人参のグラッセを一個

かかし

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―――結局俺は、足首の骨にヒビが入っていただけだった。
軽度なもので、日常生活にはそこまで影響は出ない。
しかしヒビは一番何をしようがないし、完治への近道は安静にすることだからと、俺は渡邊さんの家に【保護】される事となった。
堂々と渡邊さんと共に居れるその権利は、つまり俺への虐待が認められた証拠だった。
更に言うなら卒業目前ではあるが、学校へも通わなくて良くなった。
それでも卒業出来るらしい。
イジメも認められたのだろう。
ピーチと呼ばれていた人が何者かは分からないけれど、きっとあの人とオーナーと医者がどうにかしてくれたのだろう。
結局俺は俺の事なのに、流されたままだ。

「それで良いと思うよ。できない事は、できる人に任せるんだ。」

しょぼくれながら診察される俺に、医者………東(あずま)さんはそう言って俺の頭を撫でてくれた。
できない事は、できる人に。
適材適所というやつだろうか?
でもそれは逃げではないだろうか?
そんな風に思っていると、べちっという音と共に頭に乗っかっていた温もりが消えた。

「ちぃちゃんに気安く触ってんじゃねぇよ、カス。」
「お前大概にしねぇと追い出すぞ。」

どうやら渡邊さんが東さんの手を払ったらしい。
渡邊さんはオーナーと俺以外だと元ヤンらしい口調になるのだが、東さんには特に酷い気がする。
幼馴染だからなのかなとも思うけど、ちょっとモヤモヤする。

「所で、足の痛みはどうだい?」
「普通にある、歩く分には………踏ん張ったりは、痛いですけど。」

あれからもう二ヶ月は経った。
両親や担任がどうなったかは知らない。
学校へも行ってないから、イケメンくんがそもそもどういうつもりで俺に近付いたのかも分からない。
でももうそれはどうでも良かった。
だって俺は、正真正銘自由になれたのだから。

「念の為レントゲン撮っておこうか。治りかけが一番大事だからね。」

東さんは叩かれた手をプラプラさせながら、そう言ってニッコリと笑った。
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