その悪役令嬢、復讐を愛す~悪魔を愛する少女は不幸と言う名の幸福に溺れる~

のがみさんちのはろさん

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第二章

【無知な少女の決意】

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 姉が去った後の両親は完全に心が壊れてしまった。
 こんなことになるなんて。トワはどうすればいいのか分からず、ただ立ち尽くすことしか出来なかった。

「すみません」

 ドアがノックされ、男性の声が聞こえた。
 トワは恐る恐るドアを開くと、そこには聖職者の制服を身に纏った男性が立っていた。

「あの……?」
「私は教会より派遣されました聖職者《エクソシスト》、クラウス・ノイシーです。グンフィード伯爵の件でお聞きしたいことがあってきたのですが……」

 伯爵家の件。その言葉にトワは小さく肩を震わせた。
 今、両親は話を聞ける状況じゃない。自分が対応しなければならない。姉のことも話さなければならない。
 トワはひとまず応接間にクラウスを案内した。

 メイドにお茶の準備を頼み、二人は向かい合ってソファに腰を下ろした。

「まず最初に……伯爵は地下で亡くなっていました。どうやら黒魔術の儀式をしていたようで……地下には彼の死体と、魔法陣のようなものが描かれていました」
「儀式、ですか?」
「ええ。そこには大量の血痕が残っていたのですが、どうやら伯爵のものではなかったそうです。そこで、伯爵家のメイドの話で若い女性を一人買ったとの話を聞いたのですが」

 クラウスの話に、トワは目を大きく見開いて驚いた。
 両親は姉、ディゼルを伯爵の妻として嫁がせたはず。だが実際は人身売買を行っていて、儀式に使う生贄のために姉は売られたのだ。

「…………わ、私……そんなこと知らなかった……」
「やはり、この屋敷のお嬢さんでしたか」
「えっと……姉、です。ですが、姉は戻ってきました。怪我をしているようには見えなかったのですが……」
「そうですか……だとすると、儀式が成功したのかもしれません」
「え?」
「伯爵が行っていたのは悪魔を呼ぶ儀式です。お姉さんは悪魔に体を乗っ取られた可能性があります」

 悪魔。今までも両親から聞いていた言葉。
 まさか本当に姉が悪魔の娘になってしまうなんて。トワは震える体を両手でギュッと抱きしめた。

「怖がるのも分かります。しかし、我々は君のお姉さん……いえ、悪魔を追いかけなければいけません。おそらく儀式が行われた晩、我々は邪悪な気配を感じていまして、君のご両親から依頼がなくとも伯爵の家を調べるつもりではありました」
「あの……姉は、姉は、どうなるんですか?」
「それは、まだ分かりません。だけど、貴女なら救えるかもしれません」
「……私が?」

 トワは言ってる意味が分からず、首を傾げた。
 悪魔と化した姉を救う方法があるというのか。そもそも、姉は救われたいと望んでいるのだろうか。
 両親が、自分が、姉にしてきたこと。こうなる前から姉を悪魔を言い続け、人として扱ってこなかった。
 トワも彼女を助けようとしなかった。そんな自分に何が出来るというのだろう。

「実は、数年前から君のことを調べていたんです」
「な、何故?」
「貴女は……トワさんは聖女の資質をお持ちなのです。こうして実際にお会いして、私も確信しました。貴女は間違いなく百年前に存在していた聖女様の生まれ変わりです」
「……私、が……聖女?」

 クラウスの真っ直ぐな瞳に、トワは混乱する。
 自分が聖女だなんて信じられない。そんな力があるとは思えない。

 だけどその話が本当なら、確かに姉を救えるのかもしれない。
 悪魔を祓い、元の姉に戻せるのかもしれない。
 これはきっと、今までの行いを償うためのチャンスなのだとトワは拳をきつく握りしめた。

「クラウス様。私に何が出来ますか?」
「では、これからのお話をしましょう。まず我々は悪魔の気配を追うことになります。暫く屋敷を空けることになりますが……大丈夫ですか?」

 トワは両親のことを頭に浮かべた。
 姉を助けに行くなんて言ったらきっと反対されるだろう。もしくは救うのではなく殺せと言われる。
 どっちにしろ今はまともに会話も出来ない。トワは数人の執事とメイドに話をして、クラウスと共に姉を追う旅に出る決意をした。

 だがトワは知らない。姉の目的も、彼女の心の闇の深さも。
 花や蝶よと育てられた少女には、到底理解できるものではないのだから。



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