ようこそ、ここは君が主人公の世界です

かかし

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君が主人公の世界です

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「で?他に聞きたいことは?」

暫くの間、先輩座椅子で遊んで気を落ち着かせる。
ちょっとだけ冷静になってきたかなと思ったら、先輩が俺の頭に鼻をくっ付けながらそう言った。
他に聞きたいこと………。
正直、聞きたいことだらけだ。

「俺、ここに来てどの位経ったんです?」
「三年だ。」

三年か、思った以上に時間が経ってるな。
俺にとってはほんの一日、否、一日も経ってないけど。

「この家は、先輩チョイス?」
「あー。間取りとかは俺が拘ったが、雑貨とか食器とかはお前チョイス。」

なるほど、どうりで。
めちゃくちゃ可愛いセンスあるじゃんって思ったら俺だった。
流石は俺。
多分、食器棚の中にマグカップが他の食器に比べて多かったのも俺のせいだな。

「お前の趣味じゃなかったか?」
「ううん、好き。パタパタ鳴るスリッパが特に好き。」

足にひっかけたスリッパをプラプラとさせながらそう言えば、先輩がたまらずといった感じで吹き出した。
なんだよ、今笑うところあったか?
確かに子供っぽいかもしれないけど、別に変じゃないだろう。

「いや、悪い。マジでお前のな。」
「はい?」

ケラケラと笑う先輩にどういうことかと聞けば、どうやら記憶が無かった俺も同じ理由でこのスリッパを選んだらしい。
尚、やはり他より多いマグカップも、俺が欲しがって買ったらしい。
甘やかさないで。
いや、正直すっごく嬉しいんだけどさ。

「記憶が戻ったお前が気に食わねぇなら、時間掛かってでも一式買い替えるつもりだったがどうする?」

先輩からはそう言われたが、俺は別に気にしない。
気にしないどころかどれもこれも俺好みだし、これが全くの他人ならモヤってたかもだけど、俺だし。
寧ろ俺はやっぱり俺なんだろうなぁと思うと、俺も笑ってしまう。

「気にしない。俺が選んだんだもん。」

ちょっとだけ首を反らせて先輩と目を合わせて、にひひと笑う。
先輩も嬉しそうに微笑むと、いつものように俺の唇を撫でてくれる。
さっきしたキスも好きだけど、これも好き。

「そうだ、先輩。」
「ん?」
「魅了とかって………アレックス達はどうなってるの?」

ヒロインだからって魅了はやりすぎだと思うし、そこに本人の意思が無くなってしまうのは違うと思う。
恋愛的な感情は持てなかったけど、やっぱり元婚約者な以上は気になる。
そう思いながら恐る恐る聞けば、先輩はなんてことなさそうな感じであっさりと言った。

「アレな。一回は全員魅了されちまったみたいだったが、解決したらしい。」

なんでも全員を魅了したヒロインちゃんは、足りないとずっと騒いでいたらしい。
多分、攻略対象のことなんだろう。
もしかしたら先輩も攻略対象で、そのことだったのかもしれない。
てかハーレムルート狙いだったのね。

「で、何を思ったのかアイツは、王家にコットランド家の次男坊を出せと言い出したらしい。」
「コットランド家の次男坊?誰?」
「お前と揉めたあの男だよ。」

なんと!
ということはあの男も攻略対象者なのか!
でも何で王家に?と思ったが、そういえばあの人と出会った時王家の騎士っぽかったからそれでかと納得。
でもあの人常連だったし、近くに住んでる風だったのに何でわざわざ王家に直談判した?
てかよく入れたなと思わないこともないが、もしかしたら憲兵さんとかを魅了したのかもしれない。

「そのまま王家連中にも魅了しようとしたところで、あっさりと反逆罪で捕まったんだよ。商会の奴らは、聖女が魅了を解いたらしい。」

聖女、という言葉にちょっとだけ反応してしまう。
アンナ。
見ず知らずの、怪しさ満点だった俺を拾ってくれた恩人。
彼女は元気だろうか。

「………気になるか?」

先輩の言葉に、俺は迷わず頷いた。
気にならない筈がない。
例え王家の人間に邪魔に思われても、アンナ自身からどう思われていても、俺にとってアンナは大事な人だ。
でも―――

「でも、会わない方がお互いの為だから。」

俺はどう頑張っても、俺だということが今回のことでハッキリした。
例えばこれですっごいチートを得たとか、そういうことがあったならワンチャン会っても良かったのかもしれない。
でも俺はやっぱり至って普通の、なんの力の無い平民だから。
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