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番外編
ひめごとびより 12日目
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「は?当たり前でしよ」
アーネストは平然と答えた。何なら当然のこと聞くなみたいな不機嫌な顔でマリクを見てる。
おい、何が当たり前なんだよ。ふざけんな。
俺は食べたいものを食べるし、好きにするぞ!
「当たり前じゃない。何言ってんだお前」
「ヤダヤダ!出来るならレニたんに食べさせるもの全部手作りしたい!なんで料理勉強しとかなかったんだろ、帝王学とかクッソ無駄なことやってる場合じゃなかったよ!マリク、料理教えろ!」
「お断りします。申し訳ありませんが、マリクの半径1メートル以内に近付かないでいただけませんか」
ウィルフレッドがすかさずアーネストとマリクの間にはいる。マリクはキュン♡って感じでウィルフレッドの背中を見つめてる。いちゃいちゃすーるーなー!
「は?何でお前が断るわけ?」
「私はマリクの婚約者ですので。他の男が近付くのは看過できません」
まあ、そうだよな。一応演技だったってことになってるけど、見てる方からしたら完全に付き合ってたもん。ウィルフレッドがアーネストをマリクに近づけたいはずがない。
ましてや、定期的に顔を合わせて料理を教えるなんてもっての外。ていうか、おかしくないか?普通教わるのは俺だと思うんだが。
「マリク相手にそんな気起こすわけないだろ!いい加減にしろ!」
「いい加減にするのはお前だバカタレ。悪いな、ウィルフレッド」
俺はアーネストの頭に思い切り手刀をたたきこむと、ウィルフレッドに謝った。頭おかしいやつでごめんな。
「い、いえ。レニオール様のせいでは」
ウィルフレッドは恐縮したように畏まる。なんでか知らないけど、ウィルフレッド、俺に対してめっちゃ丁寧なんだよな。なんで?
あ、もしかして俺がマリクの親友だから?へへ、だったら嬉しいな~。
ニマニマしてる俺に、マリクが呟く。
「浮気だ……」
「え?」
「ウィルフレッドのバカ!やっぱり僕とのことは遊びだったんだ~!」
ど、どういうこと⁉︎
いつも陽気な態度とは裏腹に、俯瞰して物事を見てるる節のあるマリクが、いきなり感情的になるなんて。恋愛、恐るべし。
というか、浮気ってどういうこと?ウィルフレッドが、誰と?
よくわからないけど、浮気、ダメ、絶対。俺は冷たい目でウィルフレッドを見た。
「浮気って何?」
俺のはじめての親友を泣かせるなんて許さない。事と次第によっては、本気出す。
俺自身はたいしたことないけど、公爵家令息で次期王太子妃でファンネ国王の姉の孫で未来の王様の母親になんだからな!肩書きだけはすっごいんだから!
「誤解です、レニオール様!マリク、勘違いさせるような態度を取ってすまなかった。私が愛しているのは君だけだ」
ウィルフレッドが隣に座るマリクの手を取る。
「ほんと?気品もないし、身分も低いし、貧乏であなたに何にもあげられないけど、それでもいい?」
何にもあげられないってことはないだろ。マリクは頭が良くて料理超上手くて家内管理も出来て堅実で、しかも超可愛い完璧なお嫁さんだし、伯爵夫妻も大歓迎で、絶対に逃すなとウィルフレッドに厳命してると聞く。
むしろ、マリクはお嫁さんにならずに身を立てれば、何をやったって一流になれる男なんだよ。
歌を歌えば一躍サロンの人気者だし、商売をしても料理人をしても絶対に大成功だし、絵も上手いし、王宮勤めをしても出世は間違いないだろう。
ていうか、マリク、俺が王太子妃になっちゃったらお側付きになってほしいなぁ。
「お前は最高の婚約者だよ。私は世界一の幸せ者だ。浮気などしない」
「ウィルフレッド……」
「あ、そうだ。そのことなんだけどさぁ」
めちゃくちゃ盛り上がっていた2人の空気をぶった切って、アーネストが平然と割って入った。おい、空気を読め。
ウィルフレッドからあからさまに邪魔すんじゃねーという視線を受けても、それで遠慮するようなアーネストではない。なんていうか、ゴメン。
「マリク、レニたんの側付きになる気ない?」
ついさっき俺が思ってたことを提案されて、俺は驚いた。なんで?まさかまた心を読まれてる?
