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第十三章 対決
62本目
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「まーくん!!」
「お嬢!! 危ないですよ!!」
マリナの引き留める声も聞かずにわたしは走り続ける。ジョブの力……地面から飛び出す根っこ達……で横倒しになっている馬車をそっと起き上がらせると扉に手をかける。
「堅い、開かない! どうして!!」
飛ばされた拍子に扉が歪んでしまったようだ。扉の枠組みは金属だけど、扉自体は木で出来ている? そのまま扉に手を当てると【加工】で木を老化させると、みるみるうちに扉は朽ちて崩れていった。
急いで金属の枠組みだけになった扉を潜って中に入ると、馬車の床に一人の男の子が倒れている。綺麗に輝く金髪の頭には変な輪っか……サークレットっていうんだっけ? ……が被せられていて、そのこめかみから血が流れている。
「まーくん!! しっかりして!! 死んじゃやだ!!」
わたしは必死にまーくんへ呼びかける……頭を打っているかも知れないから身体を揺すったら駄目だなんて変に冷静な考えがある……何度も呼びかけるけれど、まーくんは目を覚まさない。
「アーリャ、僕に任せて下さい」
いつの間に来ていたケニーがわたしをそっと退けてまーくんの脇にしゃがむと手をかざして回復魔法を使い始める。その光に照らされたまーくんの傷は癒やされていってこめかみの血を残して消えていった。
「ケニー、まーくんは大丈夫なの!?」
「傷は僕が完璧に治しました、急いで王都に戻りましょう」
「うん、わかった」
ケニーに諭されたわたしは素直に引き下がる。馬車の外に待機していたオーレスさんにまーくんを任せて自分達の馬車へ向かっていった。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
帰りの馬車、席にまーくんを寝かせ、わたしは向かいの席には座らずに膝を着いて付き添っている。
ドランはオーレスさんと一緒に御者の席に座り、ケニーはいつでもまーくんの怪我に対応出来るよう一緒に中にいる。
マリナに座るように言われているけれど、わたしはまーくんから離れたくは無かった。そんなわたしのおかしな様子に二人とも何も言わずに黙っている。
それはそうだよね、会った事も無いはずの第二王子様にまるで大切な恋人へ対するよう接しているんだ。
でも、おかしいとわかっていても冷静に振る舞う事なんて出来ないよ……だって、やっとまーくんに……だいすきな人に会えたのに、こんな怪我をして、目を覚まさなくって……
「どんな事情があるかわかりません、いつかアーリャが話してくれるのを待っています……今はこれだけはさせて下さい」
ケニーがわたしに魔法を使うと着いている膝の痛みが引いていった。そうだった、揺れている馬車に膝立ちして痛かったんだ。でもそんな事も気にならないほどまーくんの事ばかり考えていて、でも二人とも何も聞かないで見守ってくれて……。
「ありがとうケニー。マリナも心配かけてごめんなさい」
「いいんです、でも王都までずっとその姿勢では身体が持ちません。どうかお願いですから休んで下さい」
少しだけ冷静になったわたしは言いつけを聞いてマリナの隣に座る事にした。少しでもまーくんのそばにいたいけれど仕方がないね。
はっ!? そうだよ、わたしがまーくんに膝枕してあげればそばにいれる上に心配される事も無かったよね? でもいまさらやりにくいよね~タイミングを逃しちゃった。
でも、初対面の筈の王子様に膝枕をするのはそれはそれで二人におかしいと思われちゃうからこれで良かったんだよ……今はそう納得しておこう。まーくんいつか膝枕させてね。
「お嬢が泣きそうな顔をしていたと思ったら、だらしなく緩んだ顔をしています」
「アーリャの百面相はいつもの事です……平常に戻ったと思って安心しておきましょう」
……わたしの妄想も一緒に乗せて馬車は王都に向かい走り続けた。
「お嬢!! 危ないですよ!!」
マリナの引き留める声も聞かずにわたしは走り続ける。ジョブの力……地面から飛び出す根っこ達……で横倒しになっている馬車をそっと起き上がらせると扉に手をかける。
「堅い、開かない! どうして!!」
飛ばされた拍子に扉が歪んでしまったようだ。扉の枠組みは金属だけど、扉自体は木で出来ている? そのまま扉に手を当てると【加工】で木を老化させると、みるみるうちに扉は朽ちて崩れていった。
急いで金属の枠組みだけになった扉を潜って中に入ると、馬車の床に一人の男の子が倒れている。綺麗に輝く金髪の頭には変な輪っか……サークレットっていうんだっけ? ……が被せられていて、そのこめかみから血が流れている。
「まーくん!! しっかりして!! 死んじゃやだ!!」
わたしは必死にまーくんへ呼びかける……頭を打っているかも知れないから身体を揺すったら駄目だなんて変に冷静な考えがある……何度も呼びかけるけれど、まーくんは目を覚まさない。
「アーリャ、僕に任せて下さい」
いつの間に来ていたケニーがわたしをそっと退けてまーくんの脇にしゃがむと手をかざして回復魔法を使い始める。その光に照らされたまーくんの傷は癒やされていってこめかみの血を残して消えていった。
「ケニー、まーくんは大丈夫なの!?」
「傷は僕が完璧に治しました、急いで王都に戻りましょう」
「うん、わかった」
ケニーに諭されたわたしは素直に引き下がる。馬車の外に待機していたオーレスさんにまーくんを任せて自分達の馬車へ向かっていった。
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帰りの馬車、席にまーくんを寝かせ、わたしは向かいの席には座らずに膝を着いて付き添っている。
ドランはオーレスさんと一緒に御者の席に座り、ケニーはいつでもまーくんの怪我に対応出来るよう一緒に中にいる。
マリナに座るように言われているけれど、わたしはまーくんから離れたくは無かった。そんなわたしのおかしな様子に二人とも何も言わずに黙っている。
それはそうだよね、会った事も無いはずの第二王子様にまるで大切な恋人へ対するよう接しているんだ。
でも、おかしいとわかっていても冷静に振る舞う事なんて出来ないよ……だって、やっとまーくんに……だいすきな人に会えたのに、こんな怪我をして、目を覚まさなくって……
「どんな事情があるかわかりません、いつかアーリャが話してくれるのを待っています……今はこれだけはさせて下さい」
ケニーがわたしに魔法を使うと着いている膝の痛みが引いていった。そうだった、揺れている馬車に膝立ちして痛かったんだ。でもそんな事も気にならないほどまーくんの事ばかり考えていて、でも二人とも何も聞かないで見守ってくれて……。
「ありがとうケニー。マリナも心配かけてごめんなさい」
「いいんです、でも王都までずっとその姿勢では身体が持ちません。どうかお願いですから休んで下さい」
少しだけ冷静になったわたしは言いつけを聞いてマリナの隣に座る事にした。少しでもまーくんのそばにいたいけれど仕方がないね。
はっ!? そうだよ、わたしがまーくんに膝枕してあげればそばにいれる上に心配される事も無かったよね? でもいまさらやりにくいよね~タイミングを逃しちゃった。
でも、初対面の筈の王子様に膝枕をするのはそれはそれで二人におかしいと思われちゃうからこれで良かったんだよ……今はそう納得しておこう。まーくんいつか膝枕させてね。
「お嬢が泣きそうな顔をしていたと思ったら、だらしなく緩んだ顔をしています」
「アーリャの百面相はいつもの事です……平常に戻ったと思って安心しておきましょう」
……わたしの妄想も一緒に乗せて馬車は王都に向かい走り続けた。
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