21 / 78
第21話「殺意」
しおりを挟む深夜になり、フローガは屋上でいつものように月を眺めていた。
ここ暫く周囲を警戒していたが特に何も問題は起こっていない。不自然なほど、学園内は平和だった。
「ザジ」
「はっ」
フローガの背後に現れたザジは、跪いたまま報告を始めた。
「おそらく、ではありますがあの女の家があると思われる場所を特定しました」
「そうか」
「はい。微かに魔力の跡がありました。散々探して、いきなり見つかったので、もしかしたら魔女がわざと……」
「かもしれないな。本当に、何が目的なのか分からないな……」
未だに魔女クルクスと接触は出来ていない。クルクスについては噂話と、アンジュから聞いた話しか情報がない。
残念ながら、実際に会ったことのあるアンジュから教えられたのは甘いものが好きだとか紅茶が好きだとかそんな話だけで、フローガの欲しい情報はほぼなかった。
強いて言うならクルクスの外見を知れたことは大きな収穫だ。
「……黒髪の若い女、か。魔女の噂がどれだけ前からあると思ってんだか」
「若、どうなさいますか?」
「とりあえず見張りは続行。それと満月も近い。お前たちも注意しろよ」
「はい」
満月の夜。魔力の強いものは心を乱しやすい。狼族は特に、満月の力に影響を受けやすい。力が乱れ、魔力が暴走することもある。
そのせいか今も少し気が昂り、感覚も鋭くなっている。
「……嫌な予感がする。不気味なほど、空気が静まりすぎてる」
「…………はい。静かすぎて、耳が痛いくらいです」
「悪い事が起きるときは、決まって静かだ……」
「あの女の方は、大丈夫なんですか?」
ザジが聞くと、フローガは少し黙った後、軽く息を吐いて頷いた。
「アイツは何も知らないからな。ただ兄の行方を探し続けている。それ以外は特に」
「そうですか。オメガということで心配してましたが、魔女の魔法は本当に凄いですね」
「そうだな。俺以外は本当に気付いてないし、ヒートになる様子もない。まぁ、おかげで俺も余計な心配をせずに済んでる。こればかりは魔女様々だな」
「ええ。こちらでもあの女の様子は見張ってますが、至って普通の男子生徒です」
アンジュが学園にいる間、ザジや他の者が彼女の様子を監視している。
聖女の力を持っていると分かってからは特に、その目をより光らせている。
何がキッカケでバレるか分からない。クルクスの魔法が何処まで通用するのかも分からないし、完全に信用が出来る訳でもない。
フリードの、狼族の目的のために、予定外の動きがあっては困るのだ。
「ここに、この学園にいるのは確かなんだ……俺の目を、鼻を、誤魔化せると思うな……」
グルル、と低く唸るフリードに、ザジは背筋が震えた。
僅かに漏れる殺意。近くにいるせいか、その気配だけで首を絞められたような感覚に陥った。
それだけ彼の闇が深いことが伺える。
狼族の目的。全ては、この学園のどこかに隠されている。
0
あなたにおすすめの小説
絶対、離婚してみせます!! 皇子に利用される日々は終わりなんですからね
迷い人
恋愛
命を助けてもらう事と引き換えに、皇家に嫁ぐ事を約束されたラシーヌ公爵令嬢ラケシスは、10歳を迎えた年に5歳年上の第五皇子サリオンに嫁いだ。
愛されていると疑う事無く8年が過ぎた頃、夫の本心を知ることとなったが、ラケシスから離縁を申し出る事が出来ないのが現実。 悩むラケシスを横目に、サリオンは愛妾を向かえる準備をしていた。
「ダグラス兄様、助けて、助けて助けて助けて」
兄妹のように育った幼馴染であり、命の恩人である第四皇子にラケシスは助けを求めれば、ようやく愛しい子が自分の手の中に戻ってくるのだと、ダグラスは動き出す。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結】イケオジ王様の頭上の猫耳が私にだけ見えている
植野あい
恋愛
長年の敵対国に輿入れしたセヴィッツ国の王女、リミュア。
政略結婚の相手は遥かに年上ながら、輝く銀髪に金色の瞳を持つ渋さのある美貌の国王マディウス。だが、どう見ても頭に猫耳が生えていた。
三角の耳はとてもかわいらしかった。嫌なことがあるときはへにょりと後ろ向きになり、嬉しいときはピクッと相手に向いている。
(獣人って絶滅したんじゃなかった?というか、おとぎ話だと思ってた)
侍女や専属騎士に聞いてみても、やはり猫耳に気づいていない。肖像画にも描かれていない。誰にも見えないものが、リュミアにだけ見えていた。
頭がおかしいと思われないよう口をつぐむリュミアだが、触れば確かめられるのではと初夜を楽しみにしてしまう。
無事に婚儀を済ませたあとは、ついに二人っきりの夜が訪れて……?!
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
私は、聖女っていう柄じゃない
波間柏
恋愛
夜勤明け、お風呂上がりに愚痴れば床が抜けた。
いや、マンションでそれはない。聖女様とか寒気がはしる呼ばれ方も気になるけど、とりあえず一番の鳥肌の元を消したい。私は、弦も矢もない弓を掴んだ。
20〜番外編としてその後が続きます。気に入って頂けましたら幸いです。
読んで下さり、ありがとうございました(*^^*)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる