劇ではいつも『木』の役だったわたしの異世界転生後の職業が『木』だった件……それでも大好きな王子様のために庶民から頑張って成り上がるもん!

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第十九章 領主様は悪役令嬢!?

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 兵士達に引き倒された人間は15人……乱暴に起こされて皆が見える位置まで連れてこられた。大人しく付いて来る人もいれば激しく抵抗している人もいる……あ、肩を外されてる、い、痛そう!!

「なんで俺達だけこんな目に合わせるんだ!!」

「言いがかりだ!!」

「何もしていないのに酷い!!」

 拘束されている難民……いや、もう彼等は間者確定でしょう……は次々に文句を言いだした。

「あなた方がわたしの悪い噂を流して難民の方達を誘導してここに連れてきたんでしょう?」

「違う、そんな事はしていない!!」

「言いがかりだ!!」

「噂自体は皆知っている……誰が発端かなんかわかりようが無い!!」

 わたしは精一杯冷たい眼差しをすると扇をゆっくりとあおぐ。

「まぁ、誰が噂を流したかだなんて問題じゃ無いんです。だって、あなた達はこの国の人間じゃ無いですから」

「また間諜スパイだと言うのか!!」

「言いがかりだ!!」

「何を根拠に!!」

 さっきから同じ事ばかり言う人が気になりはするけど、とりあえずわたしが扇を未だ戸惑いを見せている難民達の方へスッと向けると、兵士達が息を合わせて拘束されている間諜スパイの顔をグイッとよく見えるよう持ち上げた。

「ちょうど、いま難民の皆さんは同じ村の出身者で固まってもらっています。村長さんには事前に伝えて協力してもらいました」

「「「!?」」」

 どうやら拘束されている間諜スパイ達は気付かなかったようだ。あんまりレベルの高くない人達で良かったよ。

「それではみなさん教えて下さい、この方達はどの村の出身ですか? どの村のどんなお仕事をしていて、どんなお名前の人ですか?」

「「「「「…………」」」」」

 難民の方からは声が出ない……それはそうでしょう。こんな人達は村にいなかったんだから。わたしは扇を拘束されている一番端の間諜スパイに向けると兵士は間者の顔をこちらに向ける。

「それではあなたは何処の村の出身でどんなお仕事をされていた何さんですか?」

「お、俺は……その……」

「そこまで考えてませんでしたか? 設定の作り込みが甘いですね隣国の間諜スパイさんは」

「す、間諜スパイってなんだ、俺はただお貴族様が裕福に暮らしているのが許せなかっただけだ」

「そうだ!! 贅沢反対だ!!」「早く離せ!!」

 まだ白を切っているよ……そりゃ、ここで認めたりしたら身の破滅だから頑張るよね。

「こ、こんな真似をして許されると思っているのか!」

「そうだ、横暴だ!!」「早く離せ!!」

「あら、おかしな事を仰いますね……許されるに決まっているじゃ無いですか。そもそも貴族の屋敷に大勢で詰めかけて……このような暴挙全員その場で斬首されたっておかしくないですよ」

 わたしの冷たい言葉に難民達全員の血の気が引いたようだ。わたしだってこんな事言いたくないけどここは言っておかないと駄目なところだから。

「それはそんな場所に皆さんを先導して連れてきたあなた方がよくわかっているんじゃ無いかしら?」

「「「っっ!!」」」

「そもそもこんな暴動を起こせばどうなるか分かっていましたよね? 仮にこんな強引な方法でわたしを捕らえてどうするつもりでしたの? 誘拐して身代金でも取ろうとしたの? それともと言う事かしら?」

「まさか、知っているのか!?」

 今のこの感じ身に覚えがあった。キャレルさんに初めて会った時を思い出す。彼女はわたしを相棒にしようとしていた。わたしに接触する事が第一目的で、それを成した後の事がまったく考えられていない所が共通している。

「なっ、止めろ!!」

「アーリャ様、ありました!!」

 押さえ込まれ激しく抵抗していた一人の所持品からある物が取り出された。それは何かの輪っか……サークレットだった。

「これ、人の記憶を操る魔道具でしたっけ。隣国にはこのような魔道具が沢山あるのでしょうか? これでわたしを操って傀儡に証としたのでしょうか? これでわたしを操って強引に事を収めようとしたわけですか」

「何故だ……何処まで知っている!? ただお飾りの子供領主じゃ無いのか!?」

「子供の領主という時点で逆に警戒するべきだったんじゃ無いですか? だいたいこんな杜撰ずさんな計画が成功するはず無いじゃないですか。もしかしたらあくまで今後の布石のための行動だったのかも知れませんが、こちらが隙を見せた途端、子犬のように尻尾を振って飛び込んでくるなんて我慢が足りないんじゃありませんか?」

「くっ!?」

「まぁ、わたし、この魔道具について色々よく知りたかったので、あなた達にはしっかりと協力してもらおうと思います。良かったですね、その間の命は保証されましたよ」

 わたしは扇で口を隠しながら『ふふふ』と笑った。それを見た難民達は自分がどれだけ危ない事をしたのか心底自覚したようだ。
 ううっ、本当はこんな事言いたくないんだけど、難民の人達にしっかりと身分が上の人には滅多な事をしてはいけないと分からせる必要があるしね。



 後に、わたしアーリャのお披露目パーティーは無事に大成功。その数日前に何があったかは特に記録上残される事はありませんでした。
 その代わり難民達の心の中に……甘く天に上るように美味なスィーツの味と、幼いながらも冷酷で恐ろしい悪役令嬢の姿が残ったのでした。微妙に納得いかない。
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