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本編
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「………え?いや、どこに行くんだ?」
式は無事に終わり、私はレンタルしていたウエディングドレスを返却すると家に帰ろうと彼に頭を下げて挨拶をした。
そんな私の腕を掴み、何故か焦った表情で言われた言葉がこれだ。
どこに、と言われても………
「両親が準備してくれている家に帰ります。今日からはそこに住むようにと、實峰のご両親からも許可は得ていると聞いてます。」
「いや、君だって實峰だろう?というか、そんな話両親から聞いた覚えもない!」
急に大きな声で言われ、思わず身体が竦んだ。
何か間違えたのだろうか?
確かに籍を入れてしまったから私も實峰ではあるが、どうせ離婚することは確定な訳だから私から名乗るのは烏滸がましいにも程があるだろう。
聞いてないのは、言い忘れていたか言わなくても問題ないと思われたかのどっちかだろうとは思った。
恐らく、後者だろうけど。
「あっ、怒鳴って悪かった………でも、俺達は夫婦だろう?」
「そうです、けど………」
それはそう。
でも夫婦と言っても別に無理して一緒に居なくても良い筈だし、何より流石に心苦しい。
ただでさえ今日一日我慢させてしまったのに、これ以上付き合わせてしまうのはあの美しい人にも申し訳ない。
「それに、さっき俺の両親も許可していると言ったが、両親は既に二人にと新居を用意してくれてるんだぞ?」
返事に困窮していると、またよく分からないことを言われた。
新居………?
實峰のご両親が?
何故と首を傾げるが、嗚呼、あの美しいフィメールαの為なのだなと納得。
きっと離婚は都合上まだ先にはなるけれど、彼と彼女に夫婦感覚を早く味わって欲しいのだろう。
それならば尚更、私は両親が宛がった部屋に帰らないと。
「申し訳ございません。」
しかしあの人のことを知っているということを私が言っても良いものなのか分からなかったので、取り敢えず腕を掴まれたまま頭を下げることで誤魔化す。
彼は暫く無言だったけど、やがて大きな溜息を吐いて私から腕を離してくれた。
じんわりと離れた熱が、少しだけ寂しいと思うことも烏滸がましいことだ。
「顔を上げて。それと、そういうことなら俺もそっちに行くよ。」
「え?いや、α禁制なので………」
「は?なっ、彼らは俺と君が結婚するというのにΩ専用居住を与えたのか!?」
信じられないというような声色で、彼はそう言った。
さっきから、どうしてそんな風な言い方をするんだろうか?
まるで私と離れるのが、嫌だと思われてるのではと思ってしまう。
………多分、仮にも新婚の二人が別居なんて世間体が悪いからと思ったからだろうけど。
「えっと、大丈夫ですよ?誰だって、私達が同居するなんて思ってませんから………」
「同居って………そんな言い方ないだろう?」
ギュッと眉根を寄せて、彼はそう言った。
眉間に皺を寄せても美しいなんて、流石だなと思う。
それにしても、同居以外にどう言ったら良いのだろうか?
思わず首を傾げてしまう私に彼は苛ついたように舌打ちをすると、今度は私の手を取って歩き出した。
「えっ!?實峰様!?」
「だから、君だって實峰だろう!?」
足を止めず、彼は前を見たままそう怒鳴りつける。
疲れているのに私が愚図だから、苛立っていらっしゃるのだろう。
怒らせてばかりで本当に申し訳ない。
どうしたら良いんだろうか?
そもそも、彼は私をどこに連れて行くつもりなのだろうか。
何もかもが分からなくて、胃がしくしくと痛かった。
式は無事に終わり、私はレンタルしていたウエディングドレスを返却すると家に帰ろうと彼に頭を下げて挨拶をした。
そんな私の腕を掴み、何故か焦った表情で言われた言葉がこれだ。
どこに、と言われても………
「両親が準備してくれている家に帰ります。今日からはそこに住むようにと、實峰のご両親からも許可は得ていると聞いてます。」
「いや、君だって實峰だろう?というか、そんな話両親から聞いた覚えもない!」
急に大きな声で言われ、思わず身体が竦んだ。
何か間違えたのだろうか?
確かに籍を入れてしまったから私も實峰ではあるが、どうせ離婚することは確定な訳だから私から名乗るのは烏滸がましいにも程があるだろう。
聞いてないのは、言い忘れていたか言わなくても問題ないと思われたかのどっちかだろうとは思った。
恐らく、後者だろうけど。
「あっ、怒鳴って悪かった………でも、俺達は夫婦だろう?」
「そうです、けど………」
それはそう。
でも夫婦と言っても別に無理して一緒に居なくても良い筈だし、何より流石に心苦しい。
ただでさえ今日一日我慢させてしまったのに、これ以上付き合わせてしまうのはあの美しい人にも申し訳ない。
「それに、さっき俺の両親も許可していると言ったが、両親は既に二人にと新居を用意してくれてるんだぞ?」
返事に困窮していると、またよく分からないことを言われた。
新居………?
實峰のご両親が?
何故と首を傾げるが、嗚呼、あの美しいフィメールαの為なのだなと納得。
きっと離婚は都合上まだ先にはなるけれど、彼と彼女に夫婦感覚を早く味わって欲しいのだろう。
それならば尚更、私は両親が宛がった部屋に帰らないと。
「申し訳ございません。」
しかしあの人のことを知っているということを私が言っても良いものなのか分からなかったので、取り敢えず腕を掴まれたまま頭を下げることで誤魔化す。
彼は暫く無言だったけど、やがて大きな溜息を吐いて私から腕を離してくれた。
じんわりと離れた熱が、少しだけ寂しいと思うことも烏滸がましいことだ。
「顔を上げて。それと、そういうことなら俺もそっちに行くよ。」
「え?いや、α禁制なので………」
「は?なっ、彼らは俺と君が結婚するというのにΩ専用居住を与えたのか!?」
信じられないというような声色で、彼はそう言った。
さっきから、どうしてそんな風な言い方をするんだろうか?
まるで私と離れるのが、嫌だと思われてるのではと思ってしまう。
………多分、仮にも新婚の二人が別居なんて世間体が悪いからと思ったからだろうけど。
「えっと、大丈夫ですよ?誰だって、私達が同居するなんて思ってませんから………」
「同居って………そんな言い方ないだろう?」
ギュッと眉根を寄せて、彼はそう言った。
眉間に皺を寄せても美しいなんて、流石だなと思う。
それにしても、同居以外にどう言ったら良いのだろうか?
思わず首を傾げてしまう私に彼は苛ついたように舌打ちをすると、今度は私の手を取って歩き出した。
「えっ!?實峰様!?」
「だから、君だって實峰だろう!?」
足を止めず、彼は前を見たままそう怒鳴りつける。
疲れているのに私が愚図だから、苛立っていらっしゃるのだろう。
怒らせてばかりで本当に申し訳ない。
どうしたら良いんだろうか?
そもそも、彼は私をどこに連れて行くつもりなのだろうか。
何もかもが分からなくて、胃がしくしくと痛かった。
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