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第六章 お茶会で再開!?

24本目

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 『お茶会で再会!』作戦は失敗に終わったけど、アーリャブランドの売り上げは着々と伸びていった。



 お茶会で多くの貴族の方々に顔を売ったせいか、木製食器の注文もかなりの量が入ってきている……何事も無駄な事は無いんだね。



 お父さんはいらないって言っていたけど、お店のスペースを使わせて貰っている手数料を払っても、わたしの資産は少なくとも駆け出し商人では考えられないくらいの物になっているみたい……今は手元にお金を持つの怖いから預かって貰っているんだよね。



 そんな時にお父さんからとある提案をされた。




「アーリャ、本気で店を継ぐ気は無いか?」



「ええっ!? 突然どうしたの?」



 跡継ぎはお兄ちゃん達って決まっているんじゃ無かったの? 急に何でそんな話をしてくるんだろう?



「アーリャのジョブの凄さはもちろんなんだけど、その年齢とは思えないような行動力や、チャンスを逃さない目利きに判断力は商人として大切な才能だ……もしもアーリャがその気なら二人に話をするつもりだ」



「待ってお父さん!! 駄目……それは駄目だよ」



「どうしてだい?」



「わたしのやっている事は商人としてまっとうな事じゃ無いの……だって、わたしがいなくなったら全ておしまいになっちゃうから!!」



 だって、わたしは商人になりたくてお金を稼いでいるんじゃ無いから。



 もしも、ちゃんと商人になって自分のお店を持って大きくして後生に残すのなら、こんなジョブの能力に頼りきったやり方なんかじゃ駄目なんだよ。



「わたしは、自分の目的を叶えるために、わたしの代だけの、他の人には何にも残らないやり方で商売をしているの……こんな娘を跡取りなんかにしちゃ駄目だよ」



「確かに、アーリャは何だか生き急いでいるようには感じていた。

 そうだね、アーリャがしっかりと考えての返事なんだね? わかった、この話は聞かなかった事にしてくれ……でも、困った事があったらちゃんと相談するんだよ」



「うん、ありがとうお父さん」



 お父さんがわたしの事を考えてくれているのが伝わってきて、心があたたかくなった。



「あ、それはともかく新しい商品を見て」



「今度は何だろうね……ん? これは?」



「そこのくぼみを押すと開くんだよ」



「これか……こ、これは!? 鏡?」



 先日、大きな鏡が従業員の不注意で割れてしまって売り物にならなくなってしまったのを、わたしが何とか再利用出来るように考えるって事で預かってきてたの。

 ちょうど良い手のひらサイズの鏡を四角、丸などの形に加工して貰った物に木を使ったコンパクトにしてみたんだ。



「これは……木とは思えない外見の高級感はもちろんだけど、一番凄いのは発想だよ!!

 鏡と言えば上流階級の人が服をチェックする姿見……中流階級の人なら顔を見れるサイズの置き鏡や手鏡があった。

 でもこれは携帯出来る上に蓋を閉められる事によって割れにくいように工夫してる」



 あれ? 何だか予想外に驚かれているよ……壊れた鏡を再利用してよくやった~くらいに褒められるかなぁって思ってただけなんだけど。



「これは花をあしらった女性用のデザインだけど、男性向けのデザインで作れば性別関係なく売れるだろう……私だって商談前に軽く身だしなみを確認出来るのは助かる……アーリャ、これはどんどん作っても良いよ」



「わかった! 再利用出来そうな鏡を全部使っちゃうね」



「よし、私も置き鏡に使えないようなサイズの物を安く仕入れてこよう」



 喜んでいたと父さんが、ふと何かを考える顔をすると……



「……アーリャ、やっぱり店を継がないか?」



 ……なんてまた言いだしてきた。



「だめです、継ぎません!!」



「……そっか」



 本当に申し訳ないけど、もしかしたらこの先お店に迷惑が掛かるかも知れないし、ある程度の資金が貯まったら独り立ちして王族と関わる身分まで上り詰めないといけないの!!





 それまでノンストップでわたしは走り続けるつもりだよ!!
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