蒸汽帝国~真鍮の乙女~

万卜人

文字の大きさ
204 / 279
理想宮

しおりを挟む
 ギャンは凱旋した。
 ロロ村の奪還、そして共和国軍の壊滅とギャンの戦果はすぐさま王宮に報告され、首都はこの若い軍事の天才を迎える準備におわれていた。
 きらびやかな衣装を身につけたブラスバンドが行進曲を演奏し、その後から帝国軍が進軍していく。首都のメイン・ストリートには華やかな勝利をはたした噂の新兵器、鉄人兵を一目見ようと大勢の群衆が押しかけていた。えんえんと続く装甲車や戦車、兵員輸送車の列の最後に鉄人兵の巨体が現れると、群衆は熱狂的な声援をおくる。
 大通りに面したすべてのビルの窓が開け放たれ、紙ふぶきが舞った。
 その中を、ずしりずしりと重々しく鉄人兵が歩んでいく。操縦するのはもちろん、ギャンである。鉄人兵の巨体に、見物人は一人残らずあっけにとられ、ついで熱狂的な歓呼の声をあげた。新聞記者はみなカメラをかまえ、フラッシュを焚いて一枚たりとも撮り漏らさないよう、必死になってシャッターを切っている。新聞の一面はもちろん、ギャン少佐の顔のアップである。金髪の若いハンサムな少佐の登場はセンセーショナルであった。
 ロロ村を救ったのがギャンと知って、パックはホルストと一緒に見物に出かけていた。マリアも一緒である。パックの行くところ、つねにマリアも従う。
「驚いたな……あれがギャンなのかね?」
 ぽかんと口を開け、ホルストは鉄人兵を見送った。ホルストはキオのサーカスで着ていた魔法使いのローブを着ていた。あれ以来、すっかりこの格好が気に入ったようで、団長に頼んで譲ってもらったのである。
「ずいぶん変わった、まるで別人ですよ」
 パックの答えに、ホルストは首を横にふった。
「いいや、そんなものではない。もっと本質的なものじゃ! 顔かたちが少々変わっておっても、わしはそんなものに驚くことはない。わしが驚いたのは、ギャンのやつきわめて強い〝オーラ〟をまとっていることなのじゃ」
「〝オーラ〟? なんです、そりゃ」
 ぽん、とホルストは額をたたいた。
「ほ! 言っておらなかったかな? 〝オーラ〟とは、魔力を操ることの出来る者が身にまとう〝魔素〟の流れなのじゃ。強い魔力を持つものは強い〝オーラ〟をまとう。わしにもある。しかしあのギャンの〝オーラ〟は桁外れじゃ!」
「前はなかったんですか?」
「そうじゃ。わしがロロ村でギャンを見ていたときは、あのような〝オーラ〟はまとっておらなかった。どういうことじゃろう……いつの間に、あやつはあのような強い〝オーラ〟を身につけたのじゃろう?」
 心底不思議だというように、ホルストは唇をかんだ。
 そのときマリアが口を開いた。
「エイダに聞くべきです」
「エイダ?」
「ほら、バベジ教授のところで見た……」
 あっ、とパックとホルストは顔を見合わせた。
「あの時、確かボーラン市に強い〝魔素〟の集中があると言っておったな。そうか、このことじゃったのか!」
 うむむむ……! と、ホルストは天を仰いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。 その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。 そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。 その数日後王家から正式な手紙がくる。 ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ! ※ざまぁ要素はあると思います。 ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

婚約破棄された公爵令嬢は数理魔法の天才

希羽
ファンタジー
この世界では、魔法は神への祈りとされる神聖な詠唱によって発動する。しかし、数学者だった前世の記憶を持つ公爵令嬢のリディアは、魔法の本質が「数式による世界の法則への干渉」であることを見抜いてしまう。 ​彼女が編み出した、微分積分や幾何学を応用した「数理魔法」は、従来の魔法を遥かに凌駕する威力と効率を誇った。しかし、その革新的な理論は神への冒涜とされ、彼女を妬む宮廷魔術師と婚約者の王子によって「異端の悪女」の烙印を押され、婚約破棄と国外追放を宣告される。 ​追放されたリディアは、魔物が蔓延る未開の地へ。しかし、そこは彼女にとって理想の研究場所だった。放物線を描く最適な角度で岩を射出する攻撃魔法、最小の魔力で最大範囲をカバーする結界術など、前世の数学・物理知識を駆使して、あっという間に安全な拠点と豊かな生活を確立する。 ​そんな中、彼女の「数理魔法」に唯一興味を示した、一人の傭兵が現れる。感覚で魔法を操る天才だった彼は、リディアの理論に触れることで、自身の能力を飛躍的に開花させていく。 ​やがて、リディアを追放した王国が、前例のない規模の魔物の大群に襲われる。神聖な祈りの魔法では全く歯が立たず、国が滅亡の危機に瀕した時、彼らが頼れるのは追放したはずの「異端の魔女」ただ一人だった。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

処理中です...