僕よりも可哀想な人はいっぱい居る

かかし

文字の大きさ
18 / 27
無敵の人

11

しおりを挟む
―――苦痛を知らない人間、なんだろうな。

偉そうにふんぞり返る、サツキになる前の男の子の戸籍上の父親。
その男に対して直感的に抱いた感想は、それだった。
挫折を知らない。
苦悩を知らない。
だからこそ、ほんの少し思い通りにならないと不貞腐れる。
そんな人間なんだろうと思った。

「………来るのは【百瀬】という名だと聞いていたが?急な変更など………社会人としてどうなんだ。」
「申し訳ございません。百瀬がどうしても、瀧本専務にからと。思ったよりも、準備に時間が掛かっているようでして………。」

うっすい嫌味は苦笑とあらかじめ用意していた台詞で流す。
直前になったとは言え、百瀬さんはちゃんと俺が代わりに行くことを伝えていたしな。

「貴様らのような薄汚いハイエナの寄越す物など不要だ。それで?用向きは………」
「百瀬から聞いている筈では?瀧本専務の息子さんについてお話があるんですよ。」

息子の存在を口に出した瞬間、睨み付けてくる瀧本サン。
息子を護ろうとする良い父親ね。
息子サツキを捨てた、最低な父親だけど。

「何が目的だ。金か?」
「心外ですね。これは警告ですよ、。………今、息子さん達が百瀬の管轄の中でもとても治安が宜しくない場所をうろちょろしてましてね。何かあっては百瀬の責任問題にも発展し兼ねない。と百瀬からのお願い、ですよ。」

必死に付け焼刃で暗記したカンペを諳んじる。
気分は役者だ。
それも悪役。
あ、でも瀧本サンは別にヒーローじゃないよな。
俺より小物な悪役って感じ。

「息子さんを、危険な目には遭わせたくないでしょう?まぁ、俺達にとって見ず知らずのガキがどうなろうが知ったことじゃない訳ですし。信じる信じないはお好きなように。」
「よくもぬけぬけと………に何かしたら許さんぞ!」

息子、ねぇ………。
どうしてそこにあの子を入れてあげなかったんだ。
あんなにも小さくて健気で、どこにでも居るような普通の男の子を、

「それ、貴方のに言えます?」
「なっ………にを………」

まさか三人目の息子のことを言われると思ってなかったのか、切れ長の相貌を驚愕の色に染められる。
馬鹿だねぇ。
ほーんと馬鹿。
そもそもな話、ちょろついてる馬鹿息子二人と接触することなくお前に行きついたんだから、そもそもサツキと接触してる俺じゃなくても空白の息子に行き着くだろ。
………そう考えると、絶対百瀬さんと俺が鉢合わせしたの偶然じゃないな。

、ですよ。」

にっこりと、とびきりの笑顔をプレゼント。
サッと赤くなったのは、見惚れたからかそれとも怒りからか。
今、俺の脳内がぐっちゃぐちゃになって手が震えているのは怒りからだよ。
こんな奴が、サツキの父親だという事実が我慢ならない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

インフルエンサー

うた
BL
イケメン同級生の大衡は、なぜか俺にだけ異様なほど塩対応をする。修学旅行でも大衡と同じ班になってしまって憂鬱な俺だったが、大衡の正体がSNSフォロワー5万人超えの憧れのインフルエンサーだと気づいてしまい……。 ※pixivにも投稿しています

サンタからの贈り物

未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。 ※別小説のセルフリメイクです。

【8話完結】魔王討伐より、不機嫌なキミを宥める方が難易度「SSS」なんだが。

キノア9g
BL
世界を救った英雄の帰還先は、不機嫌な伴侶の待つ「絶対零度」の我が家でした。 あらすじ 「……帰りたい。今すぐ、愛する彼のもとへ!」 魔王軍の幹部を討伐し、王都の凱旋パレードで主役を務める聖騎士カイル。 民衆が英雄に熱狂する中、当の本人は生きた心地がしていなかった。 なぜなら、遠征の延長を愛する伴侶・エルヴィンに「事後報告」で済ませてしまったから……。 意を決して帰宅したカイルを迎えたのは、神々しいほどに美しいエルヴィンの、氷のように冷たい微笑。 機嫌を取ろうと必死に奔走するカイルだったが、良かれと思った行動はすべて裏目に出てしまい、家庭内での評価は下がる一方。 「人類最強の男に、家の中まで支配させてあげるもんですか」 毒舌、几帳面、そして誰よりも不器用な愛情。 最強の聖騎士といえど、愛する人の心の機微という名の迷宮には、聖剣一本では太刀打ちできない。 これは、魔王討伐より遥かに困難な「伴侶の機嫌取り」という最高難易度クエストに挑む、一途な騎士の愛と受難の記録。 全8話。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

愛と猛毒(仮)

万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。 和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。 「……本当、バカだよな。お前も、俺も」 七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。 その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

矢印の方向

うりぼう
BL
※高校生同士 ※両片想い ※文化祭の出し物関係の話 ※ちょっとだけすれ違い

その日君は笑った

mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。 それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。 最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。 拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。 今後ともよろしくお願い致します。

処理中です...