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第一章 覚醒
第35話 #初めての告白 #ファーストキス
しおりを挟む俺が椅子に座って、露天風呂へ入っている幸せそうな二人を眺めていたその時、ふと沙織さんと目が合った。
ついさっき迄は温泉モードだったのに、いつ戻ったのだろう。
沙織さんがじっと俺を見ていた。
「あ、沙織さん⁉」
「あ~! お姉さんでしょ~?」
「あ、お姉さん……」
「は~い」
沙織さんは悪戯っぽい笑みを浮かべ、ゆっくりとその場で立ち上がる。
白い水着が悩ましい。
「何だかまた少し成長した様ですね~」
そして、怪しく薄っすら光る沙織さんがこちらへ近づいて来る。
身体全体から光っている様だ。
そして、近づくにつれその光が強くなってくる。
お湯に濡れた白い下着は、その下の素肌を透かして見せているが、その肌が光り輝いていてよく見えない。
その不自然な現象でさえも、不思議と今の俺はさほど驚かなかった。
沙織さんは露天風呂の縁に立つと、俺を微笑んで見つめている。
「悠菜と二人で、二か月前には異世界へ戻る予定だったんだね……」
「あ~ユーナちゃんに聞いたのね~」
「うん……」
「そう言う約束でここへ来ていましたから~」
「そう……だったんですね……」
沙織さんはゆっくりと俺の前まで近寄って来た。
「悠斗くんの成長って、きっかけさえあればあっという間なのね~ちょっとびっくりしちゃった~」
口調はいつもの沙織さんだが、今の俺にはその違いが分かっていた。
俺は光り輝く沙織さんをじっと見つめた。
「悠斗くん、今の私のスキル見えるでしょ~?」
「え……? スキル? あ、うん」
スキルと言う単語に少し戸惑ったが、沙織さんのステータスに、技能や能力が示された項目があった。
いつの間に出たんだろう……。
今朝見た沙織さんのステータスに、確かこんな項目は無かったと思う。
「簡単に言うと~それが見えるのは、その対象者が悠斗くんよりスキルレベルが同等以下になったという事なの~」
「えっ⁉ そんなまさかっ! 沙織さんが俺よりレベルが低い訳ないじゃん‼」
「あー! こら!」
「え……あ、お姉ちゃんより……?」
「ん~レベルが低いとは言っても、スキルのレア度、レアレベルも影響されるの」
「スキルのレア度?」
「うん~悠斗くんのスキルが私のスキルと同等のレアって事ね~」
「レアなのっ⁉ 俺のスキルが?」
「うんうん~」
てか、俺のスキルってなにっ⁉
そんなの記憶に無いんですけどっ⁉
「俺、スキルなんて無いと思うんだけど⁉」
「ん~悠斗くん、自分のステータス見れるでしょ~?」
「あ、うん……見た事あるけど」
「今は発動して無くても、発動準備段階まで来ているスキルなら見られる筈よ~?」
「は、発動準備だんかいーっ⁉」
何ですかそれはっ!
慌てて自分のステータスを見る。
だが、幾つかの文字は見た事も無い……。
わ、分かんないじゃん!
「今の悠斗くんに理解出来ない所があるよね~?」
「うんうん!」
「そこが準備段階なんだけど~ちょっとだけ後でお手伝いしちゃう~」
「あ、そうなの⁉」
「もう、ここまで成長してるのであればいいでしょ~」
「え……成長? してるの?」
成長してるとか自覚無いんですけど……。
あ、早く走ったり高くジャンプ出来たり?
そう言えば、皆のステータスとか位置情報もハッキリ分かる様になったよね!
あ、男達に絡まれても素早く避けれたし⁉
「ユーナちゃんも、悠斗くんが目覚めるまではやり遂げるって、ずっと覚悟してここに居たんですよ~?」
目覚める?
そう言えばあの夜、悠菜が言っていた。
俺から離れないって……。
「俺が成長するまでは、離れないで護るって事だったんだ……」
沙織さんはうんうんと頷きながら、更にゆっくり俺に近づく。
「私だってそうよ~?」
「そうですよね……」
「向こうに戻っても、悠斗くんの事をずっとお守りする事を誓っています」
「そ、そんな……」
こんな別れ方ってある⁉
これまでずっと一緒に居たのに、突然帰っちゃうだなんて!
