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第十六章 悪役令嬢の誕生!?
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ここはアルヴァリス王立学習院。
下は豪商と呼ばれる力ある商人、中は国を守る家系に生まれた騎士、上は由緒正しい貴族の子息子女が通う伝統ある学習院。上流階級の人間がより高みを目指すために……または人脈を築くための場として長い歴史を誇っている。
しかし例外もあった……特待生と呼ばれる特別身分や財力が無い人間でも市井から見いだされた才能ある若者もまたこの学習院で学ぶのだ。
その特待生の一人が彼女……キャレルだ。美しいと言うほどでは無いものの年相応な可憐な容姿を持ち、庶民のクラス全員と友好的な立場に身を置いている。
「今日の授業は終わったわ……これからどうしよう?」
独り言を呟くキャレル……その視線の先にある人物が目に映った。彼女が会いたいと思っていたひと、それは気品を感じる容姿に優しく微笑む美少年……その人物は周りにはいかにも上流階級ですとばかりに上等な服に身を包んだ貴族令嬢達が取り巻きとして囲んでいる。何を隠そう彼はこの国の第二王子様だ。その立場と容姿を貴族令嬢達が放っておく筈が無い。
「マクシス様……ご機嫌麗しゅうございます」
「ん、君はキャレルか。この学習院では身分は関係ないから畏まる必要は無いよ」
突然庶民の娘の乱入に眉をしかめる貴族令嬢達、しかしマクシスが彼女を歓迎しているようで何も言えないようだ。
「はっ、ごめんなさい……マクシス様は授業が終わったのですか?」
「いや、これから貴族史の授業があるんだ」
「そうなのですか……」
キャレルがマクシスの目をジッと見つめると、マクシスもその目をジッと見つめ返す。
「キャレル……一緒に授業を受けるかい?」
「え? いいんですか!?」
「マクシス様、こんな庶民の娘を誘うなんて!!」
「いけません、マクシス様があらぬ誤解を生んでしまいますわ!!」
今まで耐えていたが、とうとう耐えきれなくなり堰を切ったように取り巻きの令嬢達が抗議する。
「先程も言ったけれどこの学習院では身分は関係ないよ……俺が彼女を誘いたいから誘ったんだ。誤解も何も無いよ」
「「「そんな!?」」」
令嬢達はマクシスの言葉にショックを受ける……まさか貴族令嬢である自分達よりも庶民の娘の言い分を受け入れるなんてと。
「授業の時間にはまだゆとりはあるけど早めに行こう」
「は、はい」
キャレルはショックを受けている令嬢たちをみて遠慮がちにマクシスの隣に並ぶ。そのまま二人は教室へ向かうかと思われたその時……
「お待ちください!!」
大きめな静止の声にその場にいる全員が振り返ると、そこには緑髪の美しい少女が立っている……その衣服も派手では無いが少女の容姿に釣り合うような見る者が見ればわかる高級な物だ。
「アーリャ?」
「……っっ!?」
「はい、マクシス様……アーリャ・アルダークです」
セカンドネームがある彼女は貴族だ。正確には成人後に男爵となる予定なのだが、成人までの間にこの学習院で学ぶよう王命を受けているのだ。
「マクシス様がこれから受ける貴族史の授業は……キャレルさんが受ける事は出来ません」
「何を言っているんだ、そんな事は……」
「私達はこの学習院に必要な事を学ぶために在籍していります。各々が自分の学ぶべき事に合わせて学部が異なっています。商人なら経済学部……キャレルさんはこちらです。貴族なら貴族学部……わたし達はこちらですね」
「それはそうだが……」
「今回の授業の貴族史はキャレルさんの経済学部の学科ではありません。したがって異なる学部の授業を受けるのは規則違反となります」
「わ、私は違う各部の授業でも受けたいです。ここは学習院、生徒の学びたいという願いを否定したりしないはず」
「駄目です!!」
キャレルの切なる願いを冷徹に一蹴するアーリャ。
「アーリャ、いったい君に何の権利があってそんな事を……」
「わたしでは無くこの学習院のルールと、真摯に学びたいと考えている全生徒を代弁して言っています」
「え?」
「俗なお話になりますがこの学習院は入学金があります。そして経済学部と貴族学部のその金額の差は大きいです」