「レニたん、出産してから結婚式して王宮で暮らすことになるんだけど、色々心細いだろうし、育児にも慣れてる世話役が欲しかったからさ。とりあえず1年くらい環境が整うまでいてよ。その頃には赤ちゃんも落ち着いてるし、他の侍従やメイドにも慣れてマシになるだろうからさ」
これは、マリクにとっても悪い話ではない。王族や高位貴族のお世話係として、年若い貴族が行儀見習い兼ねて働くのはよくあることだ。
まして、既に出産した王太子妃という盤石な地位にいる俺の側付きともなれば、結構な箔がつく。
側付きの間にサロンで紹介しまくれば、コネも相当出来るだろう。俺の親しいお友達です、って紹介するからな。
そうなれば、爵位の低さだけでグダグダ抜かしている伯爵家の外戚や分家も黙らせることができるだろう。
しかも、マリクはさっきも言った通りめちゃくちゃ優秀。沢山の弟さんたちの面倒を見て、子守もしてきたから赤ちゃんのお世話も慣れてる。
結婚したまま続ければ、女官長だって夢じゃない。
でも、そのかわりウィルフレッドとの結婚は少し延びてしまう。結婚するだけなら出来るけど、新婚早々別居なんて淋しすぎる。
どうせなら年季空けて箔付きで盛大に結婚式した方がいいと思うけど、それはあくまでこっちの考えだからなぁ。
「アーネスト様、それは」
「やります」
ウィルフレッドを遮って、マリクは即答した。
「やらせて、ウィルフレッド。僕の出来ることでレニが助かるなら、助けてあげたいの。それに、アーネストに恩も売りたいし、あなたに釣り合う自分になって、誰にも文句言わせずに結婚したいんだ。お願い」
アーネストは平然と答えた。何なら当然のこと聞くなみたいな不機嫌な顔でマリクを見てる。
おい、何が当たり前なんだよ。ふざけんな。
俺は食べたいものを食べるし、好きにするぞ!
「当たり前じゃない。何言ってんだお前」
「ヤダヤダ!出来るならレニたんに食べさせるもの全部手作りしたい!なんで料理勉強しとかなかったんだろ、帝王学とかクッソ無駄なことやってる場合じゃなかったよ!マリク、料理教えろ!」
「お断りします。申し訳ありませんが、マリクの半径1メートル以内に近付かないでいただけませんか」
ウィルフレッドがすかさずアーネストとマリクの間にはいる。マリクはキュン♡って感じでウィルフレッドの背中を見つめてる。いちゃいちゃすーるーなー!
「は?何でお前が断るわけ?」
「私はマリクの婚約者ですので。他の男が近付くのは看過できません」
まあ、そうだよな。一応演技だったってことになってるけど、見てる方からしたら完全に付き合ってたもん。ウィルフレッドがアーネストをマリクに近づけたいはずがない。
ましてや、定期的に顔を合わせて料理を教えるなんてもっての外。ていうか、おかしくないか?普通教わるのは俺だと思うんだが。
「マリク相手にそんな気起こすわけないだろ!いい加減にしろ!」
「いい加減にするのはお前だバカタレ。悪いな、ウィルフレッド」
俺はアーネストの頭に思い切り手刀をたたきこむと、ウィルフレッドに謝った。頭おかしいやつでごめんな。
「い、いえ。レニオール様のせいでは」
ウィルフレッドは恐縮したように畏まる。なんでか知らないけど、ウィルフレッド、俺に対してめっちゃ丁寧なんだよな。なんで?
あ、もしかして俺がマリクの親友だから?へへ、だったら嬉しいな~。
ニマニマしてる俺に、マリクが呟く。
「浮気だ……」
「え?」
「ウィルフレッドのバカ!やっぱり僕とのことは遊びだったんだ~!」
ど、どういうこと⁉︎
いつも陽気な態度とは裏腹に、俯瞰して物事を見てるる節のあるマリクが、いきなり感情的になるなんて。恋愛、恐るべし。
というか、浮気ってどういうこと?ウィルフレッドが、誰と?
よくわからないけど、浮気、ダメ、絶対。俺は冷たい目でウィルフレッドを見た。
「浮気って何?」
俺のはじめての親友を泣かせるなんて許さない。事と次第によっては、本気出す。
俺自身はたいしたことないけど、公爵家令息で次期王太子妃でファンネ国王の姉の孫で未来の王様の母親になんだからな!肩書きだけはすっごいんだから!
「誤解です、レニオール様!マリク、勘違いさせるような態度を取ってすまなかった。私が愛しているのは君だけだ」
ウィルフレッドが隣に座るマリクの手を取る。
「ほんと?気品もないし、身分も低いし、貧乏であなたに何にもあげられないけど、それでもいい?」
何にもあげられないってことはないだろ。マリクは頭が良くて料理超上手くて家内管理も出来て堅実で、しかも超可愛い完璧なお嫁さんだし、伯爵夫妻も大歓迎で、絶対に逃すなとウィルフレッドに厳命してると聞く。
むしろ、マリクはお嫁さんにならずに身を立てれば、何をやったって一流になれる男なんだよ。
歌を歌えば一躍サロンの人気者だし、商売をしても料理人をしても絶対に大成功だし、絵も上手いし、王宮勤めをしても出世は間違いないだろう。
ていうか、マリク、俺が王太子妃になっちゃったらお側付きになってほしいなぁ。
「お前は最高の婚約者だよ。私は世界一の幸せ者だ。浮気などしない」
「ウィルフレッド……」
「あ、そうだ。そのことなんだけどさぁ」
めちゃくちゃ盛り上がっていた2人の空気をぶった切って、アーネストが平然と割って入った。おい、空気を読め。
ウィルフレッドからあからさまに邪魔すんじゃねーという視線を受けても、それで遠慮するようなアーネストではない。なんていうか、ゴメン。
「マリク、レニたんの側付きになる気ない?」
ついさっき俺が思ってたことを提案されて、俺は驚いた。なんで?まさかまた心を読まれてる?
「レニたん、出産してから結婚式して王宮で暮らすことになるんだけど、色々心細いだろうし、育児にも慣れてる世話役が欲しかったからさ。とりあえず1年くらい環境が整うまでいてよ。その頃には赤ちゃんも落ち着いてるし、他の侍従やメイドにも慣れてマシになるだろうからさ」
これは、マリクにとっても悪い話ではない。王族や高位貴族のお世話係として、年若い貴族が行儀見習い兼ねて働くのはよくあることだ。
まして、既に出産した王太子妃という盤石な地位にいる俺の側付きともなれば、結構な箔がつく。
側付きの間にサロンで紹介しまくれば、コネも相当出来るだろう。俺の親しいお友達です、って紹介するからな。
そうなれば、爵位の低さだけでグダグダ抜かしている伯爵家の外戚や分家も黙らせることができるだろう。
しかも、マリクはさっきも言った通りめちゃくちゃ優秀。沢山の弟さんたちの面倒を見て、子守もしてきたから赤ちゃんのお世話も慣れてる。
結婚したまま続ければ、女官長だって夢じゃない。
でも、そのかわりウィルフレッドとの結婚は少し延びてしまう。結婚するだけなら出来るけど、新婚早々別居なんて淋しすぎる。
どうせなら年季空けて箔付きで盛大に結婚式した方がいいと思うけど、それはあくまでこっちの考えだからなぁ。
「アーネスト様、それは」
「やります」
ウィルフレッドを遮って、マリクは即答した。
「やらせて、ウィルフレッド。僕の出来ることでレニが助かるなら、助けてあげたいの。それに、アーネストに恩も売りたいし、あなたに釣り合う自分になって、誰にも文句言わせずに結婚したいんだ。お願い」
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