愚図な妖狐は嗜虐癖な陰陽師に甘く抱かれる ~巡り捲りし戀華の暦~

日蔭 スミレ

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第弍章

第13話 新月、蛍火の舞う夜に

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 その日、夕飯を済ませた後、季音と龍志は境内を歩んでいた。
 龍志の言った通り、宵の帳が落ちた後は雨はぴたりと上がった。

 それでも薄い雲がところどころかかっているようで、その隙間からは星明かりが見えた。

 新月だろう。月の姿はどこにも見当たらない。

 ふと、思えば満月と新月の晩はタキは群れに戻る日だ。
 きっと今日も群れに戻っているのだろうか……と、季音がそんなことを考えていれば、知らずうちに社の正面に差し掛かった。

「主殿、こんな時間に外出です?」

 澄み切った声色に視線を向けると、社の石段に腰掛けた蘢が神妙な面持ちで小首を傾げていた。

「ああ。沢に蛍でも見に行こうと。お前も行くか?」

 龍志は蘢に近づいて尋ねるが、彼はすぐに首を横に振る。

「修繕後から居着いている鬼の阿呆が社の中で飲んだくれてるので……僕は動きたくても動けないのです。あれは浮浪者ですか……」

 そうだったのか。
 雨ばかりで外に出ることもなく知りもしなかった。季音が思わず社の方を向けば確かにそこには朧の気配がある。

「蘢様……ご自分の護る社なのに、よく怒らないのですね……」

 思わず季音が尋ねると、蘢は軽蔑をたっぷり乗せた視線で社の方を向く。

「初めは怒りましたよ」

 案の定の答えだった。
 だが、彼は一つため息を落とした後に、たちまち唇を綻ばせる。

「でも……僕が一匹だけよりも幾分も心強いのは事実だ。僕は普段石像に宿っているのだから雨如きどうでもいい。だが、朧殿は元が妖だ。何かに宿っている訳ではない。丁度雨も凌げるし社の敷地内を護る交換条件だ。一応僕だって――」

 ――その力を信頼している。と、語尾に行くほど唇を尖らせて言うものだから季音は思わず笑んでしまった。

 あれ以降、きっと見えない場所で仲良くなったのだろう。
 ましてや、気高く気難しい蘢がそんな風に言うのだからどこか微笑ましく思えてしまう。

「朧様と仲良くなられたのですね」
「そういう訳ではない……多分」

 居心地悪そうに蘢は言う。だが、以前よりも明らかに彼の表情が豊かになったことは窺えた。
 季音はふと龍志の方を向けば、彼も彼で何だか嬉しそうに口角を上げていた。

「ダチができて良かったな。退屈しねぇだろ? 近々赤飯でも炊くか?」
「だ、だち……?」

 龍志の言った言葉がいまいち分からないようで、蘢は神妙な表情を浮かべた。
 だが、赤飯の下りだけは分かったのだろう――彼は『祝いなど結構です』とぴしゃりと突っ撥ねた。

「さておき、俺と季音は出掛けてくる。留守は頼むぞ」

 そう言って、龍志が蘢に背を向けた途端だった。蘢はすぐに龍志を呼び止める。

「そうですよ。沢の付近となれば、夜は妖も出やすいです。彼ら人を警戒する分、襲われる可能性が薄いものですが、僕と朧殿の呪符は……忘れてませんか?」

 即座に龍志は振り返って、さっと懐から二枚の呪符を取り出して蘢に見せた。
 その表情はいかにも面倒くさそう。半眼になっていた。

「お前は子どもを寺子屋に送り出す母親か……」
「麓に降りる時もよく忘れるじゃないですか。扱いだってずさんですし。呪符を洗濯して朧殿は三度水をかぶっただとか死にかけただとか、再契約は三度目とか聞かされましたし」

 ――呪符と式神は繋がっている。即ち同じ目に遭う。初めて知ったことだった。

 いくらなんでも酷すぎだろう……。
 思わず季音が怪訝な目で龍志を見れば、たちまち背筋に甘い痺れが這い上った。

 尻尾を掴まれた。それを悟るのは一瞬で──

「きゃあああ!」
 季音はあられもない甲高い悲鳴を上げた。その瞬間だった。

「主殿! いくら妖とは言え、そのようなことを尻尾持ちの女子おなごにやるのはどうかと思います」

 ――悍ましいです……最低です、破廉恥です! と、蘢はたちまち顔を真っ赤に染めて捲し立てたのである。

「モフモフした尾は引っ張りたくなるのが尾がない生き物の性分だ」

 龍志はわしゃわしゃと手を動かし、蘢の方を見る。
 生命の危機でも感じたのだろう。

「うっ……う、季音殿御免!」

 蘢は自分の尾を大事そうに抱えて社の中へ逃げていった。

 ***

 それから、境内を後にした季音は龍志と沢の方面へと進んでいった。

 すぐに話題になったのは、式神契約のことだった。
 呪符に水をかぶせただの千切るだの、いくら妖や神獣だろうが大事に至るに違いないだろう。

 さすがにそれは……と季音は口を挟んだが、蘢の話は朧が盛った嘘が存分に含まれていたそうだ。
 別に契約をした呪符が水に濡れようが千切れようが同じ目に遭うことはないらしい。

 ただ単純に、蘢の呪符を濡らしたことや破ってしまったことはまだ一度もないそうで、蘢がその事実を知らないからこそ上手く朧に騙されているのではと龍志は推測を語る。

 ましてや蘢は生真面目な性格だ。騙されやすいのだろうと、龍志は喉を鳴らして笑った。
 そんな他愛もない話をしていれば、あっという間に沢へ辿り着いた。しかし、目的の蛍は一匹たりとも飛んでいない。

