男装オメガと獣人アルファ~純白の聖女と漆黒の暗殺者は何色の花を咲かす~

のがみさんちのはろさん

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第20話「おやすみ」

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――――
――


「だいぶ上手くなったな」
「本当ですか?」

 アンジュが魔法学園に編入してから、一ヵ月が過ぎた。
 こうしてフローガと夜中に魔法の訓練をするのも日課になりつつある。

 あれから学園生活にも慣れてきて、図書館で調べ物をする余裕も出来た。
 兄、イデアがこの学園に在学していたのは過去の中等部の学生名簿に名前が載っていたので間違いない。しかし行方不明になった原因だけはまだ何も分からないまま。
 それとなく学園の噂話などがないか聞いてみたりもしたが、不自然なほど何もなかった。
 一人の生徒が行方不明になったというのに、同学年だった生徒たちが何も知らないはずもない。

「今日はここまでにするか」
「はい、ありがとうございました!」

 練習を終え、フローガに抱えられて窓から部屋に戻る。これもいつもの流れ。
 アンジュが聖女の力があるとわかったあの日から、フローガは彼女が寮にいる間は共に過ごすようになった。
 少しでも彼女から情報を得るため、そして聖女の力を狙う者が現れないか見張るためだ。

「疲れただろ、さっさと寝ろ」
「は、はい。今日もありがとうございます、フローガさんもゆっくり休んでくださいね」
「…………ああ」

  アンジュもフローガに対して緊張することは全く無くなった。
 むしろ、最初に比べて随分と懐いたようにも見える。フローガは日に日に自分の前だけ気が緩んでいく彼女に思うところもあったが、嫌われて警戒心を持たれるよりマシだと気にしないことにした。

「魔法を覚えたおかげで、髪を乾かすのも楽になりました」

 シャワーを済まし、風魔法で髪の毛を乾かすアンジュ。最初は時間がかかっていたが、今では一瞬で出来るようになった。

「お前は覚えがいいな」
「フローガさんの教え方が上手いんですよ」
「……部下……いや、弟分みたいなやつがいるからな」
「へぇ、そうなんですか。なるほど、確かにお兄さんぽさありますね、フローガさん」
「……ある、か?」

 部下は大勢いるが、実際の兄弟はいない。だから兄らしさがあると言われてもピンと来なかった。
 兄弟と部下では接し方も違うのではないかとフローガは思ったが、訂正すると話がややこしくなるのでスルーした。

「俺のことはどうでもいいから、早く寝ろ」
「あ、はい!」

 アンジュは慌ててベッドに入り、布団を被った。
 素の自分で話せる唯一の時間だからか、フローガとこうして他愛ない話をするのが好きになっていた。
 だからつい長話をしたくなり、フローガに注意されるまでがセットだ。

「おやすみなさい、フローガさん」
「……おやすみ」


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