70 / 107
指導者サーク
3
しおりを挟む
バングが向かった先は、モニター・ルームだった。集会所の幾つかあるドアの一つにバングとルーサンが飛び込み、アルニも後に続いた。
部屋一杯に無数のディスプレイが並んでいる。大きいの、小さいの、形も様々で、古色蒼然とした平面ディスプレイすら混じっている。ディスプレイに映っているのは、宙森の商業区、住宅区の風景である。
微かな物音が頭上から聞こえ、アルニが顔を上げると、先に小さなディスプレイが接続された金属製のアームが下がってきている。ディスプレイにはサークの姿が映し出されていた。
「何が起きたのかね?」
ディスプレイの中のサークが話しかけてくる。アルニは理解した。つまりサークは、どこにいても、このような外部情報装置を介して、この地下組織で起きている総ての状況を把握しているのだろう。
アルニの表情を見て、サークは頷いた。
「その通りだ。わたしの本体は動けないが、こうして全員と話すことができる」
さっとバングがサークのディスプレイを仰ぎ、報告した。
「町に出ている〝種族〟たちの様子が変です! 何か、うろたえているような様子です」
映像が大写しになる。
カメラはやや小高い場所から狙っている様子で、町の広場のような所に、無数の〝種族〟の男女が集まり、何か口々に騒ぎあっている。皆、目的を失い、呆然となっているように見えた。おしなべて恐怖の表情を浮かべている。
ディスプレイ内のサークは眉を顰めた。
「まさしく《大校母》に、何か起きたに違いない!」
アルニはサークを見上げた。
「どうして、そんなことが言えるの?」
サークは丁寧に説明する。
「この宙森に住む〝種族〟は《大校母》のコントロールを受けている。《大校母》は宙森の大気に自分のフェロモンを放出し、人間の耳に聞こえない超低周波による音声で指示を下している。わたしは、その事実を突き止め、なんとか対抗しようとして、原型を組織したのだ。どうやら《大校母》のフェロモンは、原型に対しては効果がないようだ。今は《大校母》の身に何か異変が起きて、フェロモンの放出が止まっているのかもしれない。だから〝種族〟の連中は自分の行動に確信が持てず、ああやって無目的な行動をとっているのだろう」
サークがそこまで話したとき、モニターに見入っている一人が何かに驚いたように「あっ」と声を上げた。
サークは鋭く、叫びの方向へディスプレイを向けた。
「どうした?」
「〝大海〟に連れ去られた二人組の原型が戻ってきます! 我々の感知できなかったシャトルに乗り込んでいるようで、今、スポークを格納庫へ向かっています!」
「救助できるか?」
サークの問いかけに、バングが叫んだ。
「おれが出向こう! すぐ救出部隊を組織して、そいつらを救助する! そいつらの映像が出せるか?」
要員は、しばらく目の前の装置を操作していた。
「シャトルの監視システムに割り込んで、あちらのカメラを生かします。今、割り込みに成功! そっちのモニターに映します!」
モニターの画面が切り替わり、シャトルの内部だろうか、二人の若い男女と、一体の妙な形のロボットが狭い座席で犇めき合っている姿が映し出された。
アルニは少女の顔を見て「あら?」と呟いた。バングは不審そうな表情でアルニを見つめた。
「どうした? 知っている相手か?」
アルニは頷いた。
「あたしがシルバーの《鉄槌》に乗り込んでいるとき、晩餐会があって、その時シルバーに招待された原型の女の子がいたわ。確か、キャシーって名前だった。あそこにいるのは、そのキャシーよ! あの娘、自分の宇宙艇を持っているんだって……」
「なんだって? それじゃ、あの娘、宇宙船の操縦ができるのか?」
なぜか、サークは興奮しているようだった。バングを見て命令する。
「バング! 何としてもあの原型の二人を救出するんだ! 理由は判っているな?」
バングは大きく頷いた。
「判ってまさあ! あいつらは、おれたちの希望の宇宙船ってわけですね?」
バングは大股に部屋を出て行く。アルニが好奇心に駆られて従いていくと、広間に立って大声で叫んだ。
「今から仲間の原型を助けに行くぞ! 手の空いている奴は、一緒に来い!」
バングの叫びに数人の原型が立ち上がった。この中では比較的気力、体力とも充実しているようで、ほかの原型には見られない元気があった。
興奮して、勢い込んで場を出て行く彼らを見て、アルニは「どうしたんだろう?」と首を傾げる。
