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1章
エリスの告白
しおりを挟むということで、俺は手始めに先程の戦闘を見て、思ったことを二人に伝えていた。俗に言う反省会というやつだ。因みに、既にこの場所の近くに敵がいないことは確認済みなので、話の途中に新たな敵に襲われるという心配もない。二人は俺の指摘を説教される子供のような状態で聞いていた。もっとも、説教しているのも同じ子供なのだが……それを気にしてはいけない。
「で、まずレオ。お前は油断しすぎだ。なに敵の安否も確認しないで浮かれてやがる!
それに動きにも無駄が多い。一体目を倒したところで『よしっ!』なんて言ってる暇があったらさっさと二体目の対処に迎え!」
「うっ……わかったよ……」
「それから、ノア。お前は魔術に無駄が多い! もっと発動前のイメージを明確に固めていれば、最初のゴブリンは確実に仕留められていたはずだ!」
「む……耳が痛いわね……」
「それから、これは二人ともに言えることだが、詠唱に無駄が多すぎる。あのくらいの魔術ならもっと短文で行使できるはずだ!
まぁ、でもそのあたりはこれからやっていくとするから、今のところはいい。っととりあえずこんなもんか……」
言いたかったことを全て言い終えると、ふっと息をつく。少し言い過ぎたかな? とも思ったが、やはり最初はこのくらい言っておかなければいけないだろうとも思う。それよりも早く次の段階に進んだほうが良いだろう。時間もないことだし。でも、その前にこれだけは聞いておかなきゃな……。
「……それじゃ話しはこれぐらいにして、次の修業に行こうと思うんだが……その前に、エリスは魔術も使えないのか?」
「……あ、その……えっと……」
「大丈夫、怒ったりしないから正直に答えてくれないか?」
正直な話、こちらもただできないというだけじゃ手の施しようがない。せめて現状の把握くらいはしておきたい。そう思っての質問だったのだが……なんかまずいことでもあるのか?
俺の質問に対し、エリスは気まずそうに言葉を濁すばかりで、なかなか答えてくれない。それを見かねたノアが助け舟を入れようと口を挟んで来た。
「ええと、ヴァン君。あのね……」
「―――大丈夫、ノアちゃん。自分で言うよ」
エリスはそう言ってノアの言葉を遮ると、ようやくその重い口を開き……
「あのね……ヴァン先生。実は、私の属性は……無属性なの……」
と、力のない声で告げた。その声と表情からはは彼女のこれまでの苦悩と今現在の不安伝わってくる。
無属性……それはどの属性の属性元素も持っていないがために、属性魔法のその一切を使うことの出来ない、神に見放された子。
それは魔法が主軸として回っているこの世界において、致命的な現実。
「そうだったのか……」
彼女、エリスは恐らく、俺とは違う。俺は魔術回路を作る際に自分で変質させてしまっただけ。だが……だが、彼女のそれは偶然だ。数えきれないほど無数にいる人の中で、たまたま運が悪く当たってしまった。『なんで自分なのか?』『どうしてほかの誰かじゃなかったのか?』『いったい自分はどうしたらいいのか?』きっと彼女はそのことで沢山悩んできたのだ。
だが、彼女はそれでも、幸運なことに守ってくれる友達に巡り合えた。しかし、皮肉にも今度はそれが彼女を無力感に苛ませたのだろう。
――――守られてばかりで悔しかったはずだ。何もできないことが辛かったはずだ。そんな現状をどうすることもできなかったのは苦しかったはずだ。
彼女は十分苦しんだと思う。それは彼女の今の声と表情で分かる。なら、いい加減救われるべきだ。
それを行うことができるのが俺しかいないというのであれば、俺は……
「そうだよね……いくらヴァン先生でも無属性の私を鍛えるなんて無―――」
「――――大丈夫、安心しろ。俺が君ことを強くしてやる。もう誰かに守られなくても済むようにしてやる。だから安心して俺に任せておけ」
……この娘を救わなければいけない。それが俺の目指す英雄としてのやらねばならないことだから。
「……え、ええ!? 本当に? 本当に無属性なんかの私を強くしてくれるの!?」
「ああ、俺に任せろ。君は絶対に強くなれる。俺が保障してやるし、そのための策もちゃんとある」
「ありがとう……本当にありがとう……ヴァンせんせ、い……うぅ……」
そう言いながら、彼女は泣いていた。きっと安心してしまったのだろう。対して、他の二人は少し驚愕していた。
「師匠!! 本当か!? 本当にエリスも強くなれるのか!?」
「ヴァン君、こう言ってはなんだけれど、無属性はその殆どが身体強化の魔法くらいしか修行してもまともに使えないのよ?
もしもエリスに同情しただけなら今すぐに……」
「そんな心配は無用だ。だって俺も無属性だからな」
「「「…………えっ」」」
そう言った瞬間、その場の空気が何故か硬直した。
ん? そういや俺自分の属性まだ言ってなかったか? しくじったな……先に言ってりゃエリスにここまで気を使わせることもなかったかもしれない。
「そういや俺も言うの忘れたけど、俺の属性は無だぞ? 要するに、俺も属性なし」
「「「いや……いやいや……えぇぇぇええ―――!?」」」
「お前ら、何をそんなに驚いてんだよ?」
「だって、だってあなた……ブラックヴォルフ何十体も倒してたじゃない!!」
「師匠なんか魔力の察知とかもしてたし、てっきり天才魔法使いだとばっかり……」
「ふぇ? ふぇ~、ふぇ―――ッ!?」
「まぁ無属性もやり方次第でそのくらいにはなれるってことだ。あとエリス、お前もうそれ言葉になってないからな?」
俺は自信ありげに言うが、正直言うと、俺の場合は特殊だ。前世で魔術の知識があったからこそ、こうなれただけ。だが……それを今言う必要はあるまい。
「良かった……エリス、よかったわね……」
「やったなエリス!! 一緒に頑張ろうぜ!!」
「うん……うん!! ありがとう、レオ、ノア!! 私も頑張るよぉ~」
俺は三人の微笑ましい光景を少しの間、眺めていたのだった。
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