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指導者サーク
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バングが向かった先は、モニター・ルームだった。集会所の幾つかあるドアの一つにバングとルーサンが飛び込み、アルニも後に続いた。
部屋一杯に無数のディスプレイが並んでいる。大きいの、小さいの、形も様々で、古色蒼然とした平面ディスプレイすら混じっている。ディスプレイに映っているのは、宙森の商業区、住宅区の風景である。
微かな物音が頭上から聞こえ、アルニが顔を上げると、先に小さなディスプレイが接続された金属製のアームが下がってきている。ディスプレイにはサークの姿が映し出されていた。
「何が起きたのかね?」
ディスプレイの中のサークが話しかけてくる。アルニは理解した。つまりサークは、どこにいても、このような外部情報装置を介して、この地下組織で起きている総ての状況を把握しているのだろう。
アルニの表情を見て、サークは頷いた。
「その通りだ。わたしの本体は動けないが、こうして全員と話すことができる」
さっとバングがサークのディスプレイを仰ぎ、報告した。
「町に出ている〝種族〟たちの様子が変です! 何か、うろたえているような様子です」
映像が大写しになる。
カメラはやや小高い場所から狙っている様子で、町の広場のような所に、無数の〝種族〟の男女が集まり、何か口々に騒ぎあっている。皆、目的を失い、呆然となっているように見えた。おしなべて恐怖の表情を浮かべている。
ディスプレイ内のサークは眉を顰めた。
「まさしく《大校母》に、何か起きたに違いない!」
アルニはサークを見上げた。
「どうして、そんなことが言えるの?」
サークは丁寧に説明する。
「この宙森に住む〝種族〟は《大校母》のコントロールを受けている。《大校母》は宙森の大気に自分のフェロモンを放出し、人間の耳に聞こえない超低周波による音声で指示を下している。わたしは、その事実を突き止め、なんとか対抗しようとして、原型を組織したのだ。どうやら《大校母》のフェロモンは、原型に対しては効果がないようだ。今は《大校母》の身に何か異変が起きて、フェロモンの放出が止まっているのかもしれない。だから〝種族〟の連中は自分の行動に確信が持てず、ああやって無目的な行動をとっているのだろう」
サークがそこまで話したとき、モニターに見入っている一人が何かに驚いたように「あっ」と声を上げた。
サークは鋭く、叫びの方向へディスプレイを向けた。
「どうした?」
「〝大海〟に連れ去られた二人組の原型が戻ってきます! 我々の感知できなかったシャトルに乗り込んでいるようで、今、スポークを格納庫へ向かっています!」
「救助できるか?」
サークの問いかけに、バングが叫んだ。
「おれが出向こう! すぐ救出部隊を組織して、そいつらを救助する! そいつらの映像が出せるか?」
要員は、しばらく目の前の装置を操作していた。
「シャトルの監視システムに割り込んで、あちらのカメラを生かします。今、割り込みに成功! そっちのモニターに映します!」
モニターの画面が切り替わり、シャトルの内部だろうか、二人の若い男女と、一体の妙な形のロボットが狭い座席で犇めき合っている姿が映し出された。
アルニは少女の顔を見て「あら?」と呟いた。バングは不審そうな表情でアルニを見つめた。
「どうした? 知っている相手か?」
アルニは頷いた。
「あたしがシルバーの《鉄槌》に乗り込んでいるとき、晩餐会があって、その時シルバーに招待された原型の女の子がいたわ。確か、キャシーって名前だった。あそこにいるのは、そのキャシーよ! あの娘、自分の宇宙艇を持っているんだって……」
「なんだって? それじゃ、あの娘、宇宙船の操縦ができるのか?」
なぜか、サークは興奮しているようだった。バングを見て命令する。
「バング! 何としてもあの原型の二人を救出するんだ! 理由は判っているな?」
バングは大きく頷いた。
「判ってまさあ! あいつらは、おれたちの希望の宇宙船ってわけですね?」
バングは大股に部屋を出て行く。アルニが好奇心に駆られて従いていくと、広間に立って大声で叫んだ。
「今から仲間の原型を助けに行くぞ! 手の空いている奴は、一緒に来い!」