「こんな、突然なの……嫌だよ……離れたくないよっ!」
急に目頭が熱くなると、目の前が見えなくなる程に涙が溢れて来る。
同時に鼻水も垂れて来ると、それを思い切り啜るがとても間に合わない。
Tシャツの肩で顔を拭くが、それでもどんどんと涙が溢れて来る。
自分の顔が、凄く酷い顔になっていると感じた。
でも、そんな事よりも抑えようも無い悲しさが、全身の震えと一緒に溢れ出て来た。
「私も別れはとても辛いのです……でも、これが約束なの」
「で、でもっ! ずっと一緒だったから! 家族だったからっ!」
見っとも無く泣きながら沙織さんに訴える。
俺はこれまで、こんなに泣いた記憶が無い。
そんな自分の異常事態に、頭のどこかで気付いているが、それでも今はそんな事よりも、沙織さんと別れたく無い気持ちが溢れ、全身でこの現実を拒絶していた。
「ハルトくん……私も貴方を連れて行きたいの。愛美ちゃんも連れて行きたいの……二人を誰にも負けない位に愛してます……」
「だ、だったら、何故っ!」
「ご両親も同じ位にあなた達を愛しているから……」
「あ……」
何も言い返せない。
俺を育ててくれた両親の愛は間違いなく本物だ。
沙織さんに言われるまでも無く、それは俺が一番分かってる。
その愛情を沙織さんのものと比べる事等出来ないよね。
分かっている……。
でも、沙織さんと離れるなんて、これまで考えた事も無かったのだ。
いつも一緒に居た沙織さんと悠菜……。
そして、これからもずっと一緒に居ると思っていた。
それが俺の当たり前だったのだ。
「で、でもっ! 嫌だよそんなのっ!」
好きだとは言えないけど、離れるのだけはどうしても避けたい。
一生実らない恋でも構わない。
ただ、これまで通り一緒に暮らして行きたい。
「私もユーナちゃんも本当はここに居てはいけないの」
沙織さんは俺にでは無く、まるで自分に言い聞かせる様にそう言った。
「それは、悠斗くんを啓子さんへ授けた、その時から決まっていた事なの……だから……私が帰らないといけないの」
「そんな……沙織さん!」
「あ、こら」
つい約束を忘れて、お姉さんと呼ばなかった俺に、沙織さんは優しく怒ったフリをした。
「あっ……ルーナ! ルーナお姉ちゃん!」
「え……そう呼ぶんだ……」
「うん、これからはルーナお姉ちゃんって呼ぶ!」
「そう……。ねえ、ハルトくん、お部屋の絵見た?」
確かに沙織さんの言う通り、あの部屋には大きな絵画が掛かっている。
緑の広い草原に、大きな木と泉がある絵だ。
「え? ああ、俺とルーナお姉ちゃんが生まれた泉だよね」
「うんうん~私の好きな絵なの」
「お……姉ちゃん……」
俺の初恋の人は、同じ所で生まれたお姉ちゃんだったんだよね……。
「地球人の姉弟と言うのと大きく違いますけどね~」
「あ……俺は母さんの染色体も使ってるから……」
「そして貴方が子供の頃、色々と違和感を感じてたでしょ~?」
「あ、うん。頭の中に色々出てきたり……」
「それはきっと、私がこっちへ来てから、ずっと感じていた違和感と同じですね~」
「……そうだったの?」
「きっと、悠斗くんはあっちの感覚を、身体の何処かでは覚えているのね」
「そうなのかな……」
「ええ、きっとそうですよ……」
そう言って沙織さんは手を合わせて俺を見つめた。
もうこれでお別れなんだと思うと、また涙が溢れて止まらない。
「あまり泣かないで……最後の別れじゃないのに……」
「でも……いつも一緒に居た家族と離れるんだから……泣けるよ……」
情けない泣き声で沙織さんに言い返す。
とても離れる事に耐えられそうも無い。
「もう悠斗くんは大丈夫。あのイーリスだって呼び寄せたんだもの」
「そ、そんな事言っても、そんな意識無かったし……」
「悠斗くん、あなたは私が思っていたよりも、ずっと意味があって生まれて来たようなのよ……」
「え……? どういう事? 分かんないよ、俺」
優しい眼で俺を見つめながら沙織さんは続けた。
「愛美ちゃんもね、きっとあなたが呼び寄せたの……」
「え……? 愛美?」
「ええ。その一つの理由として、啓子さんの不妊は今も治ってません」
「えっ⁉ ど、どうして……?」
「あの時、間違いなく啓子さんは妊娠して、自然に出産をしたのですけれど……」
「う、うん」
「その後の啓子さんは、最初に逢った時と同じ状態に戻ってしまっているの」
「え……その事を母さんは知ってるの?」
「ええ。私からその事は伝えました。勿論、お父様にも」
「そうなんだ……」
「その事を伝えた時にね、啓子さんが言ったの……。私が悠斗くんを啓子さんに授けた様に、愛美は悠斗が授けてくれたって……」
「え……そんな事を……」
「あの時の私には、啓子さんのお腹に赤ちゃんを授ける事は出来なかったのだけれど、悠斗くんは啓子さんにそれが出来たのよ」
「そんな……うそ……だよ」
「それが本当よ? だって、私はずっと悠斗くんを見て来たもの……あなたが生まれてからずっと」
それは否定できない。
悠菜と沙織さんはずっと一緒に居てくれたし、いつでも俺を見てくれていた。
両親よりも俺の事を心配していたのは事実だ。
きっと、両親は沙織さんと悠菜に任せて置けば安心だったのだろう。
だから、一番心配してくれていたのは、ある意味沙織さんなのかも知れない。
「そ、そんな事言われても、俺には自覚も無いし……」
「ちょっとだけ見せて……」
「え?」
沙織さんが俺の手をそっと握った。
手を握られるだけでこんなに気持ち良いとは……。
「随分前、ユーナちゃんに聞いた次の日にハルトくんを触ってみたけど、その時は分からなかったの~でも、やっぱり間違い無いわね~」
「え?」
「ハルトくん、メングロスさんに逢っている様ね~それと、悠子さんにも」
「え? めんぐ? ゆうこさん?」
聞いた事も無い……。
誰っすか⁉
「ユーナちゃんが言うには、初めて啓子さんの義父さまにお会いした日の夜だったと……」
「母さんの義父さま? 父さんの父さん?」
「うんうん~その時に二人の女性が現れたと……」
「女の人⁉」
「ユーナちゃんはどちらも知らない人だと言うけど、一人は私が知ってるメングロスさんで、もう一人はハルトくんのお父さんのお父様の奥さんね~」
「それって、俺の……愛美のお婆ちゃんって事⁉」
「そうなります~」
「えーっ⁉」
ど、どう言う事よっ⁉
「じゃあ、幽霊とか⁉」
「幽霊~?」
「う、うん。化けて出て来たとか?」
「それは違うと思うけど~きっと悠子さんの姿の方が都合が良かったと思うな~」
「都合が良いって……」
都合よく姿を変えられるのっ⁉
その人達って何者ですか⁉
「多分だけど、実体では無くて思念体として逢いに来たんじゃないかしら~」
「思念体って……」
本当はどんな姿なのさ!
「何か理由が無ければ現れないと思うの~」
「ま、まあそうですよね……」
「あ、でも思念体として現れたら幽霊って言うのかしら~」
「へ? あ、いや、それはどっちでも……」
何か訳があって現れたのは間違いないだろう。
メングロスさんって誰よっ!
悠子さんってお婆ちゃんも何者っ⁉
でも、どうして?
孫である俺に逢いに来た?
まあ、無くは無い理由だけど、普通の人じゃない事は間違いなくね?
