【完結】俺を散々冷遇してた婚約者の王太子が断罪寸前で溺愛してきた話、聞く?

ゴルゴンゾーラ安井

文字の大きさ
64 / 76
番外編

ひめごとびより 12日目

しおりを挟む
「は?当たり前でしよ」

 アーネストは平然と答えた。何なら当然のこと聞くなみたいな不機嫌な顔でマリクを見てる。
 おい、何が当たり前なんだよ。ふざけんな。
 俺は食べたいものを食べるし、好きにするぞ!

「当たり前じゃない。何言ってんだお前」

「ヤダヤダ!出来るならレニたんに食べさせるもの全部手作りしたい!なんで料理勉強しとかなかったんだろ、帝王学とかクッソ無駄なことやってる場合じゃなかったよ!マリク、料理教えろ!」

「お断りします。申し訳ありませんが、マリクの半径1メートル以内に近付かないでいただけませんか」

 ウィルフレッドがすかさずアーネストとマリクの間にはいる。マリクはキュン♡って感じでウィルフレッドの背中を見つめてる。いちゃいちゃすーるーなー!

「は?何でお前が断るわけ?」

「私はマリクの婚約者ですので。他の男が近付くのは看過できません」

 まあ、そうだよな。一応演技だったってことになってるけど、見てる方からしたら完全に付き合ってたもん。ウィルフレッドがアーネストをマリクに近づけたいはずがない。
 ましてや、定期的に顔を合わせて料理を教えるなんてもっての外。ていうか、おかしくないか?普通教わるのは俺だと思うんだが。

「マリク相手にそんな気起こすわけないだろ!いい加減にしろ!」

「いい加減にするのはお前だバカタレ。悪いな、ウィルフレッド」

 俺はアーネストの頭に思い切り手刀をたたきこむと、ウィルフレッドに謝った。頭おかしいやつでごめんな。

「い、いえ。レニオール様のせいでは」

 ウィルフレッドは恐縮したように畏まる。なんでか知らないけど、ウィルフレッド、俺に対してめっちゃ丁寧なんだよな。なんで?
 あ、もしかして俺がマリクの親友だから?へへ、だったら嬉しいな~。

 ニマニマしてる俺に、マリクが呟く。

「浮気だ……」

「え?」

「ウィルフレッドのバカ!やっぱり僕とのことは遊びだったんだ~!」

 ど、どういうこと⁉︎
 いつも陽気な態度とは裏腹に、俯瞰して物事を見てるる節のあるマリクが、いきなり感情的になるなんて。恋愛、恐るべし。
 というか、浮気ってどういうこと?ウィルフレッドが、誰と?

 よくわからないけど、浮気、ダメ、絶対。俺は冷たい目でウィルフレッドを見た。

「浮気って何?」

 俺のはじめての親友を泣かせるなんて許さない。事と次第によっては、本気出す。
 俺自身はたいしたことないけど、公爵家令息で次期王太子妃でファンネ国王の姉の孫で未来の王様の母親になんだからな!肩書きだけはすっごいんだから!

「誤解です、レニオール様!マリク、勘違いさせるような態度を取ってすまなかった。私が愛しているのは君だけだ」

 ウィルフレッドが隣に座るマリクの手を取る。

「ほんと?気品もないし、身分も低いし、貧乏であなたに何にもあげられないけど、それでもいい?」

 何にもあげられないってことはないだろ。マリクは頭が良くて料理超上手くて家内管理も出来て堅実で、しかも超可愛い完璧なお嫁さんだし、伯爵夫妻も大歓迎で、絶対に逃すなとウィルフレッドに厳命してると聞く。
 むしろ、マリクはお嫁さんにならずに身を立てれば、何をやったって一流になれる男なんだよ。
 歌を歌えば一躍サロンの人気者だし、商売をしても料理人をしても絶対に大成功だし、絵も上手いし、王宮勤めをしても出世は間違いないだろう。
 ていうか、マリク、俺が王太子妃になっちゃったらお側付きになってほしいなぁ。

「お前は最高の婚約者だよ。私は世界一の幸せ者だ。浮気などしない」

「ウィルフレッド……」

「あ、そうだ。そのことなんだけどさぁ」 

 めちゃくちゃ盛り上がっていた2人の空気をぶった切って、アーネストが平然と割って入った。おい、空気を読め。
 ウィルフレッドからあからさまに邪魔すんじゃねーという視線を受けても、それで遠慮するようなアーネストではない。なんていうか、ゴメン。

「マリク、レニたんの側付きになる気ない?」

 ついさっき俺が思ってたことを提案されて、俺は驚いた。なんで?まさかまた心を読まれてる?

「レニたん、出産してから結婚式して王宮で暮らすことになるんだけど、色々心細いだろうし、育児にも慣れてる世話役が欲しかったからさ。とりあえず1年くらい環境が整うまでいてよ。その頃には赤ちゃんも落ち着いてるし、他の侍従やメイドにも慣れてマシになるだろうからさ」

 これは、マリクにとっても悪い話ではない。王族や高位貴族のお世話係として、年若い貴族が行儀見習い兼ねて働くのはよくあることだ。
 まして、既に出産した王太子妃という盤石な地位にいる俺の側付きともなれば、結構な箔がつく。
 側付きの間にサロンで紹介しまくれば、コネも相当出来るだろう。俺の親しいお友達です、って紹介するからな。
 そうなれば、爵位の低さだけでグダグダ抜かしている伯爵家の外戚や分家も黙らせることができるだろう。

 しかも、マリクはさっきも言った通りめちゃくちゃ優秀。沢山の弟さんたちの面倒を見て、子守もしてきたから赤ちゃんのお世話も慣れてる。
 結婚したまま続ければ、女官長だって夢じゃない。

 でも、そのかわりウィルフレッドとの結婚は少し延びてしまう。結婚するだけなら出来るけど、新婚早々別居なんて淋しすぎる。
 どうせなら年季空けて箔付きで盛大に結婚式した方がいいと思うけど、それはあくまでこっちの考えだからなぁ。

「アーネスト様、それは」

「やります」

 ウィルフレッドを遮って、マリクは即答した。

「やらせて、ウィルフレッド。僕の出来ることでレニが助かるなら、助けてあげたいの。それに、アーネストに恩も売りたいし、あなたに釣り合う自分になって、誰にも文句言わせずに結婚したいんだ。お願い」


しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

処理中です...