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第七章
コーヒー
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玄関に迎えに行くと、編集部員の神山がぺこりと頭を下げた。顔を上げて「お疲れさまっす!」と挨拶する。ずんぐりとした体つきで、顔もジャガイモに目鼻といった感じで人柄の良さが外見に出ていた。
美登里は神山に向かって「まあ、どうぞ」と声をかけ、玄関側の小さな部屋へ案内した。ソファと腎臓型のテーブルがあって、簡単な来客用の部屋として使っている。二人が向かい合って座ると、アシスタントの一人がコーヒーを用意してテーブルに置いた。
美登里のスタジオでは、コーヒーは本格的なドリップ式を奢っている。部屋に、コーヒーの香りが漂った。
いつものように、神山は雑談抜きに本題に入った。
「先生、今回の描きおろしですが……題材についてちょっと注文があるんです」
美登里は無言で、眉をちょっと上げて見せた。
神山は一つ頷くと、先を続けた。
「〝銀河番長ガンガガン〟のサブ・キャラで〝リーム〟という宇宙人少女をご存知ですか?」
知っているも何も、〝リーム〟の登場で美少女キャラでも宇宙人や、ロボットにすれば掲載できることになって、美登里は国内で復活できたのだ。
その意味を告げると、神山は意を決したように口を開いた。
「それで今回、そのリームを主人公にした描きおろし読み切りをお願いしたいと……」
最後まで言わせず、美登里は神山の言葉を押しとどめた。
「ちょっと待ってよ、神山さん。あたしに他人のキャラクターを使って、マンガを描けと言うの? そんなの、新人のマンガ家の仕事じゃないの!」
美登里は一度たりとも、原作付きのマンガは描いたことはない。ましてや他人のマンガのキャラを使った、スピンアウトものは手掛けたことはなかった。
ベテランマンガ家でも、こういったスピンアウトものを手掛けることはあるが、美登里はオリジナルにこだわっていて、他人の原作は手掛けないことは一種のプライドでもあった。
神山は拝むように美登里に哀願した。
「お願いします! どうしても先生にリームを主人公にした読み切りを……読者の反応が良ければ連載も……」
「あたしにこれ以上、連載を増やせっていうの? 冗談じゃないわ、今だっていっぱいいっぱいだってのに」
「そこを何とか……」
しつこく哀願を繰り返す神山を眺めているうち、美登里の胸に疑いがむくむくと黒雲のように湧き上がってきた。
「ねえ、その話、どこから来たの? 神山さんの独断じゃあないでしょう?」
美登里の追及に、神山は一瞬絶句した。が、躊躇いがちに答えた。
「それは編集会議で……」
「嘘よ!」
美登里は決めつけた。
「編集会議で決まったことなら、その場に編集長が居合わせたはずよね。編集長がそんな話を、会議で決めるわけないわ!」
少年マックスの編集長には、美登里がデビュー当時から面倒を見て貰っている。いわば美登里の短所も長所も知り尽くしていて、編集長が原作付きの話を持ってくるわけがなかった。
神山は観念したように大きく息を吸い込むと、冷静な表情で告げた。
「判りました、正直に言います。実はマックスの編集部から出た話ではないのです。集談館の幹部会で決まったことなのです」
驚きに美登里は思わずのけ反っていた。
美登里は神山に向かって「まあ、どうぞ」と声をかけ、玄関側の小さな部屋へ案内した。ソファと腎臓型のテーブルがあって、簡単な来客用の部屋として使っている。二人が向かい合って座ると、アシスタントの一人がコーヒーを用意してテーブルに置いた。
美登里のスタジオでは、コーヒーは本格的なドリップ式を奢っている。部屋に、コーヒーの香りが漂った。
いつものように、神山は雑談抜きに本題に入った。
「先生、今回の描きおろしですが……題材についてちょっと注文があるんです」
美登里は無言で、眉をちょっと上げて見せた。
神山は一つ頷くと、先を続けた。
「〝銀河番長ガンガガン〟のサブ・キャラで〝リーム〟という宇宙人少女をご存知ですか?」
知っているも何も、〝リーム〟の登場で美少女キャラでも宇宙人や、ロボットにすれば掲載できることになって、美登里は国内で復活できたのだ。
その意味を告げると、神山は意を決したように口を開いた。
「それで今回、そのリームを主人公にした描きおろし読み切りをお願いしたいと……」
最後まで言わせず、美登里は神山の言葉を押しとどめた。
「ちょっと待ってよ、神山さん。あたしに他人のキャラクターを使って、マンガを描けと言うの? そんなの、新人のマンガ家の仕事じゃないの!」
美登里は一度たりとも、原作付きのマンガは描いたことはない。ましてや他人のマンガのキャラを使った、スピンアウトものは手掛けたことはなかった。
ベテランマンガ家でも、こういったスピンアウトものを手掛けることはあるが、美登里はオリジナルにこだわっていて、他人の原作は手掛けないことは一種のプライドでもあった。
神山は拝むように美登里に哀願した。
「お願いします! どうしても先生にリームを主人公にした読み切りを……読者の反応が良ければ連載も……」
「あたしにこれ以上、連載を増やせっていうの? 冗談じゃないわ、今だっていっぱいいっぱいだってのに」
「そこを何とか……」
しつこく哀願を繰り返す神山を眺めているうち、美登里の胸に疑いがむくむくと黒雲のように湧き上がってきた。
「ねえ、その話、どこから来たの? 神山さんの独断じゃあないでしょう?」
美登里の追及に、神山は一瞬絶句した。が、躊躇いがちに答えた。
「それは編集会議で……」
「嘘よ!」
美登里は決めつけた。
「編集会議で決まったことなら、その場に編集長が居合わせたはずよね。編集長がそんな話を、会議で決めるわけないわ!」
少年マックスの編集長には、美登里がデビュー当時から面倒を見て貰っている。いわば美登里の短所も長所も知り尽くしていて、編集長が原作付きの話を持ってくるわけがなかった。
神山は観念したように大きく息を吸い込むと、冷静な表情で告げた。
「判りました、正直に言います。実はマックスの編集部から出た話ではないのです。集談館の幹部会で決まったことなのです」
驚きに美登里は思わずのけ反っていた。
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