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10歳の春
ミルコ
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「ぼ、僕は………」
ミルコは名乗ろうとして、ふと、どう名乗るべきかを考えてなかったことに思い至り固まった。
【ミルコ】という名前は、名乗るべきではないだろう。
それは親に捨てられた子供の名前だ。
親を捨てた子供が名乗るべき名前ではない。
それは分かってはいるが、ミルコは考えてなかったのだ。
言い訳をするならば、こんなに早く自分以外の人間に会うとは思っていなかったのもある。
「なぁ、坊主。俺の村はここから四日位は掛かる。コイツ………シグルドの歩みだともうちっと掛かるかもな。つー訳で時間はそこそこあるんだ。ゆっくり話そうや。」
男………ウィルは俯き固まってしまったミルコの指通りの悪い赤毛を解すように撫でながらそう言った。
その言葉に込められた優しさと意味の全てにミルコは気付けたかというと、それは違う。
ただ、重荷だったのだ。
ミルコが思っている以上に、ミルコという存在は。
「ぼ、ぼく、は………」
結局、ボロボロと涙を流ししゃくりあげながらミルコは身の上を話した。
同情して欲しかった訳じゃない。
ミルコは自分が可哀想だとは気付いてなかったのだから、己の境遇が同情されるようなモノだと思ってないのだから。
ただ、ミルコという重荷を下ろしてしまいたかったのだ。
「………頑張ったな。」
ウィルはミルコの背中を撫でながら、ただ一言そう言った。
それしか言えなかったのだ。
十歳の子供が背負うにはあまりにも悲しく重いモノを、この子は僅か三つで背負わされていた。
貴族は召喚至上主義であることを、ウィルは痛い程知っていた。
召喚の質が悪いからと捨てられた子供なんて、ミルコ以外にも居たことだろう。
しかしそれでも、目の当たりにはしてないのだからと目を逸らし続けていた結果がこの子供なのだろう。
この子供は、大人の罪が形をもったモノだ。
「十歳まで、よく頑張った。」
七年間、ミルコがどういう気持ちで生きてきたのか、想像の域を出ない。
いくらグレイスライムが居たとはいえ、スライムは喋れない。
結構行動には表しているが、それでも人間とスライムで種族も違う。
噛み合わないことにストレスを感じたことも、互いにあっただろう。
「そして誕生日おめでとう。」
今日会ったばかりの他人が言ったところで、ミルコの気持ちが晴れるとは思わない。
それでもウィルは言いたかった。
ずっとずっと、四歳から祝われなかった子供に言ってやりたかったのだ。
自己満足でしかない。
プレゼントもない。
でも、ウィルは心を込めてそう言った。
「うぅっ………ぅぅううっ………!」
ウィルの胸に顔を埋め、ミルコは泣いた。
モンスターを警戒してくぐもった声しか出せなかったけれど、初めて声を上げて泣いた。
それはくしゃくしゃになったミルコの心が、ほんの少しだけ戻った瞬間でもあった。
ミルコは名乗ろうとして、ふと、どう名乗るべきかを考えてなかったことに思い至り固まった。
【ミルコ】という名前は、名乗るべきではないだろう。
それは親に捨てられた子供の名前だ。
親を捨てた子供が名乗るべき名前ではない。
それは分かってはいるが、ミルコは考えてなかったのだ。
言い訳をするならば、こんなに早く自分以外の人間に会うとは思っていなかったのもある。
「なぁ、坊主。俺の村はここから四日位は掛かる。コイツ………シグルドの歩みだともうちっと掛かるかもな。つー訳で時間はそこそこあるんだ。ゆっくり話そうや。」
男………ウィルは俯き固まってしまったミルコの指通りの悪い赤毛を解すように撫でながらそう言った。
その言葉に込められた優しさと意味の全てにミルコは気付けたかというと、それは違う。
ただ、重荷だったのだ。
ミルコが思っている以上に、ミルコという存在は。
「ぼ、ぼく、は………」
結局、ボロボロと涙を流ししゃくりあげながらミルコは身の上を話した。
同情して欲しかった訳じゃない。
ミルコは自分が可哀想だとは気付いてなかったのだから、己の境遇が同情されるようなモノだと思ってないのだから。
ただ、ミルコという重荷を下ろしてしまいたかったのだ。
「………頑張ったな。」
ウィルはミルコの背中を撫でながら、ただ一言そう言った。
それしか言えなかったのだ。
十歳の子供が背負うにはあまりにも悲しく重いモノを、この子は僅か三つで背負わされていた。
貴族は召喚至上主義であることを、ウィルは痛い程知っていた。
召喚の質が悪いからと捨てられた子供なんて、ミルコ以外にも居たことだろう。
しかしそれでも、目の当たりにはしてないのだからと目を逸らし続けていた結果がこの子供なのだろう。
この子供は、大人の罪が形をもったモノだ。
「十歳まで、よく頑張った。」
七年間、ミルコがどういう気持ちで生きてきたのか、想像の域を出ない。
いくらグレイスライムが居たとはいえ、スライムは喋れない。
結構行動には表しているが、それでも人間とスライムで種族も違う。
噛み合わないことにストレスを感じたことも、互いにあっただろう。
「そして誕生日おめでとう。」
今日会ったばかりの他人が言ったところで、ミルコの気持ちが晴れるとは思わない。
それでもウィルは言いたかった。
ずっとずっと、四歳から祝われなかった子供に言ってやりたかったのだ。
自己満足でしかない。
プレゼントもない。
でも、ウィルは心を込めてそう言った。
「うぅっ………ぅぅううっ………!」
ウィルの胸に顔を埋め、ミルコは泣いた。
モンスターを警戒してくぐもった声しか出せなかったけれど、初めて声を上げて泣いた。
それはくしゃくしゃになったミルコの心が、ほんの少しだけ戻った瞬間でもあった。
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