10人目の彼氏

かかし

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10人目の彼氏

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どれだけ努力しても、報われる人間なんてほんの一握りだ。
それが恋愛なら、尚更。

さて。
そこを前提に俺の話。
俺は自分のことをあまり好きにはなれなくて、だからこそ、恋人に好かれる努力をした。
本当は不安だったり束縛しようとしたりしたかったけど、俺みたいなのがそんなことをしたって気持ち悪いだけ………と1人目の彼氏で学んだ。
だから次の人の時は頑張って抑えたんだけど、抑えきれてなくて………5人目辺りで漸く思考を落ち着かせることができた思ったら今度は都合の良い穴扱い。
ここで俺は気付いた。
なるほど、俺みたいな奴でも彼氏が出来るのは穴モテかと。
でも認めたくなくて、夢見ていたくて、頑張って見た目とかにも気を遣ってなんとか同棲まで進めれた10人目………。

『あっ、あっ、いいっ、あっ!すきっ………』

玄関まで響く、甘ったるい男の喘ぎ声。
うるさっ。近所迷惑だろ。
そう思いながら俺は、こんなこともあろうかと思って靴箱に隠していたクラッカーを手に取る。

パァンッ
『ぱんぱかぱーん。おめでとう。貴方で10人目です。』
『はっ!?えっ!?誰っ!?』
『幸久!?何でこの時間に!!』

そしてそのまま部屋に入り、セックス真っ最中の二人に鳴らしてそう言ってやった。
何でって、ウケる。
俺は体調不良なのに自分の家にも帰れないのかよって思ってさ。
ん?体調?
これ何年前の話だと思ってるんだよ。
今はへーき。
ありがとな。

で、話戻すな?

この10人目の彼氏な、めちゃくちゃ顔が良かったんだよ。
でもかなり口が悪くて、俺ずっと顔も可愛くないのに可愛げがないとか言われてて………まぁそれ事実なんだけど、でもだからって傷付かない訳じゃないし。
いつかこうなるだろうなと思ってて、同棲始めて浮気分かるまでの2ヶ月間、ずっと荷解きしてなかったんだよ。
スーツケース1個の荷物なのも、それをずっと出し入れして使ってたのも何も言われなかった。
てか何も思われてなかったんだろうな。

『幸久!待って!これは誤解………』
『じゃっ、お元気で。あ、これ返すわ。売るなり捨てるなり、好きにして。』

何か言いたげな10人目の彼氏に向かって、同棲した日に貰った指輪と家の合鍵を投げつけた。
プライドをぐちゃぐちゃにされて怒るかなって思ったから、俺はスーツケースを抱えてとっとと家を出た。
素っ裸だから、多分追い掛けて来るにしても時間が掛かる筈。
でも念の為にと階段使って降りたから、次の日筋肉痛ヤバかったなぁ。

幸いにも多少貯金があったからビジホを転々として新居を早く見付けよって思ったら、会社で人手不足による支店異動の任意募集があって。
しかもそれが県外異動だったから俺は嬉々として申請した。
完全な異動だから帰れないかもしれないけど大丈夫かと何度も聞かれたけど、寧ろ望むところだった。
もう恋愛はこりごりだったし、穴モテする内にたくさんセックスして孤独死しよーっと思って、今に至る。

「お分かりいただけただろうか。」
「うんうん。で?ユキが私と一緒に暮らさない理由はどこにあった?」

アルフ・ライラ・ワ・ライラのように素っ裸で寝転がりながら長々と自分語りをした俺の肩甲骨に何度もキスをしながら、物語の騎士様のように男らしい端正な顔立ちとダビデ像のように逞しい体つきをした男はそう言った。

コイツの名前はスイ。

本名なのかどうなのかは分からない。
このホテルにあるような大きくて高級なベッドの持ち主で、俺の異動先で最初に出来たセフレだ。
まぁ、最初っていうか………コイツどうにもこの辺りでは有名らしくお手付きってだけで誰も近寄ってくれないから、コイツが俺に飽きるまでは他のセフレ持てないんだけど。
折角のチャンスなのに………このままだと穴モテ寿命を迎えて終わっちゃう………トホホ。
挙げ句の果てに一緒に住もうとかしつこくて………だからこうして素直に事情を話してやったというのに、聞きもしない!

