男装オメガと獣人アルファ~純白の聖女と漆黒の暗殺者は何色の花を咲かす~

のがみさんちのはろさん

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第21話「殺意」

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 深夜になり、フローガは屋上でいつものように月を眺めていた。
 ここ暫く周囲を警戒していたが特に何も問題は起こっていない。不自然なほど、学園内は平和だった。

「ザジ」
「はっ」

 フローガの背後に現れたザジは、跪いたまま報告を始めた。

「おそらく、ではありますがあの女の家があると思われる場所を特定しました」
「そうか」
「はい。微かに魔力の跡がありました。散々探して、いきなり見つかったので、もしかしたら魔女がわざと……」
「かもしれないな。本当に、何が目的なのか分からないな……」

 未だに魔女クルクスと接触は出来ていない。クルクスについては噂話と、アンジュから聞いた話しか情報がない。
 残念ながら、実際に会ったことのあるアンジュから教えられたのは甘いものが好きだとか紅茶が好きだとかそんな話だけで、フローガの欲しい情報はほぼなかった。
 強いて言うならクルクスの外見を知れたことは大きな収穫だ。

「……黒髪の若い女、か。魔女の噂がどれだけ前からあると思ってんだか」
「若、どうなさいますか?」
「とりあえず見張りは続行。それと満月も近い。お前たちも注意しろよ」
「はい」

 満月の夜。魔力の強いものは心を乱しやすい。狼族は特に、満月の力に影響を受けやすい。力が乱れ、魔力が暴走することもある。
 そのせいか今も少し気が昂り、感覚も鋭くなっている。

「……嫌な予感がする。不気味なほど、空気が静まりすぎてる」
「…………はい。静かすぎて、耳が痛いくらいです」
「悪い事が起きるときは、決まって静かだ……」
「あの女の方は、大丈夫なんですか?」

 ザジが聞くと、フローガは少し黙った後、軽く息を吐いて頷いた。

「アイツは何も知らないからな。ただ兄の行方を探し続けている。それ以外は特に」
「そうですか。オメガということで心配してましたが、魔女の魔法は本当に凄いですね」
「そうだな。俺以外は本当に気付いてないし、ヒートになる様子もない。まぁ、おかげで俺も余計な心配をせずに済んでる。こればかりは魔女様々だな」
「ええ。こちらでもあの女の様子は見張ってますが、至って普通の男子生徒です」

 アンジュが学園にいる間、ザジや他の者が彼女の様子を監視している。
 聖女の力を持っていると分かってからは特に、その目をより光らせている。
 何がキッカケでバレるか分からない。クルクスの魔法が何処まで通用するのかも分からないし、完全に信用が出来る訳でもない。
 フリードの、狼族の目的のために、予定外の動きがあっては困るのだ。

「ここに、この学園にいるのは確かなんだ……俺の目を、鼻を、誤魔化せると思うな……」

 グルル、と低く唸るフリードに、ザジは背筋が震えた。
 僅かに漏れる殺意。近くにいるせいか、その気配だけで首を絞められたような感覚に陥った。
 それだけ彼の闇が深いことが伺える。
 狼族の目的。全ては、この学園のどこかに隠されている。


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