傭兵魔術師は異世界で英雄を目指す

畑の神様

文字の大きさ
12 / 26
1章

エリスの告白

しおりを挟む
 

 ということで、俺は手始めに先程の戦闘を見て、思ったことを二人に伝えていた。俗に言う反省会というやつだ。因みに、既にこの場所の近くに敵がいないことは確認済みなので、話の途中に新たな敵に襲われるという心配もない。二人は俺の指摘を説教される子供のような状態で聞いていた。もっとも、説教しているのも同じ子供なのだが……それを気にしてはいけない。


「で、まずレオ。お前は油断しすぎだ。なに敵の安否も確認しないで浮かれてやがる!
それに動きにも無駄が多い。一体目を倒したところで『よしっ!』なんて言ってる暇があったらさっさと二体目の対処に迎え!」
「うっ……わかったよ……」
「それから、ノア。お前は魔術に無駄が多い! もっと発動前のイメージを明確に固めていれば、最初のゴブリンは確実に仕留められていたはずだ!」
「む……耳が痛いわね……」
「それから、これは二人ともに言えることだが、詠唱に無駄が多すぎる。あのくらいの魔術ならもっと短文で行使できるはずだ!
 まぁ、でもそのあたりはこれからやっていくとするから、今のところはいい。っととりあえずこんなもんか……」


 言いたかったことを全て言い終えると、ふっと息をつく。少し言い過ぎたかな? とも思ったが、やはり最初はこのくらい言っておかなければいけないだろうとも思う。それよりも早く次の段階に進んだほうが良いだろう。時間もないことだし。でも、その前にこれだけは聞いておかなきゃな……。


「……それじゃ話しはこれぐらいにして、次の修業に行こうと思うんだが……その前に、エリスは魔術も使えないのか?」
「……あ、その……えっと……」
「大丈夫、怒ったりしないから正直に答えてくれないか?」


 正直な話、こちらもただできないというだけじゃ手の施しようがない。せめて現状の把握くらいはしておきたい。そう思っての質問だったのだが……なんかまずいことでもあるのか?

 俺の質問に対し、エリスは気まずそうに言葉を濁すばかりで、なかなか答えてくれない。それを見かねたノアが助け舟を入れようと口を挟んで来た。


「ええと、ヴァン君。あのね……」
「―――大丈夫、ノアちゃん。自分で言うよ」

 
 エリスはそう言ってノアの言葉を遮ると、ようやくその重い口を開き……


「あのね……ヴァン先生。実は、私の属性は……無属性なの……」 


 と、力のない声で告げた。その声と表情からはは彼女のこれまでの苦悩と今現在の不安伝わってくる。

 無属性……それはどの属性の属性元素エレメントも持っていないがために、属性魔法のその一切を使うことの出来ない、神に見放された子。

 それは魔法が主軸として回っているこの世界において、致命的な現実。


「そうだったのか……」


 彼女、エリスは恐らく、俺とは違う。俺は魔術回路を作る際に自分で変質させてしまっただけ。だが……だが、彼女のそれは偶然だ。数えきれないほど無数にいる人の中で、たまたま運が悪く当たってしまった。『なんで自分なのか?』『どうしてほかの誰かじゃなかったのか?』『いったい自分はどうしたらいいのか?』きっと彼女はそのことで沢山悩んできたのだ。

 だが、彼女はそれでも、幸運なことに守ってくれる友達に巡り合えた。しかし、皮肉にも今度はそれが彼女を無力感に苛ませたのだろう。

――――守られてばかりで悔しかったはずだ。何もできないことが辛かったはずだ。そんな現状をどうすることもできなかったのは苦しかったはずだ。

 彼女は十分苦しんだと思う。それは彼女の今の声と表情で分かる。なら、いい加減救われるべきだ。

 それを行うことができるのが俺しかいないというのであれば、俺は……
 


「そうだよね……いくらヴァン先生でも無属性の私を鍛えるなんて無―――」
「――――大丈夫、安心しろ。俺が君ことを強くしてやる。もう誰かに守られなくても済むようにしてやる。だから安心して俺に任せておけ」


 ……この娘を救わなければいけない。それが俺の目指す英雄ヒーローとしてのやらねばならないことだから。


「……え、ええ!? 本当に? 本当に無属性なんかの私を強くしてくれるの!?」
「ああ、俺に任せろ。君は絶対に強くなれる。俺が保障してやるし、そのための策もちゃんとある」
「ありがとう……本当にありがとう……ヴァンせんせ、い……うぅ……」


 そう言いながら、彼女は泣いていた。きっと安心してしまったのだろう。対して、他の二人は少し驚愕していた。


「師匠!! 本当か!? 本当にエリスも強くなれるのか!?」
「ヴァン君、こう言ってはなんだけれど、無属性はその殆どが身体強化の魔法くらいしか修行してもまともに使えないのよ?
 もしもエリスに同情しただけなら今すぐに……」
「そんな心配は無用だ。だって俺も無属性だからな」
「「「…………えっ」」」


 そう言った瞬間、その場の空気が何故か硬直した。

 ん? そういや俺自分の属性まだ言ってなかったか? しくじったな……先に言ってりゃエリスにここまで気を使わせることもなかったかもしれない。
 

「そういや俺も言うの忘れたけど、俺の属性は無だぞ? 要するに、俺も属性なし」
「「「いや……いやいや……えぇぇぇええ―――!?」」」
「お前ら、何をそんなに驚いてんだよ?」
「だって、だってあなた……ブラックヴォルフ何十体も倒してたじゃない!!」
「師匠なんか魔力の察知とかもしてたし、てっきり天才魔法使いメイジだとばっかり……」
「ふぇ? ふぇ~、ふぇ―――ッ!?」
「まぁ無属性もやり方次第でそのくらいにはなれるってことだ。あとエリス、お前もうそれ言葉になってないからな?」


 俺は自信ありげに言うが、正直言うと、俺の場合は特殊だ。前世で魔術の知識があったからこそ、こうなれただけ。だが……それを今言う必要はあるまい。


「良かった……エリス、よかったわね……」
「やったなエリス!! 一緒に頑張ろうぜ!!」
「うん……うん!! ありがとう、レオ、ノア!! 私も頑張るよぉ~」


 俺は三人の微笑ましい光景を少しの間、眺めていたのだった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...