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第六章
反応
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最後の言葉に、僕は「はっ!」となって顔を上げた。
「それはつまり……?」
「そうさ、流可男がそんな体になったんだから、オイラが自分の身体に注射したらもの凄い変化が期待できるぞ。ああ、ワクワクするなあ! オイラの力が薬で何倍になれば、オイラは最強になれる!」
最強の真兼朱美……あまり想像したくはなかった。今でさえ朱美は手に負えないほどなのに、これがさらに強力になったら誰が朱美を制御できるんだ?
朱美は早口に僕に命令を下した。
「流可男! ビデオを用意しろ! 今から薬の効果を逐一記録する!」
僕は朱美の実験助手として付き合いが長い。命令されるとつい、自動的に体が動いてしまう。
命令されたビデオの用意をしながら、僕の脳裏には佐々木藍里の謎が渦巻いていた。
あの藍里は本物だろうか?
なぜ僕の目の前に姿を現したのか。
もっとも納得しやすい説明としては、確かに本物の人間だが、自分を佐々木藍里というゲームのキャラと思い込んでいる、というものだ。僕が藍里と一緒にいるところをゲームの中で知って、自分がその藍里だと勝手に思っている女の子。
駄目だ! あまりに無理が多すぎる。
朱美は藍里について素っ気ない態度だったが、好奇心を燃やしていないというわけではない。むしろ逆で、朱美は問題が大きいほど、謎が深いほど態度は冷たい。多分、データが少ないので、それについては触れないのだ。朱美の頭の一部では、藍里の謎について猛烈に働いているのに違いない。
「用意はできたか?」
朱美の質問に僕は三脚に立てたビデオカメラの向こうから頷いた。
「いつでもいいよ」
「よし。それじゃオイラ真兼朱美は、新薬投与を始める。被験者は真兼朱美十七才。現在、きわめて健康! 今から自分の身体に薬を投与して、効果を確認する。オイラの予測では、オイラは投与して後、身体の変化をきたすだろう。では始める」
一気に説明すると、朱美は注射器を持ち上げた。牛乳瓶ほどもある、巨大な注射器だ。ギラギラと輝く剣呑そうな針先を、自分の腕に近づけた。
「むん!」と一息に朱美は針先を自分の腕に突き刺した!
ちゅーっ、とピストンを押し、注射器の薬液を注入していく。
ことん、と注射器が床に落ちた。
朱美は微動だにせず、両足を踏ん張って立っている。
僕はおそるおそる、声をかけた。
「気分はどうだい?」
朱美は動かない。まるで彫像のようだ。
と、ぽつりと呟いた。
「熱い……」
「え?」
「熱い!」
見る見る朱美の顔が真っ赤に染まった。
どて、とその場に尻もちをついた。
僕は心底驚いた。
これは普通じゃない。
いや、朱美の存在そのものが普通じゃないが、今の反応は普通じゃない。
今まで朱美はこんな状態になったことはなかった。朱美は悪食で、口に入るものは何でもガツガツ食らうが、一度たりとも体調を悪くしたり、食欲がなくなる、などということもない。もちろん今まで僕の知る限り、風邪を引いたこともない。
おっかなびっくり、僕は朱美に近づいた。朱美は床にべったりと尻をついて座り込んでいた。顔は相変わらず真っ赤で、ピクリとも動いていない。
ちょっと手を伸ばし、朱美の額に触れた。
熱い!
まるで燃えるようだ!
俯いた朱美の顔を覗きこんだ。
ダラダラと大量の汗が朱美の額から噴き出している。汗はねっとりとして、粘液のような糸を引いていた。
こりゃ大変だ!
僕は慌てて研究室を飛び出した。
「それはつまり……?」
「そうさ、流可男がそんな体になったんだから、オイラが自分の身体に注射したらもの凄い変化が期待できるぞ。ああ、ワクワクするなあ! オイラの力が薬で何倍になれば、オイラは最強になれる!」
最強の真兼朱美……あまり想像したくはなかった。今でさえ朱美は手に負えないほどなのに、これがさらに強力になったら誰が朱美を制御できるんだ?
朱美は早口に僕に命令を下した。
「流可男! ビデオを用意しろ! 今から薬の効果を逐一記録する!」
僕は朱美の実験助手として付き合いが長い。命令されるとつい、自動的に体が動いてしまう。
命令されたビデオの用意をしながら、僕の脳裏には佐々木藍里の謎が渦巻いていた。
あの藍里は本物だろうか?
なぜ僕の目の前に姿を現したのか。
もっとも納得しやすい説明としては、確かに本物の人間だが、自分を佐々木藍里というゲームのキャラと思い込んでいる、というものだ。僕が藍里と一緒にいるところをゲームの中で知って、自分がその藍里だと勝手に思っている女の子。
駄目だ! あまりに無理が多すぎる。
朱美は藍里について素っ気ない態度だったが、好奇心を燃やしていないというわけではない。むしろ逆で、朱美は問題が大きいほど、謎が深いほど態度は冷たい。多分、データが少ないので、それについては触れないのだ。朱美の頭の一部では、藍里の謎について猛烈に働いているのに違いない。
「用意はできたか?」
朱美の質問に僕は三脚に立てたビデオカメラの向こうから頷いた。
「いつでもいいよ」
「よし。それじゃオイラ真兼朱美は、新薬投与を始める。被験者は真兼朱美十七才。現在、きわめて健康! 今から自分の身体に薬を投与して、効果を確認する。オイラの予測では、オイラは投与して後、身体の変化をきたすだろう。では始める」
一気に説明すると、朱美は注射器を持ち上げた。牛乳瓶ほどもある、巨大な注射器だ。ギラギラと輝く剣呑そうな針先を、自分の腕に近づけた。
「むん!」と一息に朱美は針先を自分の腕に突き刺した!
ちゅーっ、とピストンを押し、注射器の薬液を注入していく。
ことん、と注射器が床に落ちた。
朱美は微動だにせず、両足を踏ん張って立っている。
僕はおそるおそる、声をかけた。
「気分はどうだい?」
朱美は動かない。まるで彫像のようだ。
と、ぽつりと呟いた。
「熱い……」
「え?」
「熱い!」
見る見る朱美の顔が真っ赤に染まった。
どて、とその場に尻もちをついた。
僕は心底驚いた。
これは普通じゃない。
いや、朱美の存在そのものが普通じゃないが、今の反応は普通じゃない。
今まで朱美はこんな状態になったことはなかった。朱美は悪食で、口に入るものは何でもガツガツ食らうが、一度たりとも体調を悪くしたり、食欲がなくなる、などということもない。もちろん今まで僕の知る限り、風邪を引いたこともない。
おっかなびっくり、僕は朱美に近づいた。朱美は床にべったりと尻をついて座り込んでいた。顔は相変わらず真っ赤で、ピクリとも動いていない。
ちょっと手を伸ばし、朱美の額に触れた。
熱い!
まるで燃えるようだ!
俯いた朱美の顔を覗きこんだ。
ダラダラと大量の汗が朱美の額から噴き出している。汗はねっとりとして、粘液のような糸を引いていた。
こりゃ大変だ!
僕は慌てて研究室を飛び出した。
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