「だから、俺は誰とも住まないって言ってんじゃん!」
「長々と高説垂れてたけど、誰とも住まないなんて表現、一言も出て来てないよ。」

べろりとうなじを舐めながらそう言うスイに、屁理屈だ!と怒鳴ればお褒めの言葉をありがとうと笑われる。
褒めてない!
そう言いたいけど、スイは頭が良くて俺が何言おうが揚げ足とられるだけだから、黙っとく。

「………んっ、ぁっ、待って、」
「さっきまで受け入れてくれてたから、まだ柔らかいね………」

もう着替えて帰ろう。
そう思った瞬間、スイはそんな俺の思惑なんて最初から分かっていたみたいにアナルの縁を撫で始めた。
そのまま指を突っ込まれて、ちょっと乱暴なのに気持ち良い。

「ぃっ………たい、から………あっ、やっ、」
「痛い?ローション足すから許して。」

俺の耳の裏にキスをしながら、スイはそう言った。
アナルに挿入された指はそのまま、ローションのボトルを開ける音が聞こえる。

「ごめん、冷たいけど我慢して。」
「ひゃぁ!」

熱の籠った声が聞こえたと同時に、温められてないローションが尻たぶを伝う。
いつもちゃんと温めてくれてるから、予想外過ぎて変な声が出た。
………何か、様子がおかしい?

「………スイ?」
「何て言うか、うん。余計なことしかしないなと思って。」

不安になって名前を呼べばそう言われて、じんわりと涙が滲む。
俺、余計なことしたんだ。
何したんだろ。
俺なんかがいつまでもスイの提案を拒否ってるから気に食わない?
それとも他に何かした………?
セックス中で良かった。
多少泣いても、バレない。

「違う。違うよ、ユキ。お前のことじゃない。」

けれどスイはそれすらお見通しだと言うように、指を抜いて俺をころんと引っくり返すと宥めるようにそう言った。
そうしてギュッと抱き締めてくるもんだから、不覚にもきゅんとしてしまう。
いけない。
セフレに惚れるなんて、ナンセンスだ。

「お前の歴代のクズ共………特に10人目のクズに対してそう思ったんだ。」

スイはそう言って、俺の口を食べるみたいなキスをした。
おもいっきり抱くぞの合図。
口の中をぐちゃぐちゃにされて、気持ち良くて、ワケわかんなくなるくらいに好き。
もっとして欲しくて太い首に腕を回してねだれば、スイは嬉しそうに笑いながら俺を抱き締めてくれた。

「セックスする?」
「シて良い?」
「良いよ。でも、おもいっきり甘やかして。」

自分で言っておきながら、おえってなった。
こういうのは可愛げがある奴が言うから可愛いのであって、俺みたいなのが言っても気持ち悪いだけだ。
でも何故かスイは嬉しそうに笑うから、正解だったのかもしれない。
変な奴。
趣味悪い。

「腰痛くなるかもだけど、前から良いかい?」

スルッと、指を絡めながら手を握られる。
俗にいう、恋人繋ぎ。
恋人なんて程遠い位置なのに、笑っちゃう。

「動きにくくない?」
「でもこうしたい。」

スイはそう言いながら、器用に片手で自分のぺニスにローションをまぶしてしごいた。
………美味しそう。
思わず口内に溢れる唾液を誤魔化すように、顔を寄せてキスをねだった。
互いの唾液を飲ませ合うようにキスをしていると、それだけでイってしまいそうになる。
熱いぺニスで温まったローションをまとった指が、再び俺のアナルに触れた。
ゆるゆるとそのまま出し入れされると、もどかしくてしょうがない。

「挿れて良い?」

分かってるクセに、意地の悪い奴め。
俺はそう思いながら、何度も縦に頷く。
なんか、言葉にしたら負けな気がする。
素直じゃない、めんどくさい俺。
でもスイは目を細めて微笑みながら、そんな俺にキスをしてくれた。

「………ん、ぐっぅ………」
「………ぅぁっ、………力、抜けそうか?」

少し苦しそうなスイの声。
俺は必死に呼吸を整えて力を抜く。
スイのぺニスは硬さはそうないけど、長さと太さはある。
馴染むまでが毎回少し苦しかったりする。

「良い子だ………好きだよ、ユキ。」

だいぶ力が抜けて動きやすくなったからか、スイは俺をギュッと抱き締めると耳元でそう囁いた。
低く甘い声で囁かれる、安っぽいリップサービス。
俺は可愛くもない喘ぎ声であんあん喘ぎながら、まるで宝石みたいに大事に受け取った。
スイが俺に飽きるか恋人が出来るかしたら、きっともう、誰にも貰えなくなるんだから。

あーあ。
せめて10人目の彼氏とセックスしてたあの子みたいに、可愛い喘ぎ声だったら良かったのにな。
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