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出発
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サックはホルンとマリアの真ん中に座らされ、そのままムカデは動き出した。
「本当に総督府にわしを連れて行くつもりなのか?」
ホルンは答えた。
「当たり前じゃないか。おれを銃で狙ったことを忘れたのか?」
サックは下唇を噛みしめた。
運転をパックに替わってもらい、ニコラ博士はマリアを仔細に観察した。
「ほほお、ここがサックの銃にやられたところだな。穴は開いていないが、へこんでおるわい……あとで叩いて直してやろう」
それに対し、マリアは答えた。
「大丈夫です。じぶんで直せますから」
そう言うとむっ、といきんだ。
ぶしゅーっ、と蒸気が噴きあがる音がして内圧が高まっていく。
ぽん、ぽん、と音を立て、へこんだところが元に戻る。
博士は下唇をかんだ。
「マリア、そんなに蒸気を無駄遣いするものではないぞ! どういう影響があるか判らんからな」
はい、とマリアは答えた。
と、ぎりぎりぎり……とマリアの身体から異音が響いた。
「どうしたマリアっ!」
博士は叫んだ。
「どうやら……無駄……遣い……した……みたい……」
マリアの口調がはっきりと遅くなる。
その瞼がゆっくりとさがり、がくりと首がたれた。
「マリア!」
パックも叫んでいた。
その瞬間、サックはぱっと立ち上がり、ムカデから飛び降りると、一目散に村の方向へ向かって走り出した。
「あっ、逃げたっ!」
パックが叫ぶと、ホルンはその肩を押さえた。
「放っておけ。もう、やつはおしまいだ。総督府にこのことを報告しておけば、あとは帝国軍が引き受けてくれるだろう」
サックはさっきの丘の斜面に駈けあがり、藪の中に飛び込んだ。すると一頭の馬にまたがり姿をあらわした。
「馬か! あれで先回りしたんだな」
ホルンはつぶやいた。
ぴしり、とサックは馬に鞭をくれ馬首をめぐらせて逃げていく。目指すはロロ村らしい。
「村へ逃げてどうするつもりだろう」
パックの疑問にホルンが答える。
「多分、家の金をかき集めて高飛びするつもりだろう。やれやれ、せっかくサックのことで色々調べまわったのに無駄になったな。もっともミリィの行方を探すという目的は残っている。パック、先を急ぐか」
うん、とパックは頷いた。
「やれやれ、すっかり冷えている。蒸気を使い果たしたと見える」
額をぬぐい、博士はつぶやいた。
動かなくなったマリアを横たえ、博士は彼女の身体を点検していた。
「蒸気がなくなったのかい?」
パックの質問に博士はうなずいた。
「考えてみても、昨夜からずっとこいつは活動しっぱなしじゃった。この身体にそんなに蒸気を溜め込んではいられんからな。さっきの活躍で使い果たしたんじゃろう。どれ、蒸気を補充してやるとするか」
そう言うとさっとムカデによじ登り、その蒸気機関に燃料をくべると、シリンダーからパイプを引いてマリアの身体に接続した。
しゅっ、しゅっという音とともに蒸気が補充されていくと、マリアの目がぱちりと開いた。
「マリア……」
パックが声をかけると、彼女は上半身をおこし、うなずいた。
「ご心配かけました」
ふう、と一同は緊張を解いた。
ようやく元に戻ったマリアをムカデに乗せ、一同はふたたび旅を続けることになった。
目指すはボーラン市。
帝国の首都。
あらゆる人々が集まる都会。
パックは胸が高まるのを抑えることが出来なかった。
ふと思う。
きっとボーラン市に行けば、ミリィの手がかりが見つかる。なぜかパックは確信を持っていた。
「本当に総督府にわしを連れて行くつもりなのか?」
ホルンは答えた。
「当たり前じゃないか。おれを銃で狙ったことを忘れたのか?」
サックは下唇を噛みしめた。
運転をパックに替わってもらい、ニコラ博士はマリアを仔細に観察した。
「ほほお、ここがサックの銃にやられたところだな。穴は開いていないが、へこんでおるわい……あとで叩いて直してやろう」
それに対し、マリアは答えた。
「大丈夫です。じぶんで直せますから」
そう言うとむっ、といきんだ。
ぶしゅーっ、と蒸気が噴きあがる音がして内圧が高まっていく。
ぽん、ぽん、と音を立て、へこんだところが元に戻る。
博士は下唇をかんだ。
「マリア、そんなに蒸気を無駄遣いするものではないぞ! どういう影響があるか判らんからな」
はい、とマリアは答えた。
と、ぎりぎりぎり……とマリアの身体から異音が響いた。
「どうしたマリアっ!」
博士は叫んだ。
「どうやら……無駄……遣い……した……みたい……」
マリアの口調がはっきりと遅くなる。
その瞼がゆっくりとさがり、がくりと首がたれた。
「マリア!」
パックも叫んでいた。
その瞬間、サックはぱっと立ち上がり、ムカデから飛び降りると、一目散に村の方向へ向かって走り出した。
「あっ、逃げたっ!」
パックが叫ぶと、ホルンはその肩を押さえた。
「放っておけ。もう、やつはおしまいだ。総督府にこのことを報告しておけば、あとは帝国軍が引き受けてくれるだろう」
サックはさっきの丘の斜面に駈けあがり、藪の中に飛び込んだ。すると一頭の馬にまたがり姿をあらわした。
「馬か! あれで先回りしたんだな」
ホルンはつぶやいた。
ぴしり、とサックは馬に鞭をくれ馬首をめぐらせて逃げていく。目指すはロロ村らしい。
「村へ逃げてどうするつもりだろう」
パックの疑問にホルンが答える。
「多分、家の金をかき集めて高飛びするつもりだろう。やれやれ、せっかくサックのことで色々調べまわったのに無駄になったな。もっともミリィの行方を探すという目的は残っている。パック、先を急ぐか」
うん、とパックは頷いた。
「やれやれ、すっかり冷えている。蒸気を使い果たしたと見える」
額をぬぐい、博士はつぶやいた。
動かなくなったマリアを横たえ、博士は彼女の身体を点検していた。
「蒸気がなくなったのかい?」
パックの質問に博士はうなずいた。
「考えてみても、昨夜からずっとこいつは活動しっぱなしじゃった。この身体にそんなに蒸気を溜め込んではいられんからな。さっきの活躍で使い果たしたんじゃろう。どれ、蒸気を補充してやるとするか」
そう言うとさっとムカデによじ登り、その蒸気機関に燃料をくべると、シリンダーからパイプを引いてマリアの身体に接続した。
しゅっ、しゅっという音とともに蒸気が補充されていくと、マリアの目がぱちりと開いた。
「マリア……」
パックが声をかけると、彼女は上半身をおこし、うなずいた。
「ご心配かけました」
ふう、と一同は緊張を解いた。
ようやく元に戻ったマリアをムカデに乗せ、一同はふたたび旅を続けることになった。
目指すはボーラン市。
帝国の首都。
あらゆる人々が集まる都会。
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ふと思う。
きっとボーラン市に行けば、ミリィの手がかりが見つかる。なぜかパックは確信を持っていた。
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