うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし

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10歳の春

大人と子供

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「あー!ほら、泣くな坊主!スライムの割に賢そうなコイツだ。万が一が無いようにはしてくれるだろ。」

ぐしゅぐしゅと涙を流すミルコを慰める為、男は再びシグルドの上に登った。
落とされるだろうかと一瞬思ったが、意外にもシグルドは大人しくしていた。
どういう感情や思考なのか、そもそも感情や思考はあるのか。
男は少しばかりの不気味さを感じながらも、未だに蹲って涙を流す幼い子供ミルコをひょいと抱き上げた。
想像以上の軽さに、思わずゾッとした。

「よしよし。お前さんは相棒が大好きなんだな。」

しかし男はそんな感情をおくびにも出さず、ぽんぽんと絶妙な力加減でミルコの背中を叩く。
男はどうやら子供に慣れているようだが、肝心な子供ミルコは大人という存在に慣れていなかった。
いきなりの接触、それも温かく優しい接触にびっくりして涙が引っ込んでしまう。
幸いにも、男はそんなミルコに気付いていないのだが。

「でもまぁ、丸腰なのは危ないのは確かだ。」
「………ナイフ、あるよ。」
「お?そうか?見せてみろ。」

男の言葉に、ミルコは鞄を探ってすんなりと渡した。
あまりの素直さに、男はナイフを受け取りながら深い溜め息を吐いた。

「あのな、坊主。武器をよく知らない奴に渡すんじゃない。それ使って襲われたらどうする。」

昨今、どんな人間が居るのか分かったものではない。
ましてやモンスターが出ると分かっていてこの森に居るのならば、それは冒険者かモンスターハンターか………或いは、盗賊などの後ろ暗いろくでもない人間か。
善人の方が少ないと思われるような場所で、武器を渡して丸腰になるなんてそれこそ自殺行為だと、男は叱り飛ばしたくなった。

「でも、シグルドがおじさんに何もしないから。」

しかしミルコは、そんな男にきょとんと小首を傾げてみせた。
それは信頼というにはあまりに歪で悲しい依存。
その一言だけで、男はミルコの世界の狭さと悲しさを知った。

「………そっか。まぁ、確かに。俺はお前達に何かするつもりはねぇよ。命の恩人だしな。」

男はそう言って、ナイフを持っていない方の手でミルコの髪を撫で回す。
キシキシと軋んだ赤毛。
小さな身体でどんな人生を歩まされていたのか、悲惨であったろうことは理解できても、想像は出来ない。

「おいで。」
「わっ!」

男は鞄の中にナイフを戻すと、ミルコの小さくて軽い身体を抱き上げて膝の上に乗せた。
冗談じゃなく、半人半鳥型モンスターハーピーの羽根よりも軽い。
こんな身体では、冬を越すのも難しいだろう。

「恩人ついでにさ、俺を村まで送ってくれねぇか?」
「むら?」
「おう。特に目的がねぇなら、礼もしたいしな。」

言葉巧みに、男はミルコを誘った。
まるで誘拐犯になったような気分だと思わないことはないが、仕方ない。
放っておけないと、思ってしまうのだ。
まぁ、とどのつまり、男も男でお人好しだということだ。

「俺の名前はウィル。坊主は?」
「ぼ、僕は………」
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