最高の御伽噺を手に入れるには

かかし

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最低の御伽噺しか得られない僕は(ゆうちゃん視点)

可哀想な幼馴染

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俺には幼馴染が三人居た。
二つ上のとても賢くて格好良い海翔(カイト)さんと、
四つ下のちょっとおバカだけど可愛い璃己(リコ)ちゃん。
そして何の特徴もないしどこにでも居そうな顔の俺と同じ歳の大翔の三兄弟。

俺は海翔さんがめちゃくちゃ好きで、弟っていう立場に居る大翔が羨ましかった。
でも違和感を覚えた小学校高学年の頃には、もう海翔さんや璃己ちゃん、そして二人の両親の中では【大翔は居ないもの】という風習が出来ていた。
しかもそれは海翔さんを中心に他の連中にまで広がっていて、最終的にはもう学校や町内ですら大翔を居ないもの扱いを平然と行うようになっていた。

意味が分からない。

海翔さんに憧れていて大翔のことを正直馬鹿にして見下していたが、いくらなんでもこれはないと思った。
けれども怖かった。
俺だけが逆らって、俺も同じ目に遭うのではと思うと怖かった。
金も親の権力も、どちらかといえば圧倒的に俺の方が強かったのに、俺は海翔さんに逆らうことが怖くてできなかった。
でもろくにご飯も貰わなくなった大翔はとても小さくなっていって、それも怖くて。
俺は結局中途半端に手を差し伸べるしかできなかった。
でもそれすら、大翔には不要で。
アイツはさっさと新聞配達のバイトを始めると飯代は自分で稼ぎ始めたし、僅かでもとホームレスに混じってゴミ拾って金に変えていた。
独りで逞しく生きていた。

ホームレスには俺達と違ってしがらみがないから、大翔を居ないもの扱いしたりはしない。
大翔はホームレスのおっさん達と笑いながら放課後を過ごし、夜になるとホームレスから教えてもらったポイントで野宿をして、明け方に二十四時間営業の風呂に入ってから新聞配達のバイトをする。
もうこの時点で大翔は俺達の中で誰よりも自立をしていた。
例え稼いでいる金は少なくとも、自分だけの力で生きていたのだから。

俺はあんなにも見下していた大翔に置いて行かれたように感じた。
大翔は当たり前だけど俺を見下したような態度は取らなくて、それがますます俺を惨めにさせる。
俺は大翔にとってちっぽけで気にもとめられてない存在なのだと、そう思い込んでしまった。
我ながら面倒な思考だと思う。
けれども俺はその時真剣にそう思ってしまった。

『お前さぁ、よくアイツと一緒に居れるよな。』

そんな時、俺はそこそこ仲良くしていた友人にそう聞かれた。
コイツも大翔を居ないもの扱いしている一人だ。
だからだろう、こっそりと、教室に俺とコイツしか居ない時に聞かれた。
随分卑怯だなと思うが、俺も似たようなものなので何も言えない。

『アイツ可哀想だろ?だから俺が傍に居てやってるんだ。』

気が付けば無意識に言葉を返していた。
自尊心が満たされるとか、どうせアイツのことなんて誰も気にしないしとか、酷い言葉ばかりを吐いたことだけは覚えている。
あの時、教室には確かに俺とコイツしか居なかった。
でももしかしたら大翔に聞かれていたのかもしれない。
大翔は俺から距離を取るように、ホームレス達と一緒に居る時間の方が長くなっていった。
そのタイミングで大翔は家に入ることすら難しくなりつつあると知って、俺は何故だか焦りを覚えた。

『ゆうくん、水浴びしよー!』
『おっ、いいな!川行くか?』

そんな時だった。
勇気を出して大翔がよく行っているホームレス達のたまり場に行った時、一人のホームレスに抱き着いて楽しそうに笑う大翔を見たのは。
他のホームレスと違ってガタイがかなり良く、栄養状態が悪くチビガリな大翔が傍に居ると巨人のようにも思えてしまうその男は、軽々と大翔を肩車すると公園近くの川の方へと走って行った。

楽しそうな大翔の笑い声が、耳にこびりついて離れない。
あんな笑顔も見た事ない。
俺が傍に居た時は、いつもつまらなそうにしていた。
その事実に気付いた瞬間、心臓が凍ってしまったような感覚を覚えた。

大翔は常にあの男と行動しているという訳ではなさそうだった。
今ならまだ間に合う。
俺は俺を甘やかす両親に、別宅とスマホの追加を強請った。
あっさりと与えられたそれを使い大翔を誘い込むと、俺は焦燥のまま大翔を犯した。
誰も触れたことがないという大翔のナカはあたたかくて気持ちが良くて、俺はこのたった一回でものの見事にハマった。

『………なんか悪いことしてるみてぇ』
『悪いことって?』
『パパ活?的な?』
『なにそれ!俺ら同じ歳なのに!』

久しぶりにつまらない会話を楽しめるのも嬉しかったし、大翔から言われた言葉も面白くて俺は腹を抱えて笑った。
ふっと大翔の口元が笑みを描く。
俺に対して、大翔が笑ってくれた!

『パパ活なら匿名にしとかないと危ないだろ。』
『………?何の話?』
『マッチングアプリで出会ったって感じにしようぜ。なんてことない、ごっこ遊びだよ。』

けれども何故か会話の雲行きはおかしくなっていく。
初めて持ったにも関わらず、大翔はつらつらと【ごっこ遊びの設定】を話しながらスマホをスイスイと操作してメッセージアプリの俺の表示名を変えた。
【ゆうちゃん】、と。

『………だから、今日からお前は俺の中では【ゆうちゃん】、な』

その名前を見た瞬間、あの日の大翔の笑い声がまた頭の中に響き、そして大翔のその言葉に心が打ちのめされていく。
そんなつもりで囲いたかった訳じゃない。
俺は大翔の唯一無二になりたくて、だから―――

『そ、そんなの嫌に決まって………』
『あっそ。じゃあこれ要らない。俺お前が思ってる程寝床に困ってる訳じゃないし。』

あっさりと、スマホは突き返される。
それは知ってる。
いつもより家に入るのが難しくなったというだけだし、大翔はそもそも今までだって野宿をして過ごしていた。
だから俺が衣食住を提供するからと言ったところで、大翔の気を何一つ引ける訳じゃないのだ。

『………分かった。ゆうちゃんで良いよ。ただ、衣食住はある程度俺が提供するからさ、新聞配達のバイトは一時的に辞めたら?授業中寝てるから成績保てないでしょ。』

留年したら金が余計にかかるよと言えば、それもそうだなと大翔は納得した。
俺が【ゆうちゃん】を受け入れたのも、大きな理由なのかもしれない。
でもいつかは、ゆうちゃんではなく【長谷川聖人】として大翔の傍に帰りたい。
そんな気持ちを込めてキスをしたら、大翔はとろんとした顔で笑ってくれた。

『よろしく、ゆうちゃん』

大翔は甘えるような声で俺の首筋に腕を回す。
たったそれだけの事で勃起した俺は、また気が狂ったように大翔を抱いた。
今度は合意の上だから、レイプじゃないと思いたい。
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