「メングロスさんも気になるけど、それよりお婆ちゃんの悠子さんって人間じゃ無いの?」
「悠子さんは元々は地球の方だと思うけど~こちらで亡くなった時にメングロスさんと関係をもったとも考えられるわね~」
「死んだときに?」
「ええ~気になって調べたんですけどね~」
「ええ」
「地球には過去に何度も異世界からの接触が確認出来ているの~」
「異世界って、エランドールじゃなくて?」
「セリカちゃんやユーナちゃんのご先祖さまはこの地球ですけど、その後のエランドールではずっと地球の世界との接触は禁止されているので~」
「じゃあ、エランドール以外の異世界って事?」
「ええ~私も知らない異世界や異次元、異星人も関係してるのよね~」
「そ、そうなんだ……」
「ただ殆どは、地球の進化を妨げない様に配慮はしている様ですけど~」
「でも、例外として今回の様な略奪者もあると……」
「そうみたいね~ムーやアトランティスは過去に略奪の被害を受けたの」
「えーっ⁉」
「その後も何度か過去の地球では、他の異星人達の戦いの場になったと聞いているわ」
「そ、そうだったんだ」
まあ、現代人がこの地球で生活してまだ数百年だしね。
何万年も昔の事何て殆ど分かって無いよね。
そして、二十数日後には異星人が略奪に来るんですよね?
沙織さんやセレス達が帰っちゃうのに、どうしたら良いのさ!
「でも、皆帰っちゃうのに俺はどうしたら良いの⁉」
「さっき言ったじゃない~ハルトくんはもう大丈夫って~」
「そんな、俺何も分かって無いよ⁉ 何も出来ないよ⁉」
「今はまだ目覚めたばかりだから……きっと貴方は私とユーナちゃん、そしてセリカちゃんの想いを胸に、この地球の皆を護るわよ……」
「地球の皆って⁉ まさかそんな事出来る訳っ!」
「だって、私達とエランドールへ帰る気など起きないでしょう? この先に起こり来る、地球の危機に立ち向かうのでしょう?」
確かに沙織さんとエランドールへ帰る選択肢は最初から頭に無い。
一度もそれは考えられなかった。
今思うと意外だが、地球の危機に俺だけ逃げる感じがしてそれは嫌だ。
危ない事が置きそうなのに、それを放って置いて何処にも行けない。
「あ……うん。絶対に逃げたく無い……」
「愛美ちゃんとイーリスを召喚した様に、今度はその力で地球の危機を救って下さい。何も出来ない私の代わりに……」
「ルーナお姉ちゃん……」
「そして、いつまでも元気でいて……」
「うん……」
どうしても帰っちゃうのか……。
だけど、ちょっと待てよ?
前に俺がエランドールで産まれた目的を、ユーナやセレスの為だとも言っていたよね?
彼女達の存続がどうのって言っていた。
だからこそ、ユーナとセレスの染色体も使ったとか……。
「でも、セレスと悠菜の存続の研究材料って話は……」
「それはね……」
そう言うと、また優しく俺の手を握った。
沙織さんの手の温かさが俺に手に伝わってくる。
同時に何かが、どんどんと俺に流れ込むような感覚になり、俺は咄嗟に身構えたが、すぐに危険なものでは無いと判断できた。
意図せずに俺の脳内では、目まぐるしくその解析を行っていた。
沙織さんの身体全体が更に眩い光を放つと、その光は俺の身体も同調するかの様に光り輝き始める。
声にならずに沙織さんの手を握り返すと、俺と沙織さんの身体を包むように更に光は大きくなる。
大きな光の塊が辺りの景色を眩く照らし、その存在を感じられなくなる。
俺には沙織さんだけが見えており、周りの景色は眩い光に包まれて何も見えなくなっていた。
「これが私と悠斗くんの世界。私だけではここに来る事など出来ない世界」
ゆっくり辺りを見回すがやはり何も見えない。
それどころか、足の下の床も見えない。
そこに何も無いのだ。
え?
