ボクらがケモノをやめたなら

かかし

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初めて彼を見た時、私が彼を守ってあげないとと思った。
気が狂ってしまった母親、息子を離れに追いやり守ろうともしない父親。
まだ高校生なのに、こんな環境で可哀想だ。
早く守ってあげないと。
あんなにも心に傷を負って、グレて変な男達から輪姦されてしまっては大変だ。
だからあの父親の隙を狙って鍵を拝借して、すぐに複製してから何事もなかったかのように戻した。
早く守ってあげないとと思っていたら、ある日突然派手な見た目の男を連れて帰ってきた。
それだけでも驚きなのに彼はそのままその男を離れに住まわせたのだ。
あの父親が許可しているからと言って!

一体どういう男なのか昔のツテを使って調べたら、援助交際や愛人の真似事をやっているような奴だった。
なんて碌でもない!
あの子には相応しくないにも程がある!
そう思ってカメラと盗聴器を増やし見守っていたら、どうやらお風呂に危険がないか見ていた時に気付かれてしまったらしい。
普段は彼を放置しているクセに、あの男に何を吹き込まれたのか知らないが監視カメラを仕掛けられた上に、玄関の鍵までかけられた。
マスターキーも合鍵も所持しないという徹底っぷりに、私が疑われているのだと嫌でも分かってしまう。

どう考えてもあの男よりも私の方が大地くんに相応しいのに、誰も彼もが私と彼の仲を引き裂こうとしている。

イライラとして迎えた翌日、いつものように連れ立って登校しようとした二人を見て私はゾッとした。
大地くんの表情が、仕草が。
二人の間に昨日何があったのかを如実に物語っていて。
そんな、私が守りきれなかったばっかりに!
邪魔をするだけでは物足りなかったとでもいうのか?
娼婦のような表情で大地くんはあの男を見つめ、あの男もまたお気に入りの娼婦を侍らせる下衆のような顔で大地くんを見つめていた。
でもまだ間に合う、きっと、まだ………
そう願っているとふと、あの男と目が合った。
獣のような瞳で、私を睨みつけている。
それ以上見ると食らうぞと、言わんばかりの瞳で。

人間に、獣は相応しくない………
駆除しなければ、早急に。
彼があの獣に喰らい尽くされてしまう前に………!
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