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第1章
1-41「救出」
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「救出」
「えっ、零ちゃんなんや?大きい声出して。」
と言った時には遅かった。汗ばんだ疾風の手のひらはマイナス30度に冷やされたステンレスのドアノブと完全に一体化してしまっていた。
「おっ?な、なんや?手、手が離れへん!えっ、これって、この間肉屋のおっちゃんが言ってた…。」
一気に疾風の顔が青ざめた。手をぶんぶんと振ろうとするが、手のひらから5本の指先までびったりとドアノブに張り付いて離れない。「10分で凍傷にかかってしまうで」と注意していた肉屋の言葉が頭をよぎる!
零も慌てるが、どうしようもない。
「えっ、いったいどうすればいいんだべ!このままじゃ疾風部長の手がダメになってしまうべな!」
と半泣きでおろおろするばかりだ。ここはちょうど倉庫の中央。どちらの出口に向かうにしても5分はかかる。緊急の医療班を呼ぶにしても、救急車を呼ぶにしても10分以内と言うのは全く不可能だ。
疾風は努めて落ち着いた声で、零に対し言った。
「零ちゃん、とりあえず、控室に戻って大会主催者に状況を伝えてきてくれ。それまで俺はここで待つから…。」
疾風の声にも動揺が見られ、あと10分で自分の右手がダメになることを想像していることが零に伝わる。(そんな…、疾風部長の右手がもう使い物にならなくなってしまう。良くて凍傷、最悪は壊死して切断ってことに…)零が思ったところ、「ヘイヘ」が零に話しかけた。「零ちゃん、今、おしっこは出るかい?」、(へ、この一大事に「ヘイヘ」さん、何を言い出すんべか?)、「落ち着いて聞いて欲しい、私は、冬戦争の時に、凍死や凍傷で手足を無くした兵士をたくさん知っている。フィンランドでもマイナス40度の世界で皮膚が金属とくっついてしまい、短時間で壊死し、切断するしかなかった事例を見てきた。」、(えー、疾風部長の腕を落とすしかないんだべか?なんとか、きれいにはがす方法はないんだべか?うえーん…)、「零ちゃん、一つだけ方法があるんだ。ただ、私や「飛燕」さんは幽霊だからそれはできない。物理的に疾風君も不可能だ。いま、疾風君の右手を助けられるのは零ちゃんだけなんだよ!」、(ぐすん、ぐすん、わ、わかったべ、私、何をすればいいんだべ?)、「もう一回聞くよ。零ちゃん、今おしっこは出るかい?」、(ヘイヘさん、この状況でセクハラはやめてけろ!ふざけてる場合でもないべ!)零は真っ赤になって心の中で怒った。
「飛燕」が手をポンと叩き、「ひらめいた」と言う顔をして「ヘイヘ」と零に言った。
「あー、冷凍癒着をはがすには、体温に近い温度にして表面をゆっくり融かすって奴やな!ゴールデ〇カムイで不死身の杉〇の服の金属ボタンにアシ〇パちゃんの瞼が吹雪の中でくっついてしもて、白〇がおしっこかけて無事に剥がせたっちゅうやっちゃな!」
「飛燕」の横で「ヘイヘ」が黙って頷いた。(えっ、わ、私が疾風部長の右手におしっこをかけるんだべか?うーん、ダメダメダメ!15歳の乙女としてそんなことはできないべ。恥ずかしさで私が死んでしまうべ!)、「零ちゃん、もう癒着して3分が経っている。猶予はあと7分だ。いかなる手を取っても7分でこの状況を打破する手はない!零ちゃんの羞恥心と疾風君の右手とどっちが大事かよく考えるんだ。人の尿の温度は37度から38度。零下30度の金属物との癒着をはがすに十分な熱量がある液体はこの場では零ちゃんのおしっこしかないんだ!どうする?疾風君の右手をあきらめるのか?」
零は、疾風の顔を見て一瞬のうちに覚悟を決めた。
「疾風部長!私が疾風部長の手を守ります。その代わり、一つだけ約束してくれるべか?」
「ん、なんや?この手を剥がせる秘策があるんか?それが可能やったらなんでも言うこと聞くで!」
(うーん、覚悟を決めるんだべ!今、部長の手を守れるのは私しかいなんだから、恥ずかしがってる場合じゃないべ!よし!)覚悟を決め、零は疾風に言った。
「部長、私が目を閉じてけろって言ってから、開けてええべよっていうまで絶対に目を開けないでいてもらえるべか?」
「ん?ようわからんけど、それで剥がせるんやったらええよ。零ちゃんに俺の右手は預けるわ!仮に失敗しても、零ちゃんを恨んだりせえへんから思いっきりやってくれ!」
(うにゃにゃ、「思いっきり」って言われても…、でももうやるしかないんだべ!)
