ベタな青春に憧れてなにが悪い!

たら

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王道崩壊、三月寮の実態!

01話 出会い、そして終焉

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俺は数分(数十分)、遅れて入学式が始まっている体育館におずおずと入り込む。

数人の生徒や教員が俺に気付いたのか、チラチラと目線を向けてくる。

まさか、時間を間違えるとは......。
浮かれ過ぎて、確認を怠っていたのだが......。
まぁ、大丈夫だろ、ミスは誰にでもあるさ。

「あの人......入学式初日から遅刻とか、不良なのかな?」
「一緒のクラスだったらどうしよ......。」

ヒソヒソと聞こえてくる女子達の声。
うん、これはもうダメかも分からんね。

初日からしでかした失態に、両手で顔を隠しながら、一番後ろのパイプ椅子に座る。

遅刻者は、問答無用で一番後ろの席だそうだ。
さっき、体育館前にて門番の如く俺を待ち構えていた、ゴリラみたいな先生が教えてくれたのだ。

「初日だから大目に見てやる。」

とか言われたが、俺はゴリラの言語が分からないので、聞き流しておく事にする。

それよりも、早くこの状況を打開しなくてはいけないな。
第一印象は何より大切、俺は満天の笑顔を浮かべて体育館の舞台に立ち、話をしている校長先生っぽい人の話に耳を傾ける。

「それでは、これで入学式を終わります。」

入学式は終わった。
着席時間、僅か30秒である。

なんか記録に名を残すんじゃないか?
俺の笑みも、流石に震えた。
後にその笑みは、完全に不審者だったと語る者がいたとか、いないとか。

慌てるな俺、入学式など始まりに過ぎない......!!
青春の始まりで盛大にすっ転んだ事は認めざるを得ないが、なぁに。七転び八起き!
不屈の精神で青春と向き合わねば、俺の求める王道青春を謳歌するなど夢のまた夢だろう。

「はい、それじゃあクラス分けを張り出すから、各自指定のクラスに移動して下さーい。」

校長と入れ替わり、全校生徒の前に立つのは茶髪の髪をおだんごにしてまとめている、なんとも癒し系!と言った先生だ。

かなり美人......、まぁ先生との禁断の恋など邪道な道へ向かう俺ではないが、あの先生が担任だったらいいな、とか考えている。

それも全て、俺に宿りし運命力が左右する事なのだが......。

早速一年生のクラス分けが張り出されているスペースへと足を運ぶ。

そのスペースには既に人だかりが出来ていた。
それぞれ喜びの表情だとか、残念そうな表情だとかを浮かべている。
地元が一緒の奴と離れたり、一緒だったり。
そんな事で一喜一憂しているのだろう。

無論、遠方からやって来た絶賛ボッチの俺には関係の無い話だ。
名前を見ても誰か分からないし、取り敢えずはクラスに移動してから、気の合う友達を作れば良い。

入学式と言う場で友達作りが出来なかったのは痛いが......過ぎた事を考えていても仕方ないのだ。

俺は、張り出されたクラス分けの紙を人混みに紛れながら、見上げる。

愚上ぐじょう......あった!

「1年3組か......。」

俺の、なんでもない自然と出た呟き。
この声に、隣に立っていた女子がピクンと反応した。

桃色の髪にパッチリとした瞳。
顔が小さく、髪の毛はサイドテールでまとめており、体型もスラッ伸びた足と、引き締まった腰が美しい美少女である。

ピンクなのにおっぱいが無いのは、俺的に邪道だが、その点を除けば完璧な美少女である。

そんな彼女が、俺の顔を見上げる。
身長差故だ、俺は170cmと高校1年としてはまずまずの身長。
対して、この美少女は、155cmくらいである。
相対的に、俺が見下し美少女が見上げる図が完成する。

「わ、私も1年3組だ......なの!!」

そして美少女が一言。
笑顔がかなり引きつっているのは気がかりだが、そんな事よりもだ!!!

「俺も同じクラスだよ?」
とか、こう言うのは、友達になる初動パターンなんじゃないか?
YES!!天はまだ、俺を見離しては居なかった!!

決して今までボッチだった訳ではないが、新しい地で初めて出来そうな友達と言うのは、それなりに嬉しいものである。
しかも相手は美少女、文句なしだ。

「俺も同じだよ!えーと......俺は愚上 千明ぐじょう ちあき。好きに呼んでくれて良いぜ!前の学校では、千明って普通に呼ばれたり、ちー君とか、酷い奴は千明ちゃんとか呼んで来たけど、全部受け入れて来た俺の強靭な精神力は......」

「じゃあ......千明くんで。」

俺の話を遮って呼び名を確定させたようだ。
チラチラと俺を見ながら、恥ずかしそうに身体を揺らす美少女。
ふむ、人見知りなのだろうか?
それなら、俺が責任を持って保護せねばならんな。
人見知りの美少女、しかも女子高生ほど価値のある人種もいないだろう。
人間国宝に認定して、正式に保護すべきだ。
正直これは、俺の真面目な考えである。

「ところで、君の名前は?」

羽衣 葵はごろも あおいっていう......言います!」

ふむ、葵......。
ピンクなのにあおいとは、これいかに。
まぁ、名前と容姿が一致しない事などザラである。
俺の友達のつよし君は、スゲーガリガリだしな。

しかし、さっきからやたらと口籠るなこの子......。
人見知りと言うには、結構ハキハキしゃべって来るんだけど......。

......まぁ、いいか。

「それじゃ、葵ちゃんって呼ぶ事にするわ。よろしくね」

「よ、よろしくね......」

此方も呼び名を確定させると、葵ちゃんも少し笑顔を深める。
よし、これで良い。
少しずつだが、仲良くなっていければ良いのだ。
これからもこの調子で友達を増やしていかんとな......取り敢えず、教室行くか。

「こんな所にいても暑苦しいだけだし先に行こうぜ、どこに教室あるか分かんないけど。」

「あ、教室はこっちだ......ですよ!」

これが、俺と羽衣 葵はごろも あおいの出会いである。

この出会いが、俺の王道青春ライフにピリオドを打つ事になるとは、今の俺が知る由もないのだが......。
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