「蛍って光る虫ですよね……いませんね」

 きょろきょろと季音は辺りを見渡したが、それらしきものが一匹たりとも見当たらない。
 片や、龍志は岩の上にどかりと腰掛けて、ふぅと息をつく。

「蛍は光る時間帯もある。一晩中、光って飛んでる訳でもない。静かに待てば時は来る」

 そう言って、彼が急に手首を掴むものだから季音は驚いて身を崩してしまった。
 尻餅をついた場所は彼の膝の上……きっと痛かっただろうと、季音は慌てて彼を見上げた。

「す、すみませ……」
「重いが大丈夫だ」

 重い。言われた言葉に思わずずんと季音は沈んでしまった。

 そこまでむちむちと丸く肥えてなんていない……とは思うが、重いのか。
 確かに、彼に出会ったきっかけになった簪奪還の木登りで枝木が折れた時のことを思い出せば確かに重いのだろうとは思えてしまう。

「冗談だが」

 言われた言葉にたちまち季音は目を点にした。

 ひどいだろう。いくらなんでもひどいだろう。
 季音は即座に「意地悪!」と、叫びかけた矢先だった。彼はすぐに季音の唇を手で覆い、背後からきつく季音を抱きしめた。

「ほら飛び始めた……向こう側、見てみろ」

 耳元をくすぐる彼の囁きに思わず背筋がぞくりとしてしまった。
 至近距離だからだろうか。極めて彼は普段通りなのだろうが、囁かれるとまた違う。煩いほどに心臓が高鳴った。

 それでも、彼の言われた通りに遠くを眺望すると、闇の向こうに黄緑の光がぽつりぽつりと浮かしては消える。
 やがてそれは、ひとつふたつと増え始めて、辺り一面に黄緑の光が広がった。

 それからようやくして、彼は季音の口元から手を離す。

「思ったよりすごいな」

 ぽつりとそんな声が耳の真上から落ちてきた。

 それから間髪入れずに感嘆の吐息さえも耳をくすぐり、季音は顔を赤々と染めて居心地悪そうに身じろぎした途端だった。それに感づいたのか――彼は後ろから抱きしめる手の力を殊更ことさらに強めた。

「逃げるな」

 途端に耳の真上から落ちてきた声は、どこか厳かな示唆だった。
 命じることに慣れているのだろう。そんな口調で言われてしまえば動けない。季音は大人しく彼の腕に捕らわれたままでいた。それから二拍、三拍と置いた後だった――。

「なぁ、季音。こんな言葉を知っているか?」

 季音。と、思えば、彼に名前で呼ばれることは少ないだろう。
 たったそれだけでも鼓動はさらに高鳴り、季音は恐る恐る彼を見上げた。

「夏は夜。月のころはさらなり。闇はなほ、ほたるの多く飛びちがいたる」

 龍志はぽつりぽつりと囁くように告げる。
 そして彼が言葉を止めると、季音の唇は自然と唇が開き、緩やかに言葉を紡ぎ始めた。

「……また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし」

 ――清少納言、枕草子。夏の部位。
 だが、何故それを言えたのかも、理解できたのかも、知っているのかも分からない。季音はたちまち大きく目をみはった。

「平仮名が読める。漢字は読めずともそれを分かっている。その上、枕草子が分かっている……妖の癖に妖気も持たず、ただの獣にしては不自然だろ……」

 ――どういうことかさすがに分かるだろ? と、かれて季音の頭は真っ白に染まった。
 何も覚えていない。だが、そこまで言われてしまえば、季音の中で一つの答えが出た。いや、それしかないだろうと。

「私は……人だったのですか?」

 恐る恐る季音は問う。すると、彼は頷き形の良い薄い唇を開いた。

「もう、さすがに全てを告げるべきだろうとは思った。お前は――藤香とうか御前ごぜん。俺の前世、藍生詠龍の妻だ。お前が輪廻したと知って、俺はお前に会いに来たからここにいる」

 黄緑の蛍火に灯された彼のおもては真面目そのものだった。
 その瞳はあまりに真っ直ぐで、とても冗談とは思えない。

「俺は、お前に巡り会うために輪廻した。今、妖だろうが構わない。もう一度、俺の妻になってくれ」

 さすがに情報量が多すぎて、頭が追いつきやしない。
 妻になれと――それは時差式に頭で理解できて、素直に嬉しいと思えた。

 率直に、やはり運命だったと思えてしまった。だがその反面、得体の知れぬ自分が何一つ覚えてもいない不安に胸が軋み、季音の瞳にはたちまち水膜が張る。

「そんなに嫌か……お前は何も覚えていないからな」

 ――そりゃそうだよな。なんて、言って。彼が季音を抱き直した矢先だった。

 間髪入れずに、彼が自分の肩を掴んだ。
 そう思った時には地面に投げ出すように組み敷かれて、季音の身を抱き寄せた彼は身を縮めて覆い被さる。

 一拍も立たぬうち、自分たちが先程座っていた岩に金属質なものが当たる音が響く。

 何が起きたのかなんて理解できなかった。
 だが、自分の顔の横に転がり落ちたものを目にした途端に肝が冷える。

 そう、それは明らかに見覚えのある刀だったのだから……。

「おキネ。これはどういうことだ。そこにいるのは分かってる。お前を血眼になって探り助け出す機会を探っていたが……」

 響き渡る声は少し掠れた少女のもの。
 明らかに聞き覚えのある声だ。
 だが、その声色は聞いたこともないほどに険しい怒気を含んでいて……。

「惚けてるんじゃねぇぞ間抜けが! 生きる場所が違うことをわきまえろ!」

 咆哮ほうこうが如く叫ぶ少女の声は蛍火を一瞬にして消し去った。

 そこに広がるのは静謐な夜。
 新月の生み出す、深淵の世界だった。
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