キモオタの僕と七人の妹~許嫁はドSで無慈悲な科学のお姫様~

万卜人

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第十章

邂逅

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 三人が席に落ち着くとほどなく、ガンガガンのイベントショーが開幕した。演台に司会の女性が立って、かぶりつきに座っている熱心なファンに向かって煽り立て、スピーカーからはガンガガンのアニメ主題歌が、音量を限界まで大きくして流されていた。
 ガンガガンと敵のオータック大魔王の戦いがあって、ガンガガンが不利になる。すると観劇している幼児、小学生の間から悲鳴が上がった。
 すぐさま楽屋通路から、リームのコスチュームを身に着けた新たな演者が登場した。リームはガンガガンに代わってオータック大魔王の配下と戦い、形勢は逆転した。
 たちまち子供たちの間から、リームに向かって声援が飛んだ。

 その時、美登里とリームの視線が絡み合った。
 いや、リームを演じている演者は、コスチュームを身に着け、すっぽりと顔を覆うマスクを被っているため、視線が合ったとは言い難いが、美登里にははっきりとリームのマスク越しに、自分を認めている相手の視線を感じることが出来た。
 美登里はアイリスを見た。
 アイリスは強く頷いていた。
「美登里はん。なんやしらん、ウチはこのために日本に来た……そんな気になってきましてん……。ウチ、変やろか?」
 美登里は大きく首を横に振り、腕を伸ばしてアイリスの手を握りしめた。
「そんなことないわ! あたしも同じこと感じているの……」

 二人が早口に話し合っているのを、神山はポカンと大口を開けて見守っていた。
 気が付くと、あれほど大きな音量で流されていたガンガガンのテーマ音楽が途絶えていた。美登里がショーに目をやると、リームの姿が消えている。
 驚いて美登里が周囲を見回すと、意外にもすぐそばにリームのコスチュームを身に着けた演者が立っていた。
 こうしてすぐ近くに立っている姿を見ると、意外に小柄だと美登里は思った。
 その演者は腕を上げ、リームのマスクを自分で外した。現れたのは幼い顔立ちの、少女と言えるほどの女の子の顔だった。
 彼女は美登里とアイリスに向かって、震え声で話し掛けた。
「あんたたち、何者? あんたたちの姿が目に留まった瞬間、何もかも放り出してしまいたいと思ったのよ。何が起きているの?」
 そこまで口にして、改めて気が付いたように自己紹介を始めた。
「あたしは松野桃華。このガンガガンのスーツアクター。初めて会うけど、産まれる前から知り合いのような気がしてならないの」

 美登里が何か言いかけた瞬間、別の方角から新たな声が聞こえてきた。
「そこにいるのは崎本美登里と、翻訳のアイリス加藤だな!」
 美登里とアイリスが驚いて声の方角を見ると、そこには奇妙な四人組が立っていた。
 まず目につくのは真っ赤な髪の毛をした、ピンク色の縁の眼鏡を架けた女の子。傍には一卵性双子らしき同じ顔立ちの二人の女の子。三人は同じ高校の生徒らしく、制服を身に着けていた。三人はどれも甲乙つけがたい美少女で、その背後にはどことなく茫洋とした風貌の男子高校生が立っていた。
 声を掛けたのは、ピンク色の縁をした眼鏡の女の子らしかった。づかづかと彼女は美登里に近づくと、ニヤッと笑いかけた。
「オイラがあんたらが探している紅蓮だよ。まあ、会えてよかったと言っておこう」
 ガンガガンの作者に会えた、という驚きを美登里は感じるべきだったのだが、今はそんなものを感じる余裕はなかった。
 それよりも美登里は、背後で所在無げに立っている男子高校生に目が離せなかった。
 アイリスも同じで、息をつめ、その男子高校生を熱っぽく見詰めている。
 いや、リームを演じた松野桃華と名乗った女の子も、同じように男子高校生から視線を離せないでいた。
 三人の熱っぽい視線を浴び、男子高校生は明らかに戸惑っていた。ぱくぱくと何度も口を開き、おどおどと周囲を見回した。
「あ、あの……どういうこと?」
「ようやく会えましたね」
 穏やかだが、威厳のこもった女性の声が響いた。
 そちらを見ると、亜麻色の髪の毛を複雑な形に編み上げた、すらりとした痩身の女性が大股に近寄ってきたところだった。年齢は見当がつかず、美登里より年上のように見えるし、あるいはずっと年下のようにも見えた。
「藍里!」
「藍里はん!」
 男子高校生とアイリスが同時に叫んだ。叫んだ二人は顔を見合わせ「あーっ!」とお互いを指さした。
「あんた流可男はんやないか?」
「そういう君はアイリスか!」
 美登里は完全に混乱していた。
「アイリス、その男の子、知り合いなの?」
 アイリスは激しく頷いた。
「そや! ウチが『蒸汽帝国』ちゅうゲームで知り合ったプレイヤーや! そこの藍里はんも同じや!」
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