【加筆修正済】貴方に幸せの花束を

かかし

文字の大きさ
32 / 51
中編

やり直せるのではないか?

しおりを挟む
―――次に目を覚ました時、懐かしい場所に居た。

幼少期に過ごした別宅の、学園を卒業するまで拠点の一つとしていた部屋の中。
何故こんな場所にと思いながら鏡を見て、思わず叫び出しそうになった。

明らかに、小さい。

牙は抜けそうなのかぐらぐらと頼りない乳歯だったし、毛だって柔らかくふわふわとしている。
筋肉だって、全然無い。
一体どういうかと混乱する俺は、急いで机の中にしまっていた日記を見た。
引っ張ればすぐに千切れそうな、玩具の南京錠が付いた緋色の日記帳。
それは幼い頃に愛用していた日記帳で、そんな筈はないと思いながらも鍵を外して中身を見る。

最後のページは六歳の誕生日を迎えたという記載。

それ以降は真っ白だということは、つまり今の私は六歳だということか?
そんな。
そんながある筈がない!
これは夢だと叫びだしたくなるけれど、もし、もしも現実ならどうすると私の中の私が囁く。

もしもこれが現実ならば、

何が、なんて。
そんなのは愚問だ。
だが本当に【時間が巻き戻った】として、また自分が彼に関われるんだという保証がどこにある?
仮に関われたとして、また不幸にするだけかもしれないのに。

六歳になった翌月、従兄弟の六歳の誕生祭で私は彼に出会った。

特に目立った特徴もない、引っ込み思案で大人しいどこにでも居るような子供。
それでも彼が彼の両親や兄妹に対してふわふわと笑うその笑顔に、私は一目惚れしてしまった。

その笑顔をもっと見たい。
私の名前を呼んで欲しい。
ふくふくとした頬に優しく牙を立てたい。

様々な欲が浮かんでは消え、そうして頭の中を掻き回されるような感覚があったのを、私は今でも覚えている。
絶対に、絶対に私のモノにしたいと。
だから父に気になる子が居るか聞かれた時に、私は真っ先に彼の名前を出した。
絶対に婚約すると、声高々に宣言した。
父はそんな私を嘲笑した。

ならばその遠吠えを叶える程に高みを目指せと。

その言葉に、私は納得した。
同じ学友候補とはいえ、身分の差があった。
だがそれ以上に狼として、雌に相応しい雄でなければならなかった。
彼に選ばれる程の、雄にならなければならかった。
狙った雌に選ばれなかった雄に、価値など無い。

そこからは努力の日々だ。

勉強も鍛錬も。
誰一人負けてはならないと必死になった。
それが例え王太子である従兄弟相手であったとしても。

そうして私は、彼と婚約を結ぶことが出来たのだ。
それだけではなく、永遠を誓うことも出来た。
私の幸せの絶頂は、間違いなくあの結婚式の日だったように思える。

―――あの日を、もう一度。

私は日記帳を閉じ、もう一度今の自分の姿を見詰めた。
小さな掌も、今にも抜けそうな牙も、全部全部頼りない。

努力しよう。
以前の私よりも、もっともっと。
今度こそ、彼を幸せにするために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

処理中です...