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君が主人公の世界です

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それから、それから。
俺は翌日改めて村の人達に挨拶をした。
記憶を取り戻した俺と今まで接してき俺は、違和感抱くレベルで違うだろうにそれでも村の人達は俺が記憶を戻したことを喜んでくれて、一人一人改めて自己紹介までしてくれた。
優しくて、あったかい人達だ。

「それで?シューヤちゃんとフィリップはいつ結婚するんだい?」

ほんわかとしていると、きらきらとした少女のような瞳で隣家のおばあさんがそう言った。
………いくつになっても、女性はコイバナ好きなのね。
なんて、現実逃避をしたくなるけれど、こんな場合じゃないよねとちらりと先輩の方を見遣る。

「そういうのは順を追って報告されてくれ。おら、仕事の邪魔だから散れ。」

俺から視線を寄越された先輩は、鬱陶しそうに村の人達を追い払う。
素っ気なく聞こえる言葉。
でも俺からちらっと見える首筋は、明らかに日焼け以外の理由で真っ赤になっていた。
可愛い。

「ねぇ、先輩。」
「ん?んん?」
「俺、となら結婚したって良いっていつも思ってますよ。」

先輩のシャツの袖を引いて屈ませてから、油断しっ放しな頬にキスをしてから俺はそう言った。
はっず。
バカップルかよ。
居た堪れなくなって踵を返して言い逃げすれば、予想外のことに暫し固まる先輩がハッと我に返ったように俺の名前を呼ぶ。
だからと言って止まれるか。
俺的全速力で家の中に入り、取り敢えず時間稼ぎで鍵を掛ける。
履いているサンダルを脱ぎ捨てて、律儀にスリッパを履いて向かう場所は寝室。

逃げ場が無いだろって?
それで良いんだよ。
だって、俺は別に外でやっちまったのが恥ずかしかっただけなんだから。

「シューヤ!」

先輩の、フィルの俺を呼ぶ甘い声が聞こえる。
キスしたかったのも、フィルとなら結婚しても良いって思ってるのも本当だから。
仕事の邪魔して申し訳ないなと思うけど。
起きて一日目にしては展開早いかなとも思うけど。
でもそれで良いじゃないか。

だってこれはラノベじゃないんだ。
例えば俺が死んだとしても、リアルはずっとずっと続いていくんだ。

寝室の扉は敢えて開けておく。
ねぇ、先輩。
俺、ずっと誰にも言えなかった真実があるんだよ。
貴方はそれを聞いても、俺を愛してくれますか?
俺の傍に居てくれますか?

「シューヤ!」
「わっ!」

開け放たれた扉を乱暴に閉めながら、フィルが文字通り飛び込んでくる。
俺はその勢いに押されて、ふかふかの大きなベッドに先輩ごと倒れ込む。
あまりにも必死なものだから、思わず笑ってしまいそうになる。
でも流石に笑う所じゃないっていうのは分かるから耐えてた俺の唇を、フィルはぱっくりとかぶりついた。
舐め合って、絡め合って、抱き締め合ってからゆっくりと離す。

「愛してる、結婚してくれ。」

あ、寂しなんて思う間もなく、熱い息と甘い言葉を耳元に吹き込まれる。
嬉しい、嬉しい。
考えれば俺って色んな意味でキズモノなのにね。

「俺で良いの?」
「お前が良い。」
「本当に?俺ね―――」

フィルの耳元で、内緒話。
なんの確証なんてないけど、でもなんでだろう。
フィルなら俺の全てを信じて受け入れてくれるって、そんなアホみたいな自信があった。
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