「じゃあ、今から、私が「目を開けてええべよ」っていうまで目を閉じててくんろ。絶対目を開けたらダメだべよ!」
疾風は黙って目を閉じた。
「えっ、零ちゃんなんや?大きい声出して。」
と言った時には遅かった。汗ばんだ疾風の手のひらはマイナス30度に冷やされたステンレスのドアノブと完全に一体化してしまっていた。
「おっ?な、なんや?手、手が離れへん!えっ、これって、この間肉屋のおっちゃんが言ってた…。」
一気に疾風の顔が青ざめた。手をぶんぶんと振ろうとするが、手のひらから5本の指先までびったりとドアノブに張り付いて離れない。「10分で凍傷にかかってしまうで」と注意していた肉屋の言葉が頭をよぎる!
零も慌てるが、どうしようもない。
「えっ、いったいどうすればいいんだべ!このままじゃ疾風部長の手がダメになってしまうべな!」
と半泣きでおろおろするばかりだ。ここはちょうど倉庫の中央。どちらの出口に向かうにしても5分はかかる。緊急の医療班を呼ぶにしても、救急車を呼ぶにしても10分以内と言うのは全く不可能だ。
疾風は努めて落ち着いた声で、零に対し言った。
「零ちゃん、とりあえず、控室に戻って大会主催者に状況を伝えてきてくれ。それまで俺はここで待つから…。」
疾風の声にも動揺が見られ、あと10分で自分の右手がダメになることを想像していることが零に伝わる。(そんな…、疾風部長の右手がもう使い物にならなくなってしまう。良くて凍傷、最悪は壊死して切断ってことに…)零が思ったところ、「ヘイヘ」が零に話しかけた。「零ちゃん、今、おしっこは出るかい?」、(へ、この一大事に「ヘイヘ」さん、何を言い出すんべか?)、「落ち着いて聞いて欲しい、私は、冬戦争の時に、凍死や凍傷で手足を無くした兵士をたくさん知っている。フィンランドでもマイナス40度の世界で皮膚が金属とくっついてしまい、短時間で壊死し、切断するしかなかった事例を見てきた。」、(えー、疾風部長の腕を落とすしかないんだべか?なんとか、きれいにはがす方法はないんだべか?うえーん…)、「零ちゃん、一つだけ方法があるんだ。ただ、私や「飛燕」さんは幽霊だからそれはできない。物理的に疾風君も不可能だ。いま、疾風君の右手を助けられるのは零ちゃんだけなんだよ!」、(ぐすん、ぐすん、わ、わかったべ、私、何をすればいいんだべ?)、「もう一回聞くよ。零ちゃん、今おしっこは出るかい?」、(ヘイヘさん、この状況でセクハラはやめてけろ!ふざけてる場合でもないべ!)零は真っ赤になって心の中で怒った。
「飛燕」が手をポンと叩き、「ひらめいた」と言う顔をして「ヘイヘ」と零に言った。
「あー、冷凍癒着をはがすには、体温に近い温度にして表面をゆっくり融かすって奴やな!ゴールデ〇カムイで不死身の杉〇の服の金属ボタンにアシ〇パちゃんの瞼が吹雪の中でくっついてしもて、白〇がおしっこかけて無事に剥がせたっちゅうやっちゃな!」
「飛燕」の横で「ヘイヘ」が黙って頷いた。(えっ、わ、私が疾風部長の右手におしっこをかけるんだべか?うーん、ダメダメダメ!15歳の乙女としてそんなことはできないべ。恥ずかしさで私が死んでしまうべ!)、「零ちゃん、もう癒着して3分が経っている。猶予はあと7分だ。いかなる手を取っても7分でこの状況を打破する手はない!零ちゃんの羞恥心と疾風君の右手とどっちが大事かよく考えるんだ。人の尿の温度は37度から38度。零下30度の金属物との癒着をはがすに十分な熱量がある液体はこの場では零ちゃんのおしっこしかないんだ!どうする?疾風君の右手をあきらめるのか?」
零は、疾風の顔を見て一瞬のうちに覚悟を決めた。
「疾風部長!私が疾風部長の手を守ります。その代わり、一つだけ約束してくれるべか?」
「ん、なんや?この手を剥がせる秘策があるんか?それが可能やったらなんでも言うこと聞くで!」
(うーん、覚悟を決めるんだべ!今、部長の手を守れるのは私しかいなんだから、恥ずかしがってる場合じゃないべ!よし!)覚悟を決め、零は疾風に言った。
「部長、私が目を閉じてけろって言ってから、開けてええべよっていうまで絶対に目を開けないでいてもらえるべか?」
「ん?ようわからんけど、それで剥がせるんやったらええよ。零ちゃんに俺の右手は預けるわ!仮に失敗しても、零ちゃんを恨んだりせえへんから思いっきりやってくれ!」
(うにゃにゃ、「思いっきり」って言われても…、でももうやるしかないんだべ!)
「じゃあ、今から、私が「目を開けてええべよ」っていうまで目を閉じててくんろ。絶対目を開けたらダメだべよ!」
疾風は黙って目を閉じた。
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