キモオタの僕と七人の妹~許嫁はドSで無慈悲な科学のお姫様~

万卜人

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第六章

挨拶

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「お早うっ!」
 僕は声を張り上げ、教室に足を踏み入れた。僕の挨拶に、教室中がぎょっと静まり返った。
 僕はズカズカと大股に歩いて、いつもの自分の席へ近づいた。途中、クラスメートに「お早う」「お早う」と挨拶を交わす。なぜかクラス中のみんなは、僕と目を合わせるのを避けるように顔をそむけて返事もしない。
 僕はまるで気にせず、自分の席に座るとぼんやりと教室中を見渡した。
 いつもの顔ぶれ、何の変りもない。

 どうしたんだろう?

 朝起きた時から僕はずーっと、何か重大なことを忘れたような、奇妙な胸騒ぎを感じていた。
 僕は何を忘れているのだろう?
 必死に思い出そうとするのだが、まるで手掛かりはなかった。
 と、今までざわついていた教室が不意に静まり返っていた。
 何が起きたんだろう、と顔を上げると、全員耳をそばだてている様子だ。

 のし、のし、のし……。

 重々しい足音が近づいてくる。
 足音が教室の出入り口に止まった。
 引き戸のすりガラスに、奇妙にずんぐりとした人影がさした。

 グワァラガッシャンドシャンバッタン!

 出し抜けに引き戸が恐ろしい勢いで開けられ、その勢いで嵌まっていたいたすりガラスが一瞬で粉微塵に吹き飛んだ。
 ドッタン! と引き戸はレールから外れ、教室内に倒れ込んだ。
 開け放たれた出入り口に一人の人物が仁王立ちになっていた。ドラム缶のような胴体に、ぶっ太い手足。臼のような巨大な顔面に、ピンク色の縁をした眼鏡を架けている。真っ赤な髪の毛は、くしゃくしゃに伸び放題になっていた。
 真兼朱美だ!
 僕の許嫁。
 真兼高校恐怖の象徴!

「明~日~辺~流~可~男~っ!」
 朱美は一言一言をいちいち伸ばしながら、大音声で呼ばわった。
 キーン、と僕の耳が耳鳴りをした。そのくらい、朱美の馬鹿声は巨大だ。いや、耳鳴りをしているのは僕だけじゃなく、教室中の全員が耳を押さえ、悶えていた。
 パキン!
 軽い音を立て、天井の照明が割れて破片が下に落下した。運が悪く、真下にいた生徒が悲鳴を上げた。
 朱美は鋭い眼光で教室中を見渡した。まるで眼光で相手を殺しかねない視線の強さだ。
 レーザービームのような朱美の眼光が、僕の顔に留まった。
「いたな! 流可男!」
 僕を睨みつける朱美の顔面に、ハッキリと青痣を僕は認めた。朱美が架けている眼鏡にも、罅が走っている。
 あれ、どうしたんだろう?
 考える間もなく、朱美はドスドスと大きな足音を立て、まるでティラノサウルスレックスのような勢いで近づいてきた。
「来い、流可男!」

 朱美はむんず、と僕の腕を掴むと、全身の力を込め引っ張った。勢いは強く、下手をすれば肩の骨が抜けそうだ。
 僕は腹に力を込め、朱美の強引な引っ張りに抗った。
 朱美の顔に「おや?」といった表情が浮かんだ。
「何だ、流可男。オイラに逆らうのか?」
 僕は静かな口調で朱美に答えた。
「だって授業が始まるんだぞ。僕らは学生じゃないか」
「ぬあ~にぃ~っ!」
 朱美の顔が見る見る真っ赤に染まった。
「そんなこと関係ねえ~っ! 来ないと言い張るならオイラも考えがあるぞ!」
 朱美は自分の制服の胸に留められているバッジに手を触れていた。
 僕はギクリと強張っていた。
 制服に仕掛けられている戦闘強化服を起動しようとしている!
 朱美は僕の様子に勝ち誇ったように話し掛けた。
「判るな。オイラがこれを使うとどうなるか。オイラにこれを使わせたくなければ、大人しくついてくるんだ」
 僕は唯々諾々と朱美に従った。
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