「そんな、お金の話なんて……」
「ではこの学習院の入学金がいくらなのか皆様はご存じですか?」
「……」
「わたくしはしりません」「わたくしも……」「そういえばお金を触った事がありませんわ」
無理も無いだろう、親の保護下にいた子供がそんな事を知るよしも無い。それはファンタジーなこの世界であろうと文明の進んだ地球に住んでいる子供であろうと大半が学校の入学金など知る事は殆ど無いだろう。
王子であるマクシスはもちろん貴族令嬢たち、そして特待生のキャレルも知らなかった……皆、アーリャの言葉に反論する事が出来ない。
「皆様のご両親はわたし達を学ばせるために決して少なくは無い金額を学習院に納めています。ちなみにわたしは家の当主ですから自分で払っているので知っています」
アーリャはその場にいる皆が自分の言葉に耳を傾けている事を確認すると話を続ける。
「キャレルさんの……自分の学部以外の授業を受けたい気持ちは素晴らしいです。特に女性の身でありながら自分を高めようとする姿勢は共感を覚えます」
「そ、それじゃあ……」
「ですが、それとこれとは話は別です」
「!?」
アーリャはキャレルを持ち上げつつも即否定した。
「もしも他の経済学部の方も同じように思っていたら……学びたいと思っても経済的な理由で授業を受けられなかったら。そんな人を押しのけてでもキャレルさんは自分一人だけでも学びたいですか? ルールを無視して、自分の学びたい気持ちを優先して満足ですか?」
「そんな言い方っっ」
「ならば今回に限り他の希望者を募って……」
「いけませんマクシス様……一度でも特例を作れば不公平が生じます。前回は良かったのになんで今回は……などと今後も言われ続けるでしょう。なにより上の立場の人間が……それを行ってしまう事実が残ってしまうのはマクシス様の今後の為にはなりません」
「それなら学院長にお願いして……」
「キャレルさん、わたしの話を聞いていましたか? 上の立場の者が特例を作るのは権力を用いた腐敗の始まりです……でも、それでもと言うのなら良いでしょう、実は学院長を呼んでいます……どうぞ」
「え?」
いつの間にこの状況を見物する生徒で一杯になった廊下の人垣が割れると初老の男性が進み出てくる。このアルヴァリス王立学習院の学院長だ。学院長はアーリャの後方からゆっくりと歩いてくる。
「学院長、私は……」
キャレルが学院長の方へ歩き出すと、アーリャがすれ違う直前に彼女の肩をそっと押さえて囁く……
「キャレルさん、わたしこの学院に入学する際に多大な寄付を行っています。今回の件で無理を通せば来年からその寄付は無くなります……だって、いち生徒の意見でルールが簡単に変わる学院に寄付なんてしたくありませんからね」
「そ、それがどうしたというの?」
……その言葉の意味がわからず聞き返すキャレルに構わずアーリャは続ける。
「学院長はあくまで王国から推薦された人物です。この学院は王立ですから学院長はあくまで国に雇われているだけですので、万が一そんな事になれば大きな失点……すぐに違う方に変わると思いますよ。よ~く考えて行動してくださいね、キャレルさん」
「!?」
キャレルの肩から手を離すアーリャ……だがキャレルは動けないでいた。
ただの庶民であったキャレルは偶然に学院長から才能を見いだされて特待生としてこの学習院に入学した。学院長が変わるという事は彼女の大きな後ろ盾が失われるという事だ。ただ1度、マクシスと授業を受けるためだけに失われるにはあまりにも大きすぎる。
「キャレル、この騒ぎは、いったいどうしたんだい? 何かあったのかい?」
学院長は優しい眼差しでキャレルを見つめるが、キャレルは呆然とした顔で立ち尽くしている……しばらくすると彼女は我に返ったように答えた。
「な、なんでもありません、私、この学校のルールをよくわかっていなくてアーリャさんに教えて頂いたんです」
「そうか、何か困った事があったら何でも言いなさい」
優しい笑顔で去って行く学院長……その間にアーリャはマクシスの元に行くとそっと彼の手を取った。取り巻きの令嬢達が文句を言う隙すら無かった。
「ごめんなさいマクシス様、本当は皆さんが自由に学べる方が良いとわたしも思いますけど、同時に貴族たる者は秩序も大事だと思うんです」
マクシスはハッとしたようにアーリャを見る。
