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遊撃隊編

遭遇 08

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 ラフレシア型から飛び出した巨大な棘がこちらへ向かってくる。さすがにあれは今のEXT イクストの武装で何とか出来る物では無い。損傷したEXT イクストを歩かせていては間に合わない。

「損傷したEXT イクストのコックピットブロック以外をパージしろ、アーサーが二人を運ぶ方が早い」

『なっ、それは……そうだな、二人ともやってくれ』

『わ、わかった』

『よろしく頼む』

 割と乱暴な方法だったがアーサーの決断も早かった。2機のヴォルトナイトの胸部が開くと力を失ったように跪いた。アーサーは二つのコックピットブロックだけをキャッチすると全力で走り出した。

 俺はのやる事は変わらず向かって来る敵を攻撃する。コールメッセージで既に艦内待避の命令は届いている。しかも格納庫に入ったら念を押して更に輸送戦艦プルート内に向かえとは……ウェヌスⅣに万一があればと言う事か。
 ……とはいえヴァルシアンがウジャウジャいる宙域に輸送戦艦だけで放り出されてもあまり意味が無いな。

 ウェヌスⅣは向かって来る棘型MOTHERへ艦砲射撃を行いながら、全方位に装備されているホーミングレーザーで艦に群がるヴァルシアンを攻撃している。
 射程や威力の問題でMOTHERを攻撃するには適さないが、小型ヴァルシアンを殲滅する事に特化した兵器だ。敵を追尾するために誤射も少ないため撤退時に使われる兵器となっている。

 本作戦もレーザーが設置数が少ない場所にEXT イクストが配置されていたのわけだが、今回のように格納庫から遠い場所もあるため苦労する事がある。

「駄目だな、あの棘型イクシアフィールド持ちだ……主砲の攻撃が分散されてるぜ」

『あんなのゲームに出てこなかったぞ……理不尽じゃ無いか』

 敵に言ってくれ……ともあれ文句言いたくなるのはわかる。格納庫までだいぶ近づいたが、設定されている出っ張ったレーザー砲のレンズが俺達に迂回を強要してくる。敵を倒してくれるナイスな味方でありながら目的地到着を邪魔するイケずな奴だ。

 苦労しながら移動しているとようやく目的地が見えてきた。緊急発進するためのカタパルトが伸びている先に開いた扉。その傍らに10機ほどのEXT イクストが近寄るヴァルシアンに攻撃していた。

 既に周りには味方はいない……俺達が最後尾らしい。

「もうすぐだ、俺達が艦内に入る方が早い……俺達の勝ちだ」

『そんな励ましの言葉など要らない。僕が助けているんだから失敗などない』

「そうかいそうかい、心強い事で……」

 するとコールメッセージが入った。

『よくやったお前達、急いで艦内に……指定のプルートに搭乗しろ』

 どうやら扉前に陣取っている味方からのようだ。俺達はそのままスピードを落とさずに艦内滑り込んだ。外に陣取っていたEXT イクストも続いて来ると、左右から迫り出してきた外壁扉が閉まる。

「おっと、ここがゴールじゃないぜ……プルートへ向かおう」

『言われなくともわかっている』

 いちいち反論してくるやっちゃな……まぁ、アーサーだから仕方がないか。EXT イクストと護衛戦艦の格納庫は別の場所なので俺達はEXT イクストのままエレベータに乗って、指定の護衛戦艦内に到着した。アーサーは隣のプルートが指定の場所だったようだ。



『本艦は間もなくゲートに入り首都惑星へ向かいます』

 俺は怖い物見たさで艦外の様子を確認すると棘型MOTHERは直ぐ後ろまで迫っていた。だがこの距離ならゲートを潜る方が早いだろう……それを確かめて俺はようやく一息つく事が出来た。

 EXT イクスト胸部……コックピットハッチに何かが取り付いたと表示がされた。ハッチを開けると何かが飛び込んでくる……アイリか?

「残念、ボクでした~♪」

「何も言ってないからな……っていうか何でここにいるんだ?」

 飛び込んできたのはフレーナだった。勢いに任せて抱きついてくる……ってやめろ!!

「うん、今回の作戦で配置されたエリアがここから遠くて、さっき到着したばかりだったんだ。そしたらエイジのEXT イクストが入ってきたから思わず来ちゃった♪」

 来ちゃったって……とにかく俺達もみんなの元に行かないと。その時大きく船体が揺れた。

「わっわっ」

「なんだ!?」

 衝撃でコックピットのハッチが閉じると……人がいない時に強い衝撃を受けると防衛のためか勝手に閉じる仕組みになっている……艦内モニターを確認する。

 !!?

 どういう事だ!? 艦が攻撃を受けた!?戦艦の後部エリアが破損したという情報が表示される。フレーナがぎゅっと抱きついてくる力を強める。いくつかコールメッセージが入ってくるが確認するゆとりがない。

『緊急事態、緊急事態。当艦はゲートイン後、それを追ってきた敵MOTHERに後方から追突されました』

 !? なんだと!?

「おかしいよ! 敵より先にゲートに入ったって言ってたよね?」

「あいつらは単体で……ゲートを使わずにワープ出来る。追ってきたんだ、この艦を……」

「そんな!? これからどうなっちゃうの!?」

『敵MOTHERからヴァルシアンが艦内に侵入しました。速やかに迎撃に当たってください』

 その答えを教えるかのように艦内メッセージが届いた。やばい、これはどうなるんだ? モニターの情報から敵のMOTHERはこの艦の後部に突き刺さっている状態のようだ。そして艦内に突き刺さっている部分から小型のヴァルシアンが侵入しているという事だろう。

 次々と周りのEXT イクストが所定の位置に向かっている。俺には未だに待機命令しか出ていない……どういう事だ?

「フレーナ、何か命令は来ているか? 俺には何も来ていないんだが……」

「ううん、ボクも待機命令のままだよ」

 艦の後部に向かうEXT イクストに搭乗していない人間を見ると俺達の同期では無いようだ……まさか未だに俺達は新人扱いで待機していろという事なのか?

『お前ら慌てずに落ち着いて話を聞け……隊長のイェーガーだ。この艦はくそったれなヴァルシアンに取り付かれた。こいつらを首都惑星のある星系にご招待してやる訳にはいかない。本艦はこれよりゲートアウトする……つまり漂流ドリフトする可能性がある』

 漂流ドリフト……ゲートを潜ると目的地のゲートまで数時間でワープ出来る。だが、艦の損傷などでワープを続行する事が危険と判断された時のために中断ゲートアウトする事がある。
 ただ、未だにイクシアエネルギーを使ったゲートのワープは不明な所が多く、ゲートアウトすると目的地の途中に出る訳では無く全く関係ない場所に出る事が多い。
 これが人類銀河勢力圏内ならともかく圏外に出ると救援も不可能になる……これが漂流ドリフトだ。

 過去にもこういったゲートアウトによる事故は数十回ほど起こっているのだが、地上の交通網よりも事故率は低いため不安視はされていなかった。ちなみに今回の勢力圏外に出現したヴァルシアンはこの現象で勢力圏外に現れたのではと思われているようだ。

「もしも、圏外に出たらどうなっちゃうの?」

「それ以前にヴァルシアンをどうにか出来ないとアウトだ……まずは目先のピンチを切り抜けないとな」

 不安はもっともだが危険はもっと身近にある……何とか生き延びないと。
 ……というかフレーナさん、さっきから蟹挟みのように抱きついた姿勢のままで俺の身近にもセンシティブな危険が迫っているんだが……。

『艦内の白兵戦要員はそのままヴァルシアンを押し返せ。EXT イクスト部隊は外からくそったれMOTHERを攻撃。残りのプルートは全て艦から発進だ……これは命令だ』

 プルートは輸送戦艦と言うだけあって攻撃能力も有していて中型ヴァルシアンまでなら有効だろう……とは言えその攻撃力はヴィーナス級には遠く及ばない為、MOTHERを相手するのには役不足だ。俺達に逃げろという事なのだろうか?

『ただいまより本艦はゲートアウトします』

 艦内モニターでゲートアウトした事がわかった。そして、プルートもウェヌスⅣから発艦したようだ……そしてその途端にそれは起こった。

『EMERGENCY イクシアエネルギー異常増大』

 今までコックピット内にいれば感じなかった揺れを感じる。イクシア異常増大? 何が起きているんだ?

『イクシアエネルギー異常増大の為、イクシアを使用する機器の制御が困難……繰り返しますイクシア……』

 どういう事だ? イクシアのエネルギーが多すぎて、イクシアを使う物が正常に動かないという事か? 今のご時世イクシアを使わない物の方が珍しい……つまり機械類の制御が出来ないって事か?

 5分ほど異常な揺れが起こり艦内の照明も付いたり消えたりを繰り返し嫌でも不安が募ってくる。

『……前達……まから……ェスⅣのエンジンを……せて、MOTHERごと……する……いでこ……れろ』

「え? なに? よく聞こえないよ?」

「通信状況が悪いな……ボリュームを絞ってみるか」

『今から本艦をMOTHERごと爆破する……急いで離れろ』



 おいおいマジかよ……やばいぞ……ってか最近似たような事考えなかったか?




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エクスプローラーズ!の時もそうでしたけれど1章を10万字で終わらせようとしても上手くまとまりませんね。
もっとも今回はあまりこだわらないようにしようと決めていたので良いのですが……。


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それを励みにより一層、頑張ります。
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