付与術師の異世界ライフ

畑の神様

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闘技大会編

逆転の一手

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「私の≪魔剣ダインスレイヴ≫の固有能力ユニークアビリティ、――――≪根源喰らいオリジン・イーター≫でね」


 イーヴァルディは勝利を確信した表情で、得意げに彰に告げる。

 
「――――≪根源喰らいオリジン・イーター≫だと?」
「ほう、これこれはどうやらどのような類いの能力かは考察できていたようだが、その詳細まではつかめていなかったらしい。
 君もなぜ負けたのかわからないままではさぞ不満だろう。餞別だ。私のこの能力、ここまでの君の健闘を賞して教えてあげるとしよう」


 すると、イーヴァルディは彰にのみ聞こえる程度の声で語り始める。
 ここまでくれば万に一つも自身の負けはあり得ないと、そこまで確信したが故の行動だ。
 一見愚かしいその行動も、彼の確信の強さの現れであり、同時にそれはどれほど現状は彰にとって厳しいものなのかを如実に示していた。


 「この≪魔剣ダインスレイヴ≫の固有能力ユニークアビリティ、≪根源喰らいオリジン・イーター≫は『この剣の斬撃に触れた対象の原動力を刈り取る』って能力でね。
 魔法を斬ればその込められた魔力を刈り取り、人体を斬れば身体を動かす原動力である体力・・を刈り取る……いや、斬ればというのは正しくないな、正確には触れれば・・・・と言った方がいい。
 要するにこの魔剣に斬られるか、あるいは防ぐ際に体に触れるか掠るかすれば、対象の体力は刈り取られていくことになる。
 もちろん、斬撃を素手で弾くなどということをすればどうなるかは言わずもがなだろう」

(ま、とは言ってもどうやら身体強化の魔法は魔力よりも魔剣がその体そのものの原動力である体力を優先しちゃうから削れないって欠点はあるんだけど……)


 と内心思っているイーヴァルディだが、そんなことが彰に分かるわけがなかった。


「ちッ! なんて能力持ってやがる……そんな能力、正しく俺の天敵じゃねぇか、こりゃいよいよマジでまずいな。でも……」


――――それでも、負けるわけにはいかない。

 彰はそう強く思い、再び足に強く力を込める。
 彰のことを”最強”だと、信じて疑わない二人がいる。
 一人はそれを頑なに主張し続け、もう一人はボロボロになってまでそれを証明しようとした。
 その二人は今も観客席からこの試合の行方を見守っているのだ。無論、彰の勝利を信じて……。
 であれば――――その期待を裏切るわけにはいかない。
 なんとしても、ボロボロになってでもこの戦いに勝利し、彼女たちが正しかったことを今この場で証明する。
 それこそが、彼にできる、精一杯の恩返しなのだから……。
 気がつけば、彼はすでに立ち上がっていた。


「ほう、まだ立つのか……でもそんな状態で戦えるのかい?」


 確かに、彼の身体はすでに限界。
 度重なり、強大な精神ダメージを受けたが故に、その意識は今もなお明確とは言えない。
 故に、足取りは安定とは程遠く、泥酔しているという方がしっくりくるであろうというありさまだ。
 今の彼には“雷化”はおろか、基本の術すらも発動できるか怪しい所だった。
 だが、例えそれでも……。


「……悪いな、この大会ではさ、俺には負けられない理由がある。
 だから、俺はまだ終われない。終わるわけにはいかないんだよッ!!」


 そう声に出すだけで、彰の手足に力が入った。
 そして、彰は腰を落とし、両腕を上げ、構えをとる。


「素晴らしい。さすが私が認めた男だよ、今までの有象無象とは格が違う。
 どうやら私もまだ、まだまだ読みが甘かったらしい。
 だからこそ――――全力で潰させてもらおう!」
「けっ!! やってみやがれ、行くぞチート野郎ッ!! 特性付与――――“高速化”」