「そうだな、俺とした事が何故このような事を言ってしまったんだ」
「マクシス様は貴族学部以外にも騎士学部で剣のお稽古など色々修練でお疲れですからね。さ、次の授業で今日は終わりですからあと一踏ん張りです……一緒に行きましょう」
「ああ、そうだなアーリャ」
アーリャとマクシスの二人が歩き出すと、取り巻きの令嬢達も慌ててそれについて行く。その様子を見届けた野次馬だった生徒達も一緒に去って行った……最後一人残ったキャレルは二人の去った廊下を悔しそうに見続けていた。
財力、権力、身分差などの見えざる力によって身を引かざるを得なかった彼女は、果たして自分の望んだ未来を手に入れる事が出来るのだろうか……残念ながらそれを知る事は間接的にしかわからない。なぜならこの物語の主役は……
「最近のアーリャは何を頑張っているんだい?」
「はい、また新しいスィーツを研究しています」
「そうか、出来上がったら食べてみたいな」
「もちろんです、一番にマクシス様に食べて欲しいです」
「わ、わたくしも興味ありますわ」「わたしもアーリャブランドのスィーツは制覇してますの!」「ご一緒させて欲しいです」
「あら皆さん、うふふふふ……」
……表向きは笑顔の美少女アーリャ。何を隠そうこの物語の主役は彼女なのだ。
「(危なかったよ~学部で違う授業の時は必ずキャレルさんがまーくんにちょっかいかけてくるから毎回追っ払う理由付けを考えるのも一苦労だよ~)」
彼女は商人の末娘としてこの世に生を受け、偶然前世で好きだった幼馴染みが第二王子様に生まれ変わった事を知ると全力で努力をし、苦労の末貴族の地位を手に入れる事が出来た。
そして成人である十五歳まで五年を過ごす学習院でラブラブ学園生活を送れるかと思ったのも束の間。なんと彼の側に庶民の身分から特待生で入学したキャレルが彼の周りをちょろちょろ彷徨いているではないか!?
アーリャは再び自重せずに全力で障害を排除する事を心に誓い、その為ならばたとえ悪役令嬢だろうと何でもなってやると心に決めたのだった。
「(大好きなまーくんと結ばれるために邪魔する人はゆるさないんだからね!! これは恋の戦い……ううん、恋愛戦争だよ!!)」
……アーリャの物語が今再び始まろうとしていた。
下は豪商と呼ばれる力ある商人、中は国を守る家系に生まれた騎士、上は由緒正しい貴族の子息子女が通う伝統ある学習院。上流階級の人間がより高みを目指すために……または人脈を築くための場として長い歴史を誇っている。
しかし例外もあった……特待生と呼ばれる特別身分や財力が無い人間でも市井から見いだされた才能ある若者もまたこの学習院で学ぶのだ。
その特待生の一人が彼女……キャレルだ。美しいと言うほどでは無いものの年相応な可憐な容姿を持ち、庶民のクラス全員と友好的な立場に身を置いている。
「今日の授業は終わったわ……これからどうしよう?」
独り言を呟くキャレル……その視線の先にある人物が目に映った。彼女が会いたいと思っていたひと、それは気品を感じる容姿に優しく微笑む美少年……その人物は周りにはいかにも上流階級ですとばかりに上等な服に身を包んだ貴族令嬢達が取り巻きとして囲んでいる。何を隠そう彼はこの国の第二王子様だ。その立場と容姿を貴族令嬢達が放っておく筈が無い。
「マクシス様……ご機嫌麗しゅうございます」
「ん、君はキャレルか。この学習院では身分は関係ないから畏まる必要は無いよ」
突然庶民の娘の乱入に眉をしかめる貴族令嬢達、しかしマクシスが彼女を歓迎しているようで何も言えないようだ。
「はっ、ごめんなさい……マクシス様は授業が終わったのですか?」
「いや、これから貴族史の授業があるんだ」
「そうなのですか……」
キャレルがマクシスの目をジッと見つめると、マクシスもその目をジッと見つめ返す。
「キャレル……一緒に授業を受けるかい?」
「え? いいんですか!?」
「マクシス様、こんな庶民の娘を誘うなんて!!」
「いけません、マクシス様があらぬ誤解を生んでしまいますわ!!」
今まで耐えていたが、とうとう耐えきれなくなり堰を切ったように取り巻きの令嬢達が抗議する。
「先程も言ったけれどこの学習院では身分は関係ないよ……俺が彼女を誘いたいから誘ったんだ。誤解も何も無いよ」
「「「そんな!?」」」
