突撃!門工サバゲー部!~ウクライナを救った6人のミリオタの物語 第1章「国内大会編」~

たぬ吉R&D&P

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第1章

1-47「決勝戦第1ゲーム」

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「決勝戦第1ゲーム」
 決勝戦の朝を迎えた。晴天の日曜日、会場の気温は朝9時には35度を超えた。
「あー、今日も、暑くなるべなー!」
M4ショーティを肩からかけた零は、列の先頭を切ってフィールド入り口に入場した。
すでに習志野レンジャーOBの「元公務員」チームは入場し整列を済ませていた。
 さすがに元陸上自衛隊のエリートというだけのこともあり、しぐさの一つ一つにキレを感じた。6人が交互に列を横にずれ、握手をしていく。零が、「元公務員チーム」のキャプテンの「安倍」と握手した瞬間、冷たいものを感じた。
「君、凄いメンバー連れてるね…。お手柔らかに頼むね。」
一瞬、零の顔とその背後を見て、にやりと笑った。

 「零ちゃん、今、あいつ、わしらの方も見よったで。あいつも、見えてるんとちゃうか?」、(うん、私も普通でないもんを感じたわ。京都の神社の神官っていうから、何がしらの能力を持ってるかもしれないんだべ。「飛燕」のおっちゃんが何かを感じたんやったら、気をつけなダメだべな。)零の背後にいる「舩坂弘」の様子が、明らかにいつもと違い元気がなくなっている。
 (舩坂さんどうしたんだべ?今日は、私が分隊長役なんで、舩坂さんに最初をお願いしようと思ってるんですけど、大丈夫だべか?)、「(※栃木弁で)零ちゃん、はっきりとはわからへんけど、あいつ、もしかしたら「陰陽師」かもしれへん…。もしそうやったら、わしはやばいかも…。」、(えっ、「陰陽師」って、なんだべ?)
「ピリリリリリ!5分後に第1ゲームを開始いたします。両チームの選手は所定の位置に移動してください。」
会場のスピーカーから、アナウンスがかかった。

 門工チームは円陣を組んだ。
「相手は俺たちより格上や!せやから、負けても当たり前!臆することなく戦うことで、きっとチャンスは開けるはずや!いくで!門工!レッツゴー!」
疾風の掛け声で全員が声を上げた!
(うん、今日は、みんなが私を中心に動いてくれるんや。しっかりしなきゃ!)零は両のほほを両手でぴしゃりと叩き気合を入れた。

 舩坂が不調の様子だったので、今日は、クリス・カイルが憑依し、スナイプポイントについた。A4ショーティをロングレンジ使用にセッティングし、スコープを覗き込んだ。隼は、零の近くにガードとして残り、疾風、屠龍、紫電、彗星が四方に散り、インカムとM157で連携を取りつつ、敵の動きを探った。あまり動かず、待ち伏せ作戦をとることにした。

 敵は敵陣の四方に散ったようで、後方の2人は全く見えない。前方に出てきた2名は大きな箱状のものを持ってきているのがスコープの中で見て取れた。
 先行でブッシュの中で待ち構えていた、疾風と屠龍が、ほぼフィールドの中央線の両端に何か四角い箱を設置している敵を背後からいきなりヒットさせた。
 疾風はM1891での狙撃、屠龍はM250の連射で2名をほぼ同時に仕留めた。「元公務員チーム」から初の被弾ゲーマーが出た。相手が4人になり、人数的優位になったことで、陣地を前進させ、疾風には紫電が付き、屠龍には彗星が付き、ツーマンセル体制になった。

 雑木林の中を、隼を先行で斥候とし、後ろ30メートルを零がつけて行った。
「あいててて!」
インカムに隼の声が入った。その瞬間前方50メートルで動いた二つの影を零に憑依した「クリス・カイル」は、見逃さなかった。2つの影に、短時間の連射をかけると二人の手が上がった。
「零です。隼さんがやられました。隼さんをやった2人はキル。残り、相手は2名です。私は、屠龍副長と、彗星先輩のタッグ後方につけます。しばらく待機お願いします。
 後方、30メートルについたら連絡します。」
「了解、待機する。零ちゃん、今日も調子ええな!俺ら、撒き餌にして、しっかり狙撃したってや!」
「零ちゃん、副長と待機してるで!副長とは20メートル間隔やし。左が副長で右が私な!」

 零が屠龍と彗星の後方30メートルについたとき、疾風からのインカムが入った。
「疾風や。さっき、あいつらがおいていきよった箱を確認したんや。クレイモアとかのトラップかと思ったんやけど、箱を開けたら、なんや、中身は変なお札と気持ち悪い紙で作られた人型とピラミッド型に固められた塩が乗った皿と小さい徳利や! 
 一体あいつら何のつもりなんやろか?」
(ん、「飛燕」のおっちゃん、これって、何?舩坂さんが、言うてた「陰陽師」って関係あるんだべか?)、「せやな、きっと、零ちゃんにわしらがついてるんをあの安倍いうんは、わかっとるんや!きっと、結界を張るために置いていきよったんやろ!」、(それって、やばいの?)、「せやな!、ええことは…」と「飛燕」が言葉を詰まらせると
「きゃー、痛い痛い!」
彗星の声がインカムに入ったが、「クリス・カイル」は全くの無反応だった。すぐに屠龍の声が入った。
「おっしゃ、彗星はやられたけど、一人キルした!残りは一人や!包囲戦に移るで!3トップで頂点先頭に紫電入れ。両翼は30メートル間隔で、疾風と俺で持つ。警戒を怠るな!零ちゃんは、紫電の後ろについてくれ!」
「了解」、「わかりました」
疾風と紫電からの返答があった。
「はい、紫電さんの後ろにつきます。」

 (クリスさん、さっき彗星先輩がやられた時の、敵は見えなかったんですか?)、「あぁ、すまん、さっきからどうも体の様子がおかしい。目は霞むし、頭が重い。できたら、代わってもらってもいいかな」と言い残し、すうーっと零の体から抜けて行った。「飛燕」のおっちゃんもあからさまに調子が悪そうな中、「シモ・ヘイヘ」を召還した。
 「ヘイヘ」は零の体に入り込むと、異変を感じると零に語り掛けてきたが、その直後、
「がおっ!」
という紫電の声のあと、
「よっしゃー!敵のキャプテンキルしたで!俺らの勝ちや!」
と威勢の良い疾風の声がインカムに響き、フィールドのスピーカーから「第1ゲームはスコア3対0で門工サバゲー部の勝利です。第2ゲームは40分後に開始されますので、各々のチームは所定の場所に移動お願いします。」とアナウンスされた。

 フィールドのサイドチェンジの際、零は、安倍とすれ違った。
「第1ゲームは、サービスですよ。あなたのお友達は大丈夫ですか?」
とつぶやいたのが、零の耳に残った。


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