 彰はそうして、自信を鼓舞するかのように叫ぶと再び地を蹴り、イーヴァルディへと立ち向かっていく。
 再び激突する両者。
 "高速化"をかけて向かって行く彰はしかし、やはり先程までの速さやキレは無い。
 対するイーヴァルディは多少疲れが見えるものの、その動きにはまだまだ余裕が見て取れた。
 それでも、上段から振り下ろされた一刀を身を限界まで捻って避け、続いて振られた横薙ぎの一刀を身を地にすりつける程低くすることで回避。
 魔剣が自身の頭の僅か上方を掠めていくのを肌で感じながら、即座に接近、反撃に出ようとした所を恐るべき速さで再び振るわれた魔剣が彰に敗北を与えんと襲い掛かってくる。
 当たれば必敗、おそらく一片の抵抗の余地もなく彰の意識は刈り取られ、後日自身の敗北を自覚することとなるだろう。
 そして、それを引き起こす一太刀はすでに常人には避けられぬ間合いにまで侵入して来ていた。
 だが、彰はその不可避の一太刀をこちらも常人にはあり得ぬ速さで跳躍し、体勢を剣と並行になるように無理やり変え、そのまま絶妙のタイミングで体幹を軸に一回転することによって紙一重で避けて見せた。
 そんなやり取りを幾度も続ける彰とイーヴィディル。
 しかし、すでに彰の身体は限界を超えている。
 何とか"高速化"による恩恵を限界まで引き出すことによって立ち回ってはいるが、それも死の嵐の合間を縫うかの如き微妙なバランスの上に成り立っている状況。
 今の彰は飛来してくる針の穴に糸を通すかのような作業を連続してこなしているのだ。
 必然、そんな事をいつまでも続けられる道理など存在せず、彰の敗北も時間の問題であった。
 それに加え、イーヴァルディのもつ魔剣ダインスレイヴの≪根源喰らいオリジン・イーター≫は彰の肌を掠めるだけで彼の体力を奪って行く。
 それがただでも難しい状況の難易度をさらに高め、彰の敗北を早めていた。


「――――はぁぁぁァァァァァアアああああッ!!」
「くっこれだけ削ってもまだ倒れ無いなんて、君はやはりすごいよ、本当に素晴らしいよアキラ君ッ!!」


 だが、敗北を目の前にし、しかし彰はそれでも諦めず、イーヴァルディの剣閃を掻い潜りながら必死に突破口を探し続ける。


――――本当にもう何もないのか?

――――自分の全てを絞り尽したのか?

――――すでに為す術はないのか?


 そんな疑問が彰の頭の中で渦を巻く。


――――本当にもう何もないのか?


            いや、ある――――


――――自分の全てを絞り尽したのか?


      いや、まだだ。まだ俺は出し切っていない――――


――――すでに為す術はないのか? 


  否、俺の手にはまだ一手、為す術が残っているッ!!――――


 そう思い至った瞬間、彰の脳内にジャックの言葉が思い起こされる。
 『自分の欲する魔法の形を強くイメージすればいい』と、そうジャックは言った。
 自分の欲する魔法の形とは何か?
 そんな荒唐無稽な質問の答えをしかし、彰はすでにわかっていた。
 それは最強の攻撃魔法でも、ましては最強の防御でもない。
 その魔法は彰以外の者にとっては大した意味をなさず、されど彰が使えば絶大な力を発揮する……そんな魔法。

 そうして思い至った瞬間、ふっと自然に彰の頭にその詳細と発動方法が浮かび上がってきた。


「あっ……」


 壮絶な戦いの最中、ふとそんな場違いに間抜けな声を漏らす彰。
 すでに対抗手段、そしてその発動方法は分かっている。
 であれば――――やってやれないことはないッ!!

 だがしかし、そうして希望の光が出たことによる一瞬の間、そこをイーヴァルディは逃さない。
 イーヴァルディの剣閃は今度こそ彰を逃がすまいと、その射線上に彼を完全に捕えていた。
 それは今度こそ避けることは叶わない。
 彰をもってしても不可避。魔剣に残された仕事は決定された彰への直撃という結果をただ創り出す、それのみであった。

――――故に、彰は避けない。

 彰は覚悟を決めると、足に"硬化"をかけて跳躍、そのまま両足でもってイーヴァルディの魔剣に対抗すると、その勢いを利用し、大きく距離をとった。
 この瞬間、魔剣ダインスレイヴの≪根源喰らいオリジン・イーター≫が彰の体力を削り、また、その威力による多大な精神ダメージが彰を襲うが、それを彰は鉄の意志でもって持ちこたえる。


「なにっ!?」


 流石に彰のこの行動は予想外だったのか、驚愕を露わにするイーヴァルディ。
 そして、彰はその隙にしっかりと着地を決めると、最後の一手、切り札となるその魔法の詠唱を開始する。
 直後、彰が何かを起こそうとしていることを感じ取ったのか、即座に彰にとどめを刺さんとイーヴァルディが彰に迫る。
 対する彰はすでに体は動かず、彼にできるのはただ詠唱することのみであった。
 接近するイーヴィディルに、詠唱する彰。
 そして、イーヴァルディが彰に接近するよりも微かに早く、彰の詠唱が終わる。
 

「我求むるは尽きること無き力、魔力をもってその代価と為し、ここに発現せよッ!!――――≪限界抹消アンリミテッド≫」
 

 しかしその直後、彰の詠唱の完成に一瞬遅れてイーヴァルディの魔剣による暴虐が彼を襲った。

 
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