バングの叫びに数人の原型が立ち上がった。この中では比較的気力、体力とも充実しているようで、ほかの原型には見られない元気があった。
興奮して、勢い込んで場を出て行く彼らを見て、アルニは「どうしたんだろう?」と首を傾げる。
部屋一杯に無数のディスプレイが並んでいる。大きいの、小さいの、形も様々で、古色蒼然とした平面ディスプレイすら混じっている。ディスプレイに映っているのは、宙森の商業区、住宅区の風景である。
微かな物音が頭上から聞こえ、アルニが顔を上げると、先に小さなディスプレイが接続された金属製のアームが下がってきている。ディスプレイにはサークの姿が映し出されていた。
「何が起きたのかね?」
ディスプレイの中のサークが話しかけてくる。アルニは理解した。つまりサークは、どこにいても、このような外部情報装置を介して、この地下組織で起きている総ての状況を把握しているのだろう。
アルニの表情を見て、サークは頷いた。
「その通りだ。わたしの本体は動けないが、こうして全員と話すことができる」
さっとバングがサークのディスプレイを仰ぎ、報告した。
「町に出ている〝種族〟たちの様子が変です! 何か、うろたえているような様子です」
映像が大写しになる。
カメラはやや小高い場所から狙っている様子で、町の広場のような所に、無数の〝種族〟の男女が集まり、何か口々に騒ぎあっている。皆、目的を失い、呆然となっているように見えた。おしなべて恐怖の表情を浮かべている。
ディスプレイ内のサークは眉を顰めた。
「まさしく《大校母》に、何か起きたに違いない!」
アルニはサークを見上げた。
「どうして、そんなことが言えるの?」
サークは丁寧に説明する。
「この宙森に住む〝種族〟は《大校母》のコントロールを受けている。《大校母》は宙森の大気に自分のフェロモンを放出し、人間の耳に聞こえない超低周波による音声で指示を下している。わたしは、その事実を突き止め、なんとか対抗しようとして、原型を組織したのだ。どうやら《大校母》のフェロモンは、原型に対しては効果がないようだ。今は《大校母》の身に何か異変が起きて、フェロモンの放出が止まっているのかもしれない。だから〝種族〟の連中は自分の行動に確信が持てず、ああやって無目的な行動をとっているのだろう」
サークがそこまで話したとき、モニターに見入っている一人が何かに驚いたように「あっ」と声を上げた。
サークは鋭く、叫びの方向へディスプレイを向けた。
「どうした?」
「〝大海〟に連れ去られた二人組の原型が戻ってきます! 我々の感知できなかったシャトルに乗り込んでいるようで、今、スポークを格納庫へ向かっています!」
「救助できるか?」
サークの問いかけに、バングが叫んだ。
「おれが出向こう! すぐ救出部隊を組織して、そいつらを救助する! そいつらの映像が出せるか?」
要員は、しばらく目の前の装置を操作していた。
「シャトルの監視システムに割り込んで、あちらのカメラを生かします。今、割り込みに成功! そっちのモニターに映します!」
モニターの画面が切り替わり、シャトルの内部だろうか、二人の若い男女と、一体の妙な形のロボットが狭い座席で犇めき合っている姿が映し出された。
アルニは少女の顔を見て「あら?」と呟いた。バングは不審そうな表情でアルニを見つめた。
「どうした? 知っている相手か?」
アルニは頷いた。
「あたしがシルバーの《鉄槌》に乗り込んでいるとき、晩餐会があって、その時シルバーに招待された原型の女の子がいたわ。確か、キャシーって名前だった。あそこにいるのは、そのキャシーよ! あの娘、自分の宇宙艇を持っているんだって……」
「なんだって? それじゃ、あの娘、宇宙船の操縦ができるのか?」
なぜか、サークは興奮しているようだった。バングを見て命令する。
「バング! 何としてもあの原型の二人を救出するんだ! 理由は判っているな?」
バングは大きく頷いた。
「判ってまさあ! あいつらは、おれたちの希望の宇宙船ってわけですね?」
バングは大股に部屋を出て行く。アルニが好奇心に駆られて従いていくと、広間に立って大声で叫んだ。
「今から仲間の原型を助けに行くぞ! 手の空いている奴は、一緒に来い!」
バングの叫びに数人の原型が立ち上がった。この中では比較的気力、体力とも充実しているようで、ほかの原型には見られない元気があった。
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