ボクらがケモノをやめたなら

かかし

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高城と吉塚の関係は、昨日一日で大きく変わった。
吉塚は名実共に高城のメスになったのだ。
昨晩高城は吉塚を抱きながら、何度も何度も好きだと言ってくれたし吉塚だけだと言ってくれた。
終わった後のピロートークでも、吉塚に惚れてからは誰とも熱を交わしてないのだと明らかにしてくれた。
吉塚だけだと教えてくれたのは嬉しかったし、授業中の落書きを気付かれていたのはかなり恥ずかしかった。

『俺、レオンの彼女面して良い?』

高城があまりにも甘やかしてくるものだから、勘違いしてしまうのではと吉塚は恐る恐るそう聞いた。
すると高城がひどく不満そうな顔をしたのでやはりダメなのかと思えば………

『俺大地の恋人のつもりだしバンバン彼氏面するつもりなのに、大地は違うの?』

と拗ねたように言われた。
可愛い。
先程まで雄の顔をして貪っていたクセに、今はイタズラが見付かって叱られた子供のような顔をするんだからズルい。

『違わない。レオンは俺の恋人だよ。』

尖らせた唇にキスをして、高城の腕を枕にして横たわる。
今まで自分が女性に腕枕する想像しては首を捻っていたが、高城に腕枕をされる自分は不思議としっくりときた。
ギュッと抱き寄せられて、頭を撫でられながら眠る。
ストーカーの問題が片付いたら、颯太用にと取っておいた空っぽの室内は二人の寝室に変えてしまおうか。
吉塚はウトウトしながらそう思い、そして朝を迎えた。

高城が気を遣ってくれたからか、翌朝はそんなに腰痛も感じることなく普通に歩けた。
普通に高城が用意してくれた朝ごはんを食べ、夜は結局食べてないから弁当代を間違いなく持ったか確認して戸締りをする。
ソワソワと落ち着かない気分はあるも、それでもいつもとは変わらないルーチン。

「あ、鍵そのままレオンが持ってて。俺無くしそう。」
「自信満々に言わないの。………責任重大だなぁ。」

高城は吉塚に言われるままマスターキーをお気に入りのキーケースに取り付け、二人揃って玄関を出る。
いっそ複製してマスターキーの方を石重か百瀬に渡しておいた方が良いのではとも思ったので、高城は今日にでも百瀬と相談しておこうと考えた。
前回の鍵はもしも犯人があの家政夫だと考えた場合、颯太に無断で拝借して複製された可能性が高い。
その為颯太からの提案で今回の鍵は複製は難しいタイプの鍵にして、その上で問題が解決するまで颯太には持たせないことにしている。

「忘れ物ない?」
「ない。大丈夫。」

しかし高城の中で、鍵を自分が管理しておくのはある意味安全なようにも思えた。
部活はしてないが委員会活動でどうしても高城の方が遅くなる日、鍵がないことを言い訳に吉塚を一人で帰らせなくても済むからだ。
待たせてしまうが、一人で帰らせるよりは絶対に良い。

「今日何食べる?」
「行きがけコンビニ寄ろうか。高くつくけど、購買の弁当あんまり好きじゃないんだよね。」

玄関の鍵がかかった音をしっかりと確認し、歩き出す。
元々時間に余裕をもって行動しているので、多少コンビニで昼食を選んだところでギリギリにすらならない。
そう考えていると、ふと、強い視線を感じて高城はゆっくりと視線を動かした。
正門の掃除が終わって本宅に戻る所だったのか、箒とゴミ袋を手にしたままあの家政夫が立ち尽くしていた。
どうやら高城と吉塚の間に何があったか、正確に感じ取ったようだ。
こちらを見てくる瞳がみるみる憎しみへと変貌する。

高城はその瞳を、ただジッと見つめるだけに留めた。
睨み返す訳でもなく、挑発する訳でもない。
ただ静かに見つめ返しただけだったが、やがて家政夫の方から目を逸らした。
ケモノと目が合ったら逸らしてはいけないというのに………

「レオン?」

あまりにも見ていた所為か、吉塚が不安そうな表情で高城を見上げた。
それに対して高城はなんでもないよと微笑むと、その背中をそっと押して先に行くように促す。
手を繋ぎたかったけれど、挑発行為と捉えられて逆上されたら危険だ。
もう遅いかもしれないけれど、その辺りの万全は期すべきだろう。

「………アイツが見てるから、早く行こう。」

小さな声で高城が呟けば、吉塚は的確に意図を読み取り先を歩き出す。
事情を知らない人間から見れば、いつも通りの光景を無理なく装いながら二人は正門を抜ける。
その瞬間ぞわりと背筋が気持ち悪くなるような視線を感じたが、振り返ってしまっては逆に危険なような気がしてくだらない雑談をしながら通り抜ける。

ベタつくような視線は、二人の姿が見えなくなるまで続いた。
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