令嬢達はマクシスの言葉にショックを受ける……まさか貴族令嬢である自分達よりも庶民の娘の言い分を受け入れるなんてと。
「授業の時間にはまだゆとりはあるけど早めに行こう」
「は、はい」
キャレルはショックを受けている令嬢たちをみて遠慮がちにマクシスの隣に並ぶ。そのまま二人は教室へ向かうかと思われたその時……
「お待ちください!!」
大きめな静止の声にその場にいる全員が振り返ると、そこには緑髪の美しい少女が立っている……その衣服も派手では無いが少女の容姿に釣り合うような見る者が見ればわかる高級な物だ。
「アーリャ?」
「……っっ!?」
「はい、マクシス様……アーリャ・アルダークです」
セカンドネームがある彼女は貴族だ。正確には成人後に男爵となる予定なのだが、成人までの間にこの学習院で学ぶよう王命を受けているのだ。
「マクシス様がこれから受ける貴族史の授業は……キャレルさんが受ける事は出来ません」
「何を言っているんだ、そんな事は……」
「私達はこの学習院に必要な事を学ぶために在籍していります。各々が自分の学ぶべき事に合わせて学部が異なっています。商人なら経済学部……キャレルさんはこちらです。貴族なら貴族学部……わたし達はこちらですね」
「それはそうだが……」
「今回の授業の貴族史はキャレルさんの経済学部の学科ではありません。したがって異なる学部の授業を受けるのは規則違反となります」
「わ、私は違う各部の授業でも受けたいです。ここは学習院、生徒の学びたいという願いを否定したりしないはず」
「駄目です!!」
キャレルの切なる願いを冷徹に一蹴するアーリャ。
「アーリャ、いったい君に何の権利があってそんな事を……」
「わたしでは無くこの学習院のルールと、真摯に学びたいと考えている全生徒を代弁して言っています」
「え?」
「俗なお話になりますがこの学習院は入学金があります。そして経済学部と貴族学部のその金額の差は大きいです」
「そんな、お金の話なんて……」
「ではこの学習院の入学金がいくらなのか皆様はご存じですか?」
「……」
「わたくしはしりません」「わたくしも……」「そういえばお金を触った事がありませんわ」
無理も無いだろう、親の保護下にいた子供がそんな事を知るよしも無い。それはファンタジーなこの世界であろうと文明の進んだ地球に住んでいる子供であろうと大半が学校の入学金など知る事は殆ど無いだろう。
王子であるマクシスはもちろん貴族令嬢たち、そして特待生のキャレルも知らなかった……皆、アーリャの言葉に反論する事が出来ない。
「皆様のご両親はわたし達を学ばせるために決して少なくは無い金額を学習院に納めています。ちなみにわたしは家の当主ですから自分で払っているので知っています」
アーリャはその場にいる皆が自分の言葉に耳を傾けている事を確認すると話を続ける。
「キャレルさんの……自分の学部以外の授業を受けたい気持ちは素晴らしいです。特に女性の身でありながら自分を高めようとする姿勢は共感を覚えます」
「そ、それじゃあ……」
「ですが、それとこれとは話は別です」
「!?」
アーリャはキャレルを持ち上げつつも即否定した。
「もしも他の経済学部の方も同じように思っていたら……学びたいと思っても経済的な理由で授業を受けられなかったら。そんな人を押しのけてでもキャレルさんは自分一人だけでも学びたいですか? ルールを無視して、自分の学びたい気持ちを優先して満足ですか?」
「そんな言い方っっ」
「ならば今回に限り他の希望者を募って……」
「いけませんマクシス様……一度でも特例を作れば不公平が生じます。前回は良かったのになんで今回は……などと今後も言われ続けるでしょう。なにより上の立場の人間が……それを行ってしまう事実が残ってしまうのはマクシス様の今後の為にはなりません」
「それなら学院長にお願いして……」
「キャレルさん、わたしの話を聞いていましたか? 上の立場の者が特例を作るのは権力を用いた腐敗の始まりです……でも、それでもと言うのなら良いでしょう、実は学院長を呼んでいます……どうぞ」
「え?」
いつの間にこの状況を見物する生徒で一杯になった廊下の人垣が割れると初老の男性が進み出てくる。このアルヴァリス王立学習院の学院長だ。学院長はアーリャの後方からゆっくりと歩いてくる。
「学院長、私は……」
キャレルが学院長の方へ歩き出すと、アーリャがすれ違う直前に彼女の肩をそっと押さえて囁く……
「キャレルさん、わたしこの学院に入学する際に多大な寄付を行っています。今回の件で無理を通せば来年からその寄付は無くなります……だって、いち生徒の意見でルールが簡単に変わる学院に寄付なんてしたくありませんからね」
「そ、それがどうしたというの?」
……その言葉の意味がわからず聞き返すキャレルに構わずアーリャは続ける。
「学院長はあくまで王国から推薦された人物です。この学院は王立ですから学院長はあくまで国に雇われているだけですので、万が一そんな事になれば大きな失点……すぐに違う方に変わると思いますよ。よ~く考えて行動してくださいね、キャレルさん」
「!?」
キャレルの肩から手を離すアーリャ……だがキャレルは動けないでいた。
ただの庶民であったキャレルは偶然に学院長から才能を見いだされて特待生としてこの学習院に入学した。学院長が変わるという事は彼女の大きな後ろ盾が失われるという事だ。ただ1度、マクシスと授業を受けるためだけに失われるにはあまりにも大きすぎる。
「キャレル、この騒ぎは、いったいどうしたんだい? 何かあったのかい?」
学院長は優しい眼差しでキャレルを見つめるが、キャレルは呆然とした顔で立ち尽くしている……しばらくすると彼女は我に返ったように答えた。
「な、なんでもありません、私、この学校のルールをよくわかっていなくてアーリャさんに教えて頂いたんです」
「そうか、何か困った事があったら何でも言いなさい」
優しい笑顔で去って行く学院長……その間にアーリャはマクシスの元に行くとそっと彼の手を取った。取り巻きの令嬢達が文句を言う隙すら無かった。
「ごめんなさいマクシス様、本当は皆さんが自由に学べる方が良いとわたしも思いますけど、同時に貴族たる者は秩序も大事だと思うんです」
マクシスはハッとしたようにアーリャを見る。
「そうだな、俺とした事が何故このような事を言ってしまったんだ」
「マクシス様は貴族学部以外にも騎士学部で剣のお稽古など色々修練でお疲れですからね。さ、次の授業で今日は終わりですからあと一踏ん張りです……一緒に行きましょう」
「ああ、そうだなアーリャ」
アーリャとマクシスの二人が歩き出すと、取り巻きの令嬢達も慌ててそれについて行く。その様子を見届けた野次馬だった生徒達も一緒に去って行った……最後一人残ったキャレルは二人の去った廊下を悔しそうに見続けていた。
財力、権力、身分差などの見えざる力によって身を引かざるを得なかった彼女は、果たして自分の望んだ未来を手に入れる事が出来るのだろうか……残念ながらそれを知る事は間接的にしかわからない。なぜならこの物語の主役は……
「最近のアーリャは何を頑張っているんだい?」
「はい、また新しいスィーツを研究しています」
「そうか、出来上がったら食べてみたいな」
「もちろんです、一番にマクシス様に食べて欲しいです」
「わ、わたくしも興味ありますわ」「わたしもアーリャブランドのスィーツは制覇してますの!」「ご一緒させて欲しいです」
「あら皆さん、うふふふふ……」
……表向きは笑顔の美少女アーリャ。何を隠そうこの物語の主役は彼女なのだ。
「(危なかったよ~学部で違う授業の時は必ずキャレルさんがまーくんにちょっかいかけてくるから毎回追っ払う理由付けを考えるのも一苦労だよ~)」
彼女は商人の末娘としてこの世に生を受け、偶然前世で好きだった幼馴染みが第二王子様に生まれ変わった事を知ると全力で努力をし、苦労の末貴族の地位を手に入れる事が出来た。
そして成人である十五歳まで五年を過ごす学習院でラブラブ学園生活を送れるかと思ったのも束の間。なんと彼の側に庶民の身分から特待生で入学したキャレルが彼の周りをちょろちょろ彷徨いているではないか!?
アーリャは再び自重せずに全力で障害を排除する事を心に誓い、その為ならばたとえ悪役令嬢だろうと何でもなってやると心に決めたのだった。
「(大好きなまーくんと結ばれるために邪魔する人はゆるさないんだからね!! これは恋の戦い……ううん、恋愛戦争だよ!!)」
……アーリャの物語が今再び始まろうとしていた。
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