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7歳の冬
意外な話
「ああ、ウィルにはもう一つ。」
「はい?」
モリス市長は居心地が好い家だと思いながらお茶を飲み、ウィルに対して一言そう言った。
時間的に、そろそろ帰らないといけない。
マイケルもそろそろ帰るぞと言いたげな目をしてモリス市長を睨んでいる。
ただその前に、しっかりと伝えておかないといけないことがある。
今後のことに、関わってくるだろうから。
「ジェームズ・ナチオルド子爵令息が、騎士団を辞めて出奔した。いや、出奔は違うか。家出だな。家出した。」
「ナチオルド子爵令息がぁ?」
つい最近来た時は、そんな様子は無かった。
それに彼自身、騎士団を辞めるなんて到底思えなかった。
………ウィルを王都に連れ戻せなかったからクビにされた?
けれどもしも本当にそれでクビになるならば、ナチオルド子爵令息より立場が低い騎士だろう。
それに、家出ってなんだ。
「この村に一度来たのだろう?王都に帰ってから急に騎士団に退団届を出し、かと思えば妻に財産の殆どを渡して離縁し、両親には絶縁してくれと言い残して出て行ったらしい。」
な?家出だろう?とモリス市長はそう言ったが、見たことがないアムル以外の全員がその内容に驚愕した。
選民意識が服を着て歩いているようなナチオルド子爵令息が、自ら平民になる選択をするなど………。
「本人は縁を切ってもらったと言っているのだが、実際はそういった手続きはされていなくてね。だから家出だ。」
「本人は言ってる?え?ナチオルド子爵令息とお会いしたんですか?」
「ああ、街で拾ってね。驚いたよ。何も考えず適当な乗合馬車に乗って終着駅で降りたらしい。」
クィル神官の質問にそう答えながら、モリス市長は呆れたように溜息を吐いた。
なんでも、モリス市長とナチオルド子爵令息は遠縁だそうだ。
遠縁ではあるし一応貴族と平民の関係ではあるのだが、ナチオルド子爵令息が幼い頃はモリス市長が遊び相手になることがあったらしい。
「可愛かったんだよ、私の後ろについてまわってね。」
「へー。」
「どうでもいい。」
「もちもちのほっぺを軽くひっぱると面白い程に泣く泣く。」
「まだ続くんです?」
《わりと最低なことしてて笑えんな。》
モリス市長の思い出話はスルーしつつ、各々好き勝手なことを言う。
失礼極まりないが、思い出話に夢中なモリス市長は気付かない。
まぁ、気付いていて敢えてスルーしているのかもしれないが。
「本人は平民になった、働くの一点張りで取り敢えずギルドカード作らせて冒険者をさせているが、実際のところ子爵も子爵夫人も、彼の兄達も探していてね。」
「でしょうね。伝えたんですか?」
「いや。本人が満足するまでは置いておこうとは思っている。悪いが君達も話を合わせてくれ。」
騎士団も探しているらしく、聞き取りに来るかもしれないとのこと。
最後の任務がここなので、当然といえば当然だろう。
「構いませんが、モリス市長。」
「ん?なんだい、ウィル。」
「本人が満足すれば、ちゃんと家に帰してやるんですよね?」
ジッとモリス市長の目を見ながら、ウィルはそう聞いた。
何かを警戒するような目だ。
相変わらず優しい男だなと思いながら、モリス市長はにっこりと笑う。
「勿論。満足したら、な。」
「はい?」
モリス市長は居心地が好い家だと思いながらお茶を飲み、ウィルに対して一言そう言った。
時間的に、そろそろ帰らないといけない。
マイケルもそろそろ帰るぞと言いたげな目をしてモリス市長を睨んでいる。
ただその前に、しっかりと伝えておかないといけないことがある。
今後のことに、関わってくるだろうから。
「ジェームズ・ナチオルド子爵令息が、騎士団を辞めて出奔した。いや、出奔は違うか。家出だな。家出した。」
「ナチオルド子爵令息がぁ?」
つい最近来た時は、そんな様子は無かった。
それに彼自身、騎士団を辞めるなんて到底思えなかった。
………ウィルを王都に連れ戻せなかったからクビにされた?
けれどもしも本当にそれでクビになるならば、ナチオルド子爵令息より立場が低い騎士だろう。
それに、家出ってなんだ。
「この村に一度来たのだろう?王都に帰ってから急に騎士団に退団届を出し、かと思えば妻に財産の殆どを渡して離縁し、両親には絶縁してくれと言い残して出て行ったらしい。」
な?家出だろう?とモリス市長はそう言ったが、見たことがないアムル以外の全員がその内容に驚愕した。
選民意識が服を着て歩いているようなナチオルド子爵令息が、自ら平民になる選択をするなど………。
「本人は縁を切ってもらったと言っているのだが、実際はそういった手続きはされていなくてね。だから家出だ。」
「本人は言ってる?え?ナチオルド子爵令息とお会いしたんですか?」
「ああ、街で拾ってね。驚いたよ。何も考えず適当な乗合馬車に乗って終着駅で降りたらしい。」
クィル神官の質問にそう答えながら、モリス市長は呆れたように溜息を吐いた。
なんでも、モリス市長とナチオルド子爵令息は遠縁だそうだ。
遠縁ではあるし一応貴族と平民の関係ではあるのだが、ナチオルド子爵令息が幼い頃はモリス市長が遊び相手になることがあったらしい。
「可愛かったんだよ、私の後ろについてまわってね。」
「へー。」
「どうでもいい。」
「もちもちのほっぺを軽くひっぱると面白い程に泣く泣く。」
「まだ続くんです?」
《わりと最低なことしてて笑えんな。》
モリス市長の思い出話はスルーしつつ、各々好き勝手なことを言う。
失礼極まりないが、思い出話に夢中なモリス市長は気付かない。
まぁ、気付いていて敢えてスルーしているのかもしれないが。
「本人は平民になった、働くの一点張りで取り敢えずギルドカード作らせて冒険者をさせているが、実際のところ子爵も子爵夫人も、彼の兄達も探していてね。」
「でしょうね。伝えたんですか?」
「いや。本人が満足するまでは置いておこうとは思っている。悪いが君達も話を合わせてくれ。」
騎士団も探しているらしく、聞き取りに来るかもしれないとのこと。
最後の任務がここなので、当然といえば当然だろう。
「構いませんが、モリス市長。」
「ん?なんだい、ウィル。」
「本人が満足すれば、ちゃんと家に帰してやるんですよね?」
ジッとモリス市長の目を見ながら、ウィルはそう聞いた。
何かを警戒するような目だ。
相変わらず優しい男だなと思いながら、モリス市長はにっこりと笑う。
「勿論。満足したら、な。」
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