蒸汽帝国~真鍮の乙女~

万卜人

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「あんたがこんなことをするとはな」
 あきれるホルンに、サックはがばと身を伏して頭を地面にすりつけた。
「頼む! 見逃してくれ! わしはどうしても村長でいなくてはならんのだ!」
「なぜだ。なぜ、そんなに村長にこだわるのかね」
 ホルンの質問にサックは顔をあげた。
「決まっておる! 村長の地位はわしにいろいろ商売の便宜を得させてくれた。いまでもそうだ。村人への融資、商品の買い入れ、業者への口利き……」
「村の発展はその中にないのか?」
 サックは肩をすくめた。
「わしが勢力を強めれば強めるほど、自動的に村はおおきくなる。そうなっておるのだ。事実、ロロ村はわしが村長でいる間、驚くほど大きくなったではないか! あんたもそれは認めるはずだ」
「だが公正な手段ではない。村人はあんたの金を借りているため、言いたいことも今まで言えずにいる。近頃、ようやく正直な声をあげ始めているが……それも追いつめられてのことだ」
 サックは吐き捨てた。
「なんと言うことだ。わしの恩も忘れるとは……」
 その時、左手の牧草地から、数人の牧童らしき人物が近づいてきた。
「銃声が聞こえてなんだろうと思ってね。このあたりには猟師はいないはずだが」
 そう言いかけ、銃を手にしたサックに目を丸くした。
「サックさん……あんた、こんなところでなにをしているんだね?」
 サックは顔を真っ赤にさせた。
 くそっ、と叫ぶとだしぬけに銃口を振り回した。
「殺してやる! みんな、殺してやる!」
 さっとマリアはサックの銃を奪った。
 あっけにとられる一同の前で、マリアはサックの銃を両手で握るとぐっと全身に力を込めた。
 ぐい、とばかりにサックの銃は真ん中からへしおれてしまった。
 相当力をこめたのか、マリアの全身からはしゅーっと勢いよく蒸気が噴き出す。
 へたへた……と、サックは尻を地面につけて座り込んだ。
 ホルンがこれまでのいきさつを物語ると、牧童たちは首を振った。
「なんてことだ、村長がこんなことするとは……」
 ざわざわと口騒ぐ村人たちにむけ、ホルンは両手をあげ口を開いた。
「おれはこれからボーラン市へ急ぐ。村長のことはおれに任せてほしい。くれぐれも騒がないでくれ」
 牧童たちはホルンの言葉に静まった。
「あんたが任せてくれと言うなら、任せよう」
 ありがとう、とホルンは礼を言った。
 牧童たちが去っていくのを見て、サックはホルンに話しかけた。
「わしをどうするつもりだ?」
「決まっているじゃないか。あんたのやったことは殺人未遂だぞ。ボーラン市に行く前に、軍の人間にあんたを預ける。帝国軍がよろしく裁判をやってくれるさ」
 ホルンの言葉に、サックは色を失った。
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