蒸汽帝国~真鍮の乙女~

万卜人

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理想宮

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「くそっ! なんてことだ! たかが石ひとつで……」
 ガゼは司令塔で喚いていた。
 岩を投げつけられた戦車の内部は大騒ぎであった。
 たしかに岩を投げつけられたくらいで戦車の外板はびくともするものではない。厚さ数センチの鉄の板は、砲弾の直撃にも耐ええる強度を持っている。
 しかしその衝撃は内部に深刻なダメージを与えていた。
 戦車のエンジン、そのほか主機関にはダメージはなかったが、微妙な調整を必要とする砲門の照準は、その衝撃におおきく狂ってしまっていた。また直撃する岩の打撃は内部の兵員たちにも衝撃をあたえ、揺さぶられた衝撃であたりの機器に打ち付けられ、怪我をする兵士が多数出ていた。すぐさま替わりの兵士が交替するのだが、その間戦闘は不可能になる。
「あれはなんだ、いったい……帝国軍の新兵器か?」
 司令塔の覗き穴から鉄人兵を見て、ガゼは叫んだ。
「判りませんな。ともかく、このままでは撤退作戦は失敗します。すでに帝国軍は側面に戦線を展開させ、わが方の撤退を阻止しようという動きを見せています」
 参謀のひとりがつぶやいた。
 ガゼはきっとその参謀を睨んだ。
「なんとかして味方を逃がすんだ! そのためにこの戦車で敵軍を引き付ける必要がある。主砲をあのロボットに集中させろ!」
「しかし照準が狂っていますので……」
「そんなことはどうでもいい。目測で発射しろ!」
 ガゼの喚きに参謀は直立した。
 司令塔の内部があわただしくなった。
 戦車の主砲が鉄人兵に集中した。
 ずばっ!
 ずばっ!
 ずばっ!
 つぎつぎと主砲が火を噴き、砲弾が送り込まれる。
「ガゼ将軍! 敵のロボットが……!」
 部下の報告にガゼはふたたび覗き穴に目を押し付けた。
「動き出した……」
 ガゼはつぶやいた。
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