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Eの悔恨
⑤
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『一体何の用だ!?何で、何で今更!』
彼が来月には辞めてこの街から出て行くと聞いた時、私はかなり焦った。
何処に引越しをするのかなんて、聞けるような間柄ではない。
三年間、私と彼の間に築けた関係なんて所詮は客と店員だ。
更に私はタイミング悪く、私は明日から兄の代理として三ヶ月程留守をしなければならない。
だから急で悪いと思いつつも時間を貰い、神殿で会ったあの時の騎士だと、まずは前提を告げた。
けれどもそれが拙かった。
確かに彼の言う通り。
今更。今更だった。
初めに結論から言っておけば、まだ少し変わったのかもしれない。
謝罪して、それから理由を告れば。
そうしたら少しは話を聞いてくれたんじゃないだろうか。
『信じられないからって、殺すのかよ!お前らにとって、俺の存在は羽虫以下か!?』
私が違うのだと言っても、まるで聞く耳を持ってくれない。
伸ばした手は更なる誤解を招いてしまい彼は私から逃げるように踵を返したが、前日の雨で泥濘んだ地面に足を取られ転んだ。
硬い音と共に、彼の頭部からたくさんの血液が溢れ始める。
他人の血なんて見慣れている筈なのに、彼のモノなのだと思った瞬間にどうしたら良いのかが分からなくなる。
「シューヤ!」
無様に狼狽える私の前に、尾行していたのか何なのかあの眼帯の男が彼に駆け寄った。
まるで新兵のように震える私を無視して男は彼の状況を手早く確認すると、呆然としたままの私を睨み付けて叫んだ。
「なにボーッとしてやがる!さっさと医者呼んで来い!頭打ってる人間を下手に動かせねぇのは、アンタも分かるだろ!」
男の言葉に、ハッと我に返り医者を呼びに走った。
その間に男は可能な限りの応急処置をしたらしく、医者と共に彼を連れて病院に戻った際、あと少し遅ければ死んでいたかもしれないと言われた。
私の所為で、彼が死ぬ。
私はその可能性の大きさに震えが止まらなかった。
加害者のクセに役に立たない上に被害者ぶっている私を放って、男は彼の入院治療の手続きをしている。
彼が処置室に運ばれる間、私には目障りだから商会に行って事情を話して来いと男は言った。
言い草には少し苛ついたものの、それでも私にはそんな権利が無い。
私は商会に走り、正直に事の顛末を話した。
私の所為だと、正直にそう話すことしか、私は出来なかった。
その後女将と共に病院に戻った頃には、彼は手術室に運ばれていた。
ぶつかり方が悪かったのか、それとも思ったよりも石が尖っていたのか。
ぱっくりと傷が開いていたために縫合が必要らしい。
まだ彼の意識が回復していない為、そのままの状態で麻酔をかけて執り行っているとのこと。
女将に説明している男の言葉を聞きながら、私は自分の愚かさに身体を震わせた。
「取り合えず俺がついておくんで。状況は都度報告します。」
男はショックを受けて涙を流す女将の背中を慰めるように撫でてやりながらそう言った。
私は当事者だが、蚊帳の外だった。
彼が来月には辞めてこの街から出て行くと聞いた時、私はかなり焦った。
何処に引越しをするのかなんて、聞けるような間柄ではない。
三年間、私と彼の間に築けた関係なんて所詮は客と店員だ。
更に私はタイミング悪く、私は明日から兄の代理として三ヶ月程留守をしなければならない。
だから急で悪いと思いつつも時間を貰い、神殿で会ったあの時の騎士だと、まずは前提を告げた。
けれどもそれが拙かった。
確かに彼の言う通り。
今更。今更だった。
初めに結論から言っておけば、まだ少し変わったのかもしれない。
謝罪して、それから理由を告れば。
そうしたら少しは話を聞いてくれたんじゃないだろうか。
『信じられないからって、殺すのかよ!お前らにとって、俺の存在は羽虫以下か!?』
私が違うのだと言っても、まるで聞く耳を持ってくれない。
伸ばした手は更なる誤解を招いてしまい彼は私から逃げるように踵を返したが、前日の雨で泥濘んだ地面に足を取られ転んだ。
硬い音と共に、彼の頭部からたくさんの血液が溢れ始める。
他人の血なんて見慣れている筈なのに、彼のモノなのだと思った瞬間にどうしたら良いのかが分からなくなる。
「シューヤ!」
無様に狼狽える私の前に、尾行していたのか何なのかあの眼帯の男が彼に駆け寄った。
まるで新兵のように震える私を無視して男は彼の状況を手早く確認すると、呆然としたままの私を睨み付けて叫んだ。
「なにボーッとしてやがる!さっさと医者呼んで来い!頭打ってる人間を下手に動かせねぇのは、アンタも分かるだろ!」
男の言葉に、ハッと我に返り医者を呼びに走った。
その間に男は可能な限りの応急処置をしたらしく、医者と共に彼を連れて病院に戻った際、あと少し遅ければ死んでいたかもしれないと言われた。
私の所為で、彼が死ぬ。
私はその可能性の大きさに震えが止まらなかった。
加害者のクセに役に立たない上に被害者ぶっている私を放って、男は彼の入院治療の手続きをしている。
彼が処置室に運ばれる間、私には目障りだから商会に行って事情を話して来いと男は言った。
言い草には少し苛ついたものの、それでも私にはそんな権利が無い。
私は商会に走り、正直に事の顛末を話した。
私の所為だと、正直にそう話すことしか、私は出来なかった。
その後女将と共に病院に戻った頃には、彼は手術室に運ばれていた。
ぶつかり方が悪かったのか、それとも思ったよりも石が尖っていたのか。
ぱっくりと傷が開いていたために縫合が必要らしい。
まだ彼の意識が回復していない為、そのままの状態で麻酔をかけて執り行っているとのこと。
女将に説明している男の言葉を聞きながら、私は自分の愚かさに身体を震わせた。
「取り合えず俺がついておくんで。状況は都度報告します。」
男はショックを受けて涙を流す女将の背中を慰めるように撫でてやりながらそう言った。
私は当事者だが、蚊帳の外だった。
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