え……は、怒るだろうな」

 マナトを村長の屋敷まで連れ帰り、自室のベッドに寝かせてやると、ライオネルは椅子に腰掛けて一息付く。
 こんなに飲ませてしまって良かったのかと思いはするが、余りにも楽しそうにしているので、止めるタイミングを見失った。
 コップを取り上げられたマナトに、大きな目から涙をぼろぼろ流されては、どうしようもない。
 マナトは笑い上戸であり、泣き上戸でもある。今後は注意が必要だ。

「ん……んん……」

 マナトが小さく声を漏らして、寝返りを打つ。
 酔いのせいで体が熱いのか、シャツの前を寛げようとしている。

「ん~、うううう」

 無意識の行動であるため、マナトはなかなかボタンを外すことが出来ず、むずがるような声を上げた。 
 ライオネルは椅子から立ち上がり、ボタンを外してやるべくマナトに近付く。
 ボタンを無理に引っ張っているマナトの手を取ってボタンから外させ、かわりにボタンを外してやると、目が覚めたのか薄っすらと瞼を開ける。
 ライオネルは慌てて言い訳を始めた。

「ご、誤解するなよマナト。これはお前が暑そうにしているから楽にしてやろうと思っただけで……」

 ライオネルを見るマナトの目は、とろりと蕩けてぼんやりとしている。
 完全に覚醒しているわけではなさそうだから、寝惚けているのだろうか。

「からだ、あつい……」

 マナトは熱に浮かされたような声で、短く呟いた。
 ごそごそとシャツを脱ぎ去り、それだけでは足りないとばかりにズボンの前も開け始める。
 ライオネルはぎょっとして、ベッドの上から退いた。早急に部屋を出ていかなければ、マナトの尊厳の危機である。
 
 しかし、マナトはいきなりライオネルの首に腕を回して、ベッドの上に引き戻した。
 体を密着させ、首元に顔を埋めてくる様は、ともすればそういうお誘いと勘違いしてしまいそうになる。
 ただでさえそういう衝動を抑えているというのに、酔っぱらいとはなんと厄介なものなのか。

「マナト、離してくれ。襲われたくはないだろう?」

 これは今後飲酒を制限しなければならないだろうかと思いながら、ライオネルは溜息を吐く。
 マナトはそんなライオネルのことはお構いなしに、くんくんと鼻を小さく鳴らしてライオネルの匂いを嗅ぎ始めた。
 誘うように胸元に頬を擦り寄せ、ライオネルのシャツのボタンを口に咥えて摘み上げる。

「あついの………鎮めて」
「マ、マナト……」

 ここに至ってようやくライオネルは、マナトが真実自分を誘っていたのだと気付いた。
 
「シたい……しよ?」
 
 首に回した手に力を込め、マナトはライオネルを引き寄せた。
 その唇に自らの唇を重ね、舌を絡めて吸い付いてくる。その動きは、こういった行為が初めてではないということを表していた。
 慣れているとまでは言い切れないが、少なくとも両手を超える回数以上はこなしていることは間違いない。
 この小さな体を拓き、愉しんだ男がいると知って、嫉妬で狂いそうになる。

 ライオネルは貪るように自分からもマナトの舌に吸い付くと、巧みな動きで主導権を奪った。
 唇を蹂躙しながらマナトをベッドに押し倒し、腰を浮かせてズボンを抜き取る。一糸纏わぬ姿になったご馳走に、欲望のままに指と舌を這わせた。

「ああん♡」

 マナトは嬉しそうに身を捩り、もっとと言わんばかりに自分からも胸を押し当てる。
 差し出された赤い果実に舌を絡めてやると、マナトはあられもない声を上げて快楽に酔い痴れた。
 あの幼い姿の、ともすれば地味に映る貞淑なマナトが、こんなにも奔放で妖艶になるとは。その二面性に、ライオネルは驚く。
 同時に、何も知らないマナトをここまで育て上げた男がいるのだと思い知らされて、怒りが込み上げる。

 マナトを貪り尽くしたい。他の男が教えた行為を凌ぐような快楽を与えて、全て自分で上書きしてしまいたい。
 そういう衝動が、ライオネルの頭の中を支配していた。
 そして、マナトはそれを歓迎するように、どこまでも淫らにそれに応える。

「あん、ああ、いい、もっとぉ……♡」

 マナトは昂ぶった自身をライオネルに擦り付け、更なる快楽をねだる。
 胸への愛撫を繰り返す男を誘惑するように、自らライオネルの股間へ指を這わせた。
 窮屈そうにはりつめているそれを、宥めるように、焦らすように、掌で撫で、指先で刺激する。
 
「くっ……悪戯するな、マナト」
「だって……早く出たいって言ってるから」

 マナトは身を屈めると、唇で前を閉じている紐を探り当て、口に咥えて引っ張った。
 寝惚けてシャツのボタンも開けられなかった人間と同一人物とはとても思えないほど、器用な動きだ。
 寛げられた前から勢いよく飛び出してきた怒張に躊躇いなく口付け、舌を這わせる。
 猫のように薄く小さな舌にたっぷりと唾液を纏わせて、根本からカリまでねっとりと舐め上げた。
 同性だけあって、感じやすい場所は熟知している。裏筋を舐め、先端にむしゃぶりつき、先走りを零す鈴口を舌でチロチロと刺激して、溢れ出す体液を音を立てて吸い上げる。
 
 じゅぷじゅぷと淫猥な水音を夜の静寂に響き渡らせながら、マナトはまるで淫魔に取り憑かれたかのように男根に奉仕した。
 一体どれくらいの経験を重ねて、マナトにこんな手管を覚え込ませたのだろう。
 ライオネルはたまらなくなって、マナトの口から己の怒張を引き抜く。

「あン」

 マナトは不満そうな声を上げたが、ライオネルは構わずにマナトの膝裏に手を掛ける。
 隠れた窄まりに自分を受け容れさせるべく準備をしようと指を這わせると、驚くべきことにマナトのそこは女のそこのように熟れて濡れていた。
 まるで男を受け入れるための器官であると言わんばかりに、柔らかくふっくらとしていて、指を入れれば難なく滑り込む。
 嫌がるどころか待ち望んでいたと言わんばかりに、マナトは甘い声を上げ、腰を揺らしながらもっとと強請った。
 この熱くうねっている穴が何を強請っているかなど、考えるまでもなく明らかだ。

「挿れるぞ」

 反り返るほど張り詰めた先端を秘部に押し当てると、それだけで濡れたそこはぬちっといやらしい音を立てた。
 ひくひくと物欲しそうに痙攣し、奥へ招き入れようと誘っている。
 たまらず腰を押し進めて一気に穿つと、マナトは甲高い声を上げて歓喜した。

「ああん、きたぁ♡これ、これが好きなの」
「ぐっ……それなら……好きなだけくれてやる」

 奥を抉るようにして腰を振ると、マナトは喜んで中を一層締め付ける。
 唇を奪い、胸を弄り、慎ましやかなマナトの分身も刺激してやると、その度にいい声を上げて中をうねらせた。
 穿孔する度にいいところに当たるらしく、つま先がぴんと伸びるのがたまらない。

「ああ、いいっ……♡もう、イッちゃう……!」
「好きなだけいけばいい。ただし、イくときはちゃんと教えるんだ。いいか?」

 マナトはコクコクと頷いて、ライオネルの言葉に従った。
 何度も『イく』と叫びながら内部を痙攣させ、ライオネルの放つ奔流を余すところなく呑み込もうと貪欲に締め付ける。
 あまりの心地よさに、ライオネルはぶるりと腰を震わせた。
 今まで何度となく女性と関係を持ってきたが、ここまでの快楽を感じたことは初めてだ。

 それがマナトだからなのか、それともマナトが神子だからなのかはわからないが、そんなことはどうでもいい。
 ライオネルはマナトの体に夢中になった。何度もお互いの体を貪り合い、愛し合う。
 しまいにはマナトの体を気遣うライオネルに、マナトのほうが上になって腰を振っていたほどだ。

 その淫靡な宴は夜が明けるまで続き、2人は同時に尽き果てるまでベッドで絡み合っていた。
 次に目覚めた時、自分たちの関係がどうなっているかなど、その時は考えもせずに。
 

 

 
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