13 / 20
13
しおりを挟む
あと一週間は様子見で、でも特に激しい痛み等がなければ通院の必要無し。
激しい運動や無茶だけはしないようにと、東さんは何故か渡邊さんに釘を刺すようにそう言った。
でも適度な運動は大切だから、散歩程度は構わないよと。
それならばと俺達はお言葉に甘えて言ったん家に帰ったあと、近所のスーパーまで歩いて買物へ向かった。
「デートだ!」
渡邊さんはキャッキャっと喜んだけれど、これもデートと言えるのだろうか。
でも手を繋いで一緒に歩いて買い物して。
向かう先がショッピングモールかスーパーかの違いかと考えれば、これも立派なデートなのかもしれない。
「今日何がいいです?」
料理は得意じゃないけど、嫌いじゃない。
美味しくもなく不味くもない料理を、渡邊さんは嬉しい嬉しいと喜んでくれるから。
作れば作るほど、俺は幸せになる。
「ハンバーグ!目玉焼き乗せてね!ハートの!」
「無理。」
目玉焼き乗せのハンバーグ位ならいくらでも作ってあげるけど、流石にハートの形の目玉焼きは無理だ。
そういうのを簡単に作れるフライパンがあるらしいけど、綺麗な形のまま盛り付けできる自信が無い。
「ねぇねぇ、ちぃちゃん。」
「はい?」
「ずっと俺の傍に居てね。置いて行かないでね。」
置いて行かないで。
渡邊さんはいつもその言葉を口にする。
なんで誤解を招くようなことをと思っていたけれど、もしかしたら渡邊さんは本当にそう思っていたのかもしれない。
渡邊さんの中でずっと、俺は渡邊さんの家に居るべき存在で、だから渡邊さんを守るためとはいえ頑なに実家に帰ったり学校へ行ったりする俺は、渡邊さんを置いて行っているように感じていたのかもしれない。
「置いて行きませんよ、もう。」
大丈夫だという気持ちを込めて、握る手に力を込める。
男同士であるとか、歳の差だとか。
世間はきっと俺達を歓迎も祝福もしてくれないだろう。
それでも良いんだ。
オーナーや東さんや、ピーチって人。
例え少ない人数でも、祝福してくれる人が居るのだから。
「ちぃちゃん、愛してるよ。」
ふわふわニコニコ、渡邊さんが笑う。
俺はこの笑顔が大好きだ。
ちょっと傷んでいる金髪も、ピアス開けまくってる耳も、チラチラとタトゥーが見えてる逞しい腕も、俺の事ちぃちゃんって呼ぶ低い声も、全部好き。
「俺も、あ、あい、愛してます、よ。愛永さん。」
しっかりと渡邊さんの………愛永さんの顔を見て告げる。
それは依存だと、きっと世間は言うだろう。
そんなものは恋でも愛でもないのだと。
けれども俺はこれ以上の恋も愛も知らないし、きっと愛永さんだってそうだ。
だから俺らの世界の中で価値観の一致したこの感情は、確かに恋であり愛なんだ。
「ちぃちゃん。」
「はい」
「今晩一緒にお風呂入ろう。」
ガッシリと俺の両手を握りしめながら、めちゃくちゃ真剣な顔でそう言うものだから思わず笑ってしまう。
こういう時はプロポーズじゃないの?と思うし、でもそんな所が愛永さんらしいと思ってしまう。
天然さんな所もある愛永さんだから、もしかしたらこれがプロポーズの言葉なのかもしれない。
「人参のグラッセ、ちゃん、と、と全部食べたらね。」
だから俺は、いつもの言葉を返す事にした。
ハンバーグの日に必ず現れる、付け合せのグラッセ。
うぇぇぇと嘆きながらしょぼくれる愛永さんのお皿に、いつものように乗せるのだ。
いつもと違う、一個だけの人参のグラッセを。
激しい運動や無茶だけはしないようにと、東さんは何故か渡邊さんに釘を刺すようにそう言った。
でも適度な運動は大切だから、散歩程度は構わないよと。
それならばと俺達はお言葉に甘えて言ったん家に帰ったあと、近所のスーパーまで歩いて買物へ向かった。
「デートだ!」
渡邊さんはキャッキャっと喜んだけれど、これもデートと言えるのだろうか。
でも手を繋いで一緒に歩いて買い物して。
向かう先がショッピングモールかスーパーかの違いかと考えれば、これも立派なデートなのかもしれない。
「今日何がいいです?」
料理は得意じゃないけど、嫌いじゃない。
美味しくもなく不味くもない料理を、渡邊さんは嬉しい嬉しいと喜んでくれるから。
作れば作るほど、俺は幸せになる。
「ハンバーグ!目玉焼き乗せてね!ハートの!」
「無理。」
目玉焼き乗せのハンバーグ位ならいくらでも作ってあげるけど、流石にハートの形の目玉焼きは無理だ。
そういうのを簡単に作れるフライパンがあるらしいけど、綺麗な形のまま盛り付けできる自信が無い。
「ねぇねぇ、ちぃちゃん。」
「はい?」
「ずっと俺の傍に居てね。置いて行かないでね。」
置いて行かないで。
渡邊さんはいつもその言葉を口にする。
なんで誤解を招くようなことをと思っていたけれど、もしかしたら渡邊さんは本当にそう思っていたのかもしれない。
渡邊さんの中でずっと、俺は渡邊さんの家に居るべき存在で、だから渡邊さんを守るためとはいえ頑なに実家に帰ったり学校へ行ったりする俺は、渡邊さんを置いて行っているように感じていたのかもしれない。
「置いて行きませんよ、もう。」
大丈夫だという気持ちを込めて、握る手に力を込める。
男同士であるとか、歳の差だとか。
世間はきっと俺達を歓迎も祝福もしてくれないだろう。
それでも良いんだ。
オーナーや東さんや、ピーチって人。
例え少ない人数でも、祝福してくれる人が居るのだから。
「ちぃちゃん、愛してるよ。」
ふわふわニコニコ、渡邊さんが笑う。
俺はこの笑顔が大好きだ。
ちょっと傷んでいる金髪も、ピアス開けまくってる耳も、チラチラとタトゥーが見えてる逞しい腕も、俺の事ちぃちゃんって呼ぶ低い声も、全部好き。
「俺も、あ、あい、愛してます、よ。愛永さん。」
しっかりと渡邊さんの………愛永さんの顔を見て告げる。
それは依存だと、きっと世間は言うだろう。
そんなものは恋でも愛でもないのだと。
けれども俺はこれ以上の恋も愛も知らないし、きっと愛永さんだってそうだ。
だから俺らの世界の中で価値観の一致したこの感情は、確かに恋であり愛なんだ。
「ちぃちゃん。」
「はい」
「今晩一緒にお風呂入ろう。」
ガッシリと俺の両手を握りしめながら、めちゃくちゃ真剣な顔でそう言うものだから思わず笑ってしまう。
こういう時はプロポーズじゃないの?と思うし、でもそんな所が愛永さんらしいと思ってしまう。
天然さんな所もある愛永さんだから、もしかしたらこれがプロポーズの言葉なのかもしれない。
「人参のグラッセ、ちゃん、と、と全部食べたらね。」
だから俺は、いつもの言葉を返す事にした。
ハンバーグの日に必ず現れる、付け合せのグラッセ。
うぇぇぇと嘆きながらしょぼくれる愛永さんのお皿に、いつものように乗せるのだ。
いつもと違う、一個だけの人参のグラッセを。
58
あなたにおすすめの小説
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
αとβじゃ番えない
庄野 一吹
BL
社交界を牽引する3つの家。2つの家の跡取り達は美しいαだが、残る1つの家の長男は悲しいほどに平凡だった。第二の性で分類されるこの世界で、平凡とはβであることを示す。
愛を囁く二人のαと、やめてほしい平凡の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる