突撃!門工サバゲー部!~ウクライナを救った6人のミリオタの物語 第1章「国内大会編」~

たぬ吉R&D&P

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第1章

1-17「赤いスカートの女の子」

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「赤いスカートの女の子」
 徐々に階段を駆け下りてくるコンバットシューズの足音が近づいてくる。零の心拍が高まり、呼吸が荒くなる。(落ち着くんだべ。私の役目は足止め。そう、屠龍副長が来るまでの時間稼ぎだべ。無理して、私がヒットされたら、もう防御線はない…。フルオートで弾切れにならんように…。頼むよ「しょうちゃん」!「ぐろっくちゃん」!…)

 駆け足だった足音が止まった。(階段降りきったんだ。きっと、階段の柱の向こうからこっちを覗いてるはずや。手前のトイレのドアは囮で半分開けてるから、きっと、そっちに気を取られるはずだべ。その時に背後から…)
 零はドアの隙間から、廊下を覗いた。男が中腰の姿勢で走ってくる。(あと25メートルだべ…)男はトイレのドアを「バン」と開けると空撃ちをした。

 (相手はトイレの中に気を取られてる!今が狙撃のチャンスだべ!)零は、男の背に向けA4ショーティを放った!「カタタタ」モーター音が廊下に響いた。弾着は男からかなり左にそれた。
 男は瞬時にトイレに飛び込み、姿が見えなくなった。(しくじったべ…。千載一遇のチャンスだったのに…)トイレの入り口から一瞬男のフェイスガードがのぞいた。
 
 「カタタタ」再び零のA4ショーティがうなるが弾は全て壁に当たり、ヒットしなかった。
「屠龍先輩、リネン室前のトイレで会敵中。こちらの場所は把握されました。敵はトイレの中です。階段側からは開いた状態のドアが壁になってしまってます。」
「了解、もうすぐ1階や!零ちゃん、粘ってくれ!」
「はい!」
(ここで相手の動きとして考えられるのは、「弾幕を張っての強行突破」か「持久戦・膠着戦」や。こちらの増援が来ることがわかってるだろうから「強行突破」の線が強いはず!マメに撃ち込んで足を止めなきゃ!)

 再び、ドアの隙間から「カタタタ」と威嚇射撃を入れた。撃ち終わり、顔をひっこめた瞬間、零の後ろから「すうーっ」と何かがすり抜けていった気がした。白いブラウスに赤いスカートの小さな女の子だった。(えっ?どこから?)廊下に飛び出た小さな女の子に敵の男のサブマシンガンの銃口が向き「カタタタタタタタ」という音が廊下にこだました。

 「小さい女の子に何するんだべ!」
思わず飛び出し、女の子を抱きかかえ男に背を向けてしゃがんだ。「カタタタタタ」
「痛い痛い痛い!」
(あっ、しまった!ヒットされちゃった…。あー、私のせいでチームが負けちゃった。)零は手を挙げた。
 男は、零がヒット申告をしたのを確認すると、奥の大浴場の更衣室に駆け込んだ。「パンっ!」という音が響いた。

 「あなた、大丈夫だった?」
と女の子の顔を覗き込んだ。
「お姉ちゃん、助けてくれてありがとう。」
と屈託のない笑顔を零に向けた。(ん?顔から壁が透けて見えてる?)A4ショーティを廊下に置き顔に触れようとすると、手がスーッと顔をすり抜けた。(ぎょっへー!この子、幽霊だべ!)と思った瞬間、肩に冷たい感触があった。

 恐る恐る振り返ると、愛想の良い顔立ちの中年男性が立っていた。やはり、姿は半透明で後ろの廊下が透けて見える。
「すみまへんなぁ。試合中って言うのにうちの娘庇って撃たれてしもて…。まあ、さっきの男は、あんさんとこの髭のイケメンが仕掛けていった対人地雷でヒットされましたよって、フラッグは無事でっせ!
 あー、トラップ用意してもろててよかったですわ。うちの娘のせいであんさんのチームが負けたっていうことになったら、夢見が悪いでっさかいなぁ。ってわし、死んでるから「夢」見ることはあれへんか!ってそこ笑うとこでっせ!」
と陽気に幽霊が零に話しかけた。

 そこに屠龍が駆け込んできた。零は黙って右手を挙げた。
「すまん、間に合わんかったか!」
とだけ言って、大浴場の更衣室にむかった。すぐにインカムが入った。
「疾風、今から5階に向かう。零ちゃんはやられたけど紫電の仕掛けたクレイモア(対人地雷)でフラッグは守られた。残りの敵は一人や。無理せんでええぞ。残り5分で残り人数2対1で勝ちや。威嚇射撃だけ続けとってくれ。」
「了解、予備マガジン二つあるから大丈夫やと思うわ。屠龍、上へ下へとバタバタさせて悪いな。待ってるで!」

 (あっ、紫電先輩の秘密兵器ってクレイモアのことだったんだべな。あー、私のせいで負けたかと思って心配したべ…。まあ、それはともかく、このおじさんと女の子はいったいどうすればいいんだべ?)


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