宇宙狂時代~SF宝島~

万卜人

文字の大きさ
33 / 107
想い出は永遠{とわ}に

しおりを挟む
 だん、とその場面を見守っていたシルバーはモニターの画面を拳で叩いていた。
「ヘロヘロだと? 何で、あんな旧式のロボットが気になるのだ? 総て完璧に準備したはずだぞ!」
 モニター・ルームで映し出されたキャシーは、ぽつんと立ちすくみ、今にも倒れそうだ。顔色は真っ青で、両目は大きく見開かれ、普段の倍ほども瞳孔が開かれている。
 赤外線レーザーがキャシーの肌を走査し、肌からの発汗量、血流量の変化を刻々と記録していた。
「この娘の心理状態は極めて不安定で、混乱しております。脳波分析によると、懐疑心は強烈ですが、過去の記憶のフラッシュ・バックによる自己暗示の状態です。総ての反応は、計算の範囲内!」
 モニターの数値を読み取った部下が冷静に報告する。
 シルバーは迷っていた。次の手を打つべきか? ジムとヘロヘロが、せっかくの準備をぶち壊しにする可能性は高まっている。
 しかし計画は、すでに走り出していた。途中でやめる訳にもいかない……!
 ゴロス人が呟いた。
「あの小僧どもは、如何致します? すでにキャシーの家へ近づいております」
 さっとシルバーはモニターを操作している部下に命じた。
「小僧どもの映像を出せ!」
 画面が切り替わり、田園地帯を駈けているジムとヘロヘロの姿を映し出す。二人は、キャシーの家へ向かっている。
「どうします? あの場所には、部下は一人も配置しておりません。今から向かわせるには、少し時間が足りません」
 シルバーは「うぬぬぬ!」と呻くと咆哮した。
 今こそ決断の時!
「フェイズ2に移行! 場面転換だ!」
 部下はさっとシルバーの命令に従い、キー・ボードの上に両手の指先を構える。
「フェイズ2に移行します! 失神ガス放出……」
 乗組員の指先が目の前のキー・ボードで踊った。
 画面のキャシーは、ぐらり、と傾くと、ぱたり、と倒れこんだ。無色透明無味無臭の失神ガスが、キャシーの意識を失わせる。
 と、どこに隠れていたのか、小柄な身長一メートルにも足らない〝種族〟がぞろぞろと現れ、意識を喪失したキャシーの身体を担ぎ上げ運んでいった。
 この種族の生まれ故郷は地上には人間の呼吸できない有毒ガスで満たされていたため、地下生活を余儀なくされ、その結果、身体を小さくさせたのである。そこでは、小柄な者のほうがより有利な生活ができることで、どんどん小さくなるよう、遺伝子を改造していた。
 彼らはガスを吸い込まないために、各々呼吸マスクで顔を覆っていた。小柄ではあるが、力は強い。キャシーの身体は軽々と担ぎ上げられていた。
「フェイズ2、準備完了!」
 操作している部下が宣言した。シルバーは頷いた。
「よし、侵攻部隊を登場させろ!」
 命令を下すと、シルバーはその場から立ち去った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...