突撃!門工サバゲー部!~ウクライナを救った6人のミリオタの物語 第2章「ウクライナ戦場編」~

たぬ吉R&D&P

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突撃!門工サバゲー部2!

2-8「逃亡計画」

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「逃亡計画」
 翌日は朝5時に起床のコールが流れた。兵舎の表からは、多種多様なエンジン音が響きだした。明らかに戦車のものとわかる大型ディーゼルエンジンから、小型の軽車両まで排気音がこだまする。6人ともベッドから這い出てきた。(あぁ、やっぱり夢じゃなく、ウクライナにいるんだべな…はぁ…。)零は憂鬱な気分が戻ってきた。

 「コンコンコン」とドアがノックされた。隼がドアを開けると
「ドーブラエウートラ(※ロシア語で「おはようございます」の意)!ミナサンヨクネラレマシタカ?チョウショクガスンダラ「ヘイキ」ノシヨウホウホウヲコウシュウシマス。ジェラーユウダーチ(※ロシア語で「がんばって」の意)!」
と昨日同様冷たい目をしたモロゾフ大尉と黒パンと瓶牛乳を持った二人の兵士が立っていた。
 隼は「スパシーバ」と答えるとパンと牛乳瓶を受け取った。
「コウシュウハハチジカラデス。マタキマス。」
と言い残し、モロゾフ大尉は踵を返した。

 「あーあ、講習だとよ。ご丁寧にありがたいことやな。」
ぶっきらぼうに言いながら、屠龍はパンを口に運んだ。ぱさぱさとした触感が口の中に広がった。
「あー、学食の焼きそばパンが懐かしいなー!「焼きそばパンしかないんかいな―!」って学食のおばちゃんに文句言ってたの、過去にさかのぼって取り消したいな…。」
疾風もパンを口に放り込んだ。
 (確かにおいしくない…。でも、食べられる間に食べておかないと…。)零は、牛乳でパンを流し込んだ。

 午前8時ピッタリに、モロゾフ大尉が呼びに来た。
「ミナサンハ「ヤーパン」ヲダイヒョウスルヘイシデスカラ、キソハハブイテアサルトトRPGトシュリュウダンノツカイカタダケセツメイシマス。シツモンハアトデマトメテウケマス。」
と言い、体育館のような大きめの建物に連れて行かれた。6人掛けのテーブルがいくつか並び、他国からの傭兵、ロシア本国からの新人兵らしき約30名がスクリーンに映し出される映像とテーブルに置かれた実機を元に安全装置の外し方、照準のつけ方、弾の込め方、使用上の注意点が説明された。傭兵チームのテーブルには、各々通訳が付いていた。
 門工サバゲー部のテーブルには、モロゾフ大尉がつきそっていたため、余計な発言や相談事は一切できなかった。

 約2時間で講習は終わり、旧式アサルトライフルの6組のAK-47が6組と3組のRPG-7が手渡された。
 モロゾフ大尉から
「11ジニチュウショクヲトッタラゼンセンニイキマスヨ。ワタシハドウコウデキマセンノデ「シュン・ナカジマ」をブンタイチョウケンツウヤクトシテ「ゴチョウ(伍長)」ニニンメイシマス。ショウタイチョウ、チュウタイトウノイウコトヲシッカリトキクヨウニ。デハ300キル、ジェラーユウダーチ!」
と言われ、一度兵舎に戻った。

 前線までは中隊規模で移動した。門工サバゲー部は、中型トラックでロシアの民間軍事会社ワグネルの6人と同乗だった。
「こいつらが、たぶん俺たちの「お目付け役」や。非公式の兵やけど、実績は積みまくってるやつらやから気は許すなよ。俺がロシア語わかってるのを知らん見たいやから、好き勝手言いよる。彗星と零ちゃんは絶対俺らから離れんなよ。」
隼が小声でみんなに伝えた。最後の言葉に彗星が異常に反応した。
「私と零ちゃん、犯されちゃうってこと?」
不意の彗星の一言で零にも緊張が伝播した。(えっ、味方の兵隊じゃないんだべか?そんなことがあり得るずらか?)と零が不安な顔をすると屠龍が
「零ちゃん、心配すんな。どんなことがあっても俺が守ったるからな。」
と言ってくれたが、その笑顔は引きつっていた。紫電は彗星の肩を抱いてやっている。

 前線に着くと先任の中尉が前線視察の指示を隼に出した。双眼鏡とスマホを渡された。
「はー、これが噂の軍用スマホという名のチャイナ製汎用スマホちゅう奴やな。マップと無線はこれを使えとさ。」
隼があきれながら、スマホの使用方法を確認した。ロシア語が並ぶアイコンは隼にしかわからないので、皆は周辺の装備を確認した。
 待機所の規模からすると3個中隊。T-72は4両、装甲車両は8両、軽装甲車両は8両。約100人ほどの集まりのようだ。
 その中の1台に隼は注目した。他の車両にない長いアンテナが複数出た8輪装甲車両だった。隼は紫電にその車両を目立たないように指で指し示すと紫電は小さく頷いた。

 ロシア人少尉の小隊長とワグネルの6人に引きつれられ、13人の小隊でGAZ-2330の派生モデルで2ドアのピックアップトラック型のGAZ-233002の荷台に乗せられた。
 運転席にはワグネルの兵隊、助手席にはロシア軍将校が乗り込み、前線基地を出発した。半分廃墟と化したマリウポリの街をピックアップトラックは走った。時折、上空を爆撃機型のスホーイ34が飛んでいくのが見えた。
 破壊されたビルと未回収の民間人の死体。無残にさらされているウクライナ兵と思われる軍人の遺体がいやがおうにも視界に入ってくる。硝煙と腐臭の混じった空気に零は胸が悪くなった。(本物の戦場ってこんなに悲惨なんだべ。テレビでは伝わらない悲惨さがここにはあるずらよ…。私たちも、こうなってしまうんだべか…。)彗星は真っ青な顔をして、荷台外に嘔吐した。

 約5キロほど走っただろうか、町のはずれにある中規模の工場に着いた。先に3台のT-72が停まっていた。この工場手前までウクライナ軍が迫ってきているとの情報があるとのことだった。小隊長の指示で、門工サバゲー部チームが、斥候に出された。
 6人がGAZを降りて、工場の建屋に沿って500メートルほど進んだときに、頭上に前方から近づいてくる飛翔音が数発響いた。
「ウクライナ軍の155ミリや!伏せろ!」
疾風の声に5人がその場に伏せた。疾風は、零の上に覆い被さった。
「キャー、死にたくないけろー!」
「零ちゃん、大丈夫や!音は通過した。」
と頭の後ろで疾風の声が聞こえたかと思うと、つい今しがた来た方向から6回の破裂音と巨大な爆発音が響いた。ディーゼルエンジン音が聞こえたかと思うとその音源は離れていった。隼が無線代わりのスマホを鳴らすが何の反応もない。続いて、頭上を数基のドローンが飛んで行った。
 
 「ウクライナ軍の攻撃なら、この工場を狙うことはあれへん。今のドローンが偵察と弾着確認用なら飛び去れば、ここにある軍装排除の画像が言ってるやろう!さっきのディーゼル音はGAZのもんや。ドローンも元の中隊基地の方に飛んで行ったみたいや。
 155ミリやったら、元の基地にもすぐに砲撃が向くはずや。それを確認したら、すぐにさっきの駐車場に戻るで!」
疾風が、冷静に分析して皆に声をかけた。確かに、6発の破裂音の後、飛翔音も爆発音もない。ただ、火薬と油の匂いが周辺に漂っている。
「疾風部長、ちょっとのいてもらえませんか?」
零がやっとのことで声を出した。
「あぁ、すまんすまん。零ちゃん、大丈夫やったか?」

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