部屋一杯に無数のディスプレイが並んでいる。大きいの、小さいの、形も様々で、古色蒼然とした平面ディスプレイすら混じっている。ディスプレイに映っているのは、宙森の商業区、住宅区の風景である。
微かな物音が頭上から聞こえ、アルニが顔を上げると、先に小さなディスプレイが接続された金属製のアームが下がってきている。ディスプレイにはサークの姿が映し出されていた。
「何が起きたのかね?」
ディスプレイの中のサークが話しかけてくる。アルニは理解した。つまりサークは、どこにいても、このような外部情報装置を介して、この地下組織で起きている総ての状況を把握しているのだろう。
アルニの表情を見て、サークは頷いた。
「その通りだ。わたしの本体は動けないが、こうして全員と話すことができる」
さっとバングがサークのディスプレイを仰ぎ、報告した。
「町に出ている〝種族〟たちの様子が変です! 何か、うろたえているような様子です」
映像が大写しになる。
カメラはやや小高い場所から狙っている様子で、町の広場のような所に、無数の〝種族〟の男女が集まり、何か口々に騒ぎあっている。皆、目的を失い、呆然となっているように見えた。おしなべて恐怖の表情を浮かべている。
ディスプレイ内のサークは眉を顰めた。
「まさしく《大校母》に、何か起きたに違いない!」
アルニはサークを見上げた。
「どうして、そんなことが言えるの?」
サークは丁寧に説明する。
「この宙森に住む〝種族〟は《大校母》のコントロールを受けている。《大校母》は宙森の大気に自分のフェロモンを放出し、人間の耳に聞こえない超低周波による音声で指示を下している。わたしは、その事実を突き止め、なんとか対抗しようとして、原型を組織したのだ。どうやら《大校母》のフェロモンは、原型に対しては効果がないようだ。今は《大校母》の身に何か異変が起きて、フェロモンの放出が止まっているのかもしれない。だから〝種族〟の連中は自分の行動に確信が持てず、ああやって無目的な行動をとっているのだろう」
サークがそこまで話したとき、モニターに見入っている一人が何かに驚いたように「あっ」と声を上げた。
サークは鋭く、叫びの方向へディスプレイを向けた。
「どうした?」
「〝大海〟に連れ去られた二人組の原型が戻ってきます! 我々の感知できなかったシャトルに乗り込んでいるようで、今、スポークを格納庫へ向かっています!」
「救助できるか?」
サークの問いかけに、バングが叫んだ。
「おれが出向こう! すぐ救出部隊を組織して、そいつらを救助する! そいつらの映像が出せるか?」
要員は、しばらく目の前の装置を操作していた。
「シャトルの監視システムに割り込んで、あちらのカメラを生かします。今、割り込みに成功! そっちのモニターに映します!」
モニターの画面が切り替わり、シャトルの内部だろうか、二人の若い男女と、一体の妙な形のロボットが狭い座席で犇めき合っている姿が映し出された。
アルニは少女の顔を見て「あら?」と呟いた。バングは不審そうな表情でアルニを見つめた。
「どうした? 知っている相手か?」
アルニは頷いた。
「あたしがシルバーの《鉄槌》に乗り込んでいるとき、晩餐会があって、その時シルバーに招待された原型の女の子がいたわ。確か、キャシーって名前だった。あそこにいるのは、そのキャシーよ! あの娘、自分の宇宙艇を持っているんだって……」
「なんだって? それじゃ、あの娘、宇宙船の操縦ができるのか?」
なぜか、サークは興奮しているようだった。バングを見て命令する。
「バング! 何としてもあの原型の二人を救出するんだ! 理由は判っているな?」
バングは大きく頷いた。
「判ってまさあ! あいつらは、おれたちの希望の宇宙船ってわけですね?」
バングは大股に部屋を出て行く。アルニが好奇心に駆られて従いていくと、広間に立って大声で叫んだ。
「今から仲間の原型を助けに行くぞ! 手の空いている奴は、一緒に来い!」
バングの叫びに数人の原型が立ち上がった。この中では比較的気力、体力とも充実しているようで、ほかの原型には見られない元気があった。
興奮して、勢い込んで場を出て行く彼らを見て、アルニは「どうしたんだろう?」と首を傾げる。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる