スライム牧場番外編

かかし

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ナチオルド子爵令息の華麗なる転落①

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―――村から王都に帰る道程で、ジェームズ・ナチオルド子爵令息はずっと考えていた。

自分が本当に欲しかったもの、やりたかったことは何だったのだろうかと。
今時分が配属されている小隊が、所謂達の寄せ集めだということは分かっていた。
その問題児の筆頭が自分なんだろうということも、なんとなく分かっていた。
そこまで馬鹿じゃない。
でも多分、自分は自分が思っている以上に馬鹿なんだろうなと、村に行って少し冷静になった。

ウィルにしたことを、今更謝りたいなんて思わない。
八つ当たりでしかなかった。
最低なことをしたと分かっているけれど、謝ってしまっては自分自身を否定してしまうようで嫌だった。
我ながらどこまでも自分冥利な奴だなと思うが、それでもジェームズはその考えを改めることはなかった。

「ウィルは戻るつもりはないそうです。ウィルの子供はまだ幼いですし、つがいは成人しているそうですが、村に根を張るつもりらしく引き離せないと。」

けれどもまぁ、悪いとは思っているので団長にはそう報告した。
どこか安堵したような表情を浮かべる団長に、ジェームズはなんだかぷつりと糸が切れたような感覚がした。
自然と、口が動く。

「それで………」
「ん?」
「俺、騎士団辞めようと思います。」
「はぁ?」

別に考えがある訳ではない。
寧ろ何も考えてないとも言える。
でももう言ってしまった。
決めなければいけない。
自分が進む道が、何なのかを。

「いや、お前結婚したばかりだったろう!?」
「そうですね。」

確かに結婚している。
ただ、ジェームズは知っている。
彼女が自分の従兄弟に惚れていて本当はそっちと結婚したかったことも、従兄弟もまた、彼女を愛していて独身を貫いていることも。
初夜の日だっていつまでも従兄弟を想って泣くから苛ついてしまって、その苛つきのままに抱いてしまったから関係が悪化した。
寧ろ異物は自分なのだ。

「離縁した方が、彼女も喜びますよ。」
「いやいや!それは奥方が言った訳じゃないだろう!?」
「言われた………というよりも、彼女が彼女の友人と話しているのを聞いたばかりですし。」

村に行くことを決める1ヶ月程前だったか。
本当に偶然ではあったけれど、友人に泣きながら相談している妻の姿をジェームズは見ているのだ。
金はあった方が良いが余剰に持っていても邪魔なので、これまでの謝罪も込めて財産はほぼ全て妻に渡そうとジェームズは思った。
ジェームズだって多少なりとも、悪いと思っているのだ。
振り回してしまった時間は戻らないけれども、せめて慰めになれば良い。

「届は後程提出します。今日はやることが出来たので、早退しても良いですか?」
「いや、良くないが!?」
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