ようこそ、ここは君が主人公の世界です

かかし

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Eの悔恨

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私はそれから、一般客を装い商会に通った。
彼は私を覚えてなかったというより、私のことを分からなかった。
それも当然だ。
あの時の私はフルプレートだったから、そういう意味では面と向かって会った訳ではない。
プレート越しだったから、声もくぐもったように聞こえた筈。

「あ、いらっしゃいませエドワード様。」

それでも私は、あの日のことをちゃんと謝罪しようと思っていた。
けれども彼から名を呼ばれたら。
愛想とはいえ笑顔を向けられたら。
私はその心地好さを手放すことが出来なかった。

今日言おう。
今日言えなかったから明日言おう。

それを何度も何度も繰り返して、早三年。
私は結局真実を話すことも謝罪をすることも出来ないままでいた。
積りに積もった罪悪感は、やがて麻痺していく。
私はこの三年の間、当たり前のようにその愛想を受け入れ続けた。

彼は私に客以上の感情を抱いてないのは分かっていた。
それでも名前を呼んでもらう為に、特に必要を急ぐ訳ではない物をせっせと買い込んだ。
そうはいえども、彼は事務方で本当は接客対応をする立場ではない。
だが私は女将に無理を言って、彼には内緒で私の担当にしてもらっていた。
持つべきものは権力だなと思った。
たまにどうしても彼の仕事の都合で彼が対応出来ない時もあるが、その時は出直すことにしていた。

彼が私に笑ってくれる。
彼が私の名を呼んでくれる。
今日言おう、明日言おう。

甘えてないで、浸ってないで、夢を見てないで。
早く謝罪しておけば良かったんだ。

これが私の、二度目の後悔。
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