少し力が入るが、踏み込む足の下には何もなく、重力でさえも感じない。
そして、例えようがない心地よさ。
快感にも似ている。
全身を流れる微電流の様な……。
ちょっとした違和感を感じたその時、沙織さんの意識が流れて来る。
とても優しく、全てを包み込む様な博愛の気持ち。
頭の中が光り輝いて真っ白になった様な感覚。
沙織さん……やっぱり女神の様な人だ……。
そして、更に何かが俺の中に入って来るのを感じていた。
≪フェオ……ウル……ソーン……≫
意味は分からないが、そんな言葉が頭に響いてくる。
幾つもの単語が流れ、その都度頭の中に刻み込まれるようだった。
≪……オセル……ダエグ……ウィルド……≫
そして、フワッと全身で何かを感じた。
咄嗟に脳内でそれを確かめるが、ルーナ文字としてインストールされた様だ。
そしてすぐに沙織さんが祝詞を唱えた。
また別の言語の様だ。
≪ベネディクティオ・パーフェクタ・アエテルナ……スリーアンヴォスポース≫
な……何だ?
「これで悠斗くんと私は、いつまでもずっと繋がっているわよ? 覚悟してね?」
え?
覚悟?
何を覚悟っ⁉
「沙、ルーナ……姉さん、今、何を?」
「おまじないみたいなものよ~」
そう言って、嬉しそうに微笑んだ沙織さんが、掴む手の力を緩めた。
俺は名残惜しみながらも、握る手の力を抜く。
スッと二人の手が離れると同時に、身体に重力を感じた。
俺の身体は無意識ではあるが、当たり前の様にその重力を自分の身に対応させていた。
足に感じる床の感触に、何気なく下を見た時、自分の身体にある違和感に気が付いた。
俺の全身に、見た事も無い不可解な紋様が、ハッキリと浮かび上がっていたのだ。
そして、その紋様を沙織さんが指でなぞるとスッと消えていく。
同時に全身の光は消え、周りの景色が視界に入ると、向こうには露天風呂が見えた。
そこに入っている西園寺さんも見える。
勿論、辺りはそのままの状態で残っていた。
その時だった。
沙織さんが俺を強く抱きしめた。
えっ⁉
沙織さんの素肌を全身で感じながら、俺はそっと沙織さんに腕を回す。
思いも寄らず抱き返してしまったが、その身体は意外にも小さく感じた。
抱いた腰とその肩は、人間の女性そのままの華奢に思えた。
これまでは愛美しか抱いた記憶しか無かった俺は、思わず沙織さんを強く抱きしめてしまった。
心臓がどくどくと強く脈打ち、耳の奥までその音が響き渡っている。
この心臓の音は、沙織さんに聞こえてしまっただろうか。
それは恥ずかしいが、今は仕方ない。
こうして憧れの人と抱き合えているのだから。
これを逃したら、二度と抱き合えない気がしていた。
「ハルトくん、あなたと一緒に過ごせて幸せでした」
俺に抱かれた腕の中で、沙織さんはそう言ってくれた。
「お、俺だって……俺ほど幸せな奴は居ないと思う……」
本心からそう思えた。
沙織さんが絶世の美女だからじゃない。
昔から俺には特別に優しく、いつも傍に居てくれた。
こんな俺に最高に奥深い愛情を、いつでもたっぷりと注いでくれていた。
育ててくれた両親よりも、実は愛してくれていたのかも知れない。
「お、俺、ずっと好きでした! 今でも、これからも、ずっと好きです!」
遂に言ってしまった!
もう逢えなくなると思うと、どうしても言わなきゃいけないと感じた。
同時に、こうして抱き合っていると、まるで愛し合っているかの様に錯覚したのかも知れない。
仕方ないじゃん!
好きな人と抱き合ってるんだから!
「私も……貴方は私の大切な――よ?」
「え……何て?」
大切な――その後の言語が、日本語でも英語でも無く、聞いた事も無いものだったのは分かったが、その意味が分からない。
何て意味なのか分からずに、俺は腕の中の沙織さんを覗き込んだ時、その意味を聞こうとした俺の口を沙織さんの唇が塞いだ。
突然の事で俺は動転していた。
思えば、俺のファーストキスだった。
頭の中がグルグルと回る。
あの憧れの沙織さんと⁉
お、俺は、き、キスしてるーっ⁉
応援